公開日:2022年4月28日
この春に一人暮らしを始めたという人は、初めて電気代の請求書を受け取る頃かもしれません。新入学生や新社会人などで親元を離れたときに、これまで知らなかった光熱費の金額を知って、あらためて親のありがたさを感じたという話もよく聞きます。
そこで今回は、一人暮らしの電気代について、平均的な金額や季節・地方による違い、さらには支払額を抑えるアイデアや気をつけたいことなどをご紹介します。
最近は、値上がりや節電など何かと話題の電気代ですが、一人暮らしならではのライフスタイルを生かせる、おトクな付き合い方を検討してみてはいかがでしょうか?
電気代の請求書を見たときに、それが一人暮らしの電気代として高いのか安いのかは、気になるところです。
それでは実際に、総務省が行った家計調査による平均的な金額を見てみましょう。
以下の表は、一人暮らし(単身世帯)を対象に、1ヵ月間の支出の中の「電気代」に関する2021年のデータを、全国平均とエリア別平均に分けてまとめたものです。
エリア | 1ヵ月の電気代(平均) |
---|---|
全国 | 5,468円 |
北海道・東北 | 6,194円 |
関東 | 4,963円 |
北陸・東海 | 5,625円 |
近畿 | 5,131円 |
中国・四国 | 6,593円 |
九州・沖縄 | 5,818円 |
統計によると、一人暮らしの平均的な電気代は、2021年の全国平均で1ヵ月に5,468円でした。
地域によって年間の電気代に差があるのは、南北に長い日本列島の気候差によるもの。特に雪の多い地方などでは、暖房などで冬の電気代がほかの地域より高くなるために金額も高めになる傾向があります。
中国・四国エリアが高いのは、島根や鳥取など日本海側の積雪の多い地域が影響しているものとみられます。
ただ、この数字は年間を通して平均したもので、冷房や暖房に電気代が多く必要となる夏や冬と、空調などの必要が少ない春・秋ではその金額も違います。
2021年 四半期 | 1ヵ月の電気代(平均) |
---|---|
1~3月 | 6,641円 |
4~6月 | 4,990円 |
7~9月 | 5,107円 |
10~12月 | 5,068円 |
こちらは、1年を3ヵ月ごとに4つの期間(四半期)に分けて、単身世帯の1ヵ月の電気代をまとめた総務省のデータ(2021年の全国平均)です。
統計では、暖房の必要な1~3月では1ヵ月の電気代が平均で6,641円、冷房の必要な7~9月が5,107円となっているのに対して、それ以外の時期は少し低く抑えられているのがお分かりいただけると思います。
自分の住んでいる地域と季節を参考に、現在の電気代が平均よりも高いのか安いのか、確認してみましょう。電気代を払いすぎていると感じたら、要注意です。
さらに現在は、新型コロナウイルス感染症対策として始まったテレワークによる在宅勤務やステイホームなど、生活スタイルにも大きな変化が起こっています。その中で、電気代も上昇してきました。
電力中央研究所が関東の1都8県(東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨城、山梨、長野)を対象に、スマートメーターを活用して調査したデータによると、コロナ前の水準と比べて、年間電力需要(2020年3月~2021年2月)は世帯あたり約4%増加していたそうです。
特に日中から夜にかけて需要がぐっと増え、平日の電力需要の変化が大きかったと言います。
第1回緊急事態宣言の発出と前後する2020年4月の時期は、約8%も増加。冷暖房の必要な8月と1月にはそれぞれ5%の増加が見られました。中でも1月の夕方には約10%も増加したそうで、在宅率が高い上に寒さで暖房を利用し、日没とともに照明をつけることで電力需要が一気に増えたようです。
また、建築研究所の「コロナ禍における在宅勤務の実態調査」では、生活リズムの変化がデータに現れました。例えば、在宅勤務者の起床時間は半数近くが1時間以上遅くなって、入浴時間は早まる傾向にあったそうです。その中で、25%以上の世帯で電力消費が増加したというデータもありました。
テレワークやおうち時間の増加など、ニューノーマルの生活が続く現在。
気付かずにいつもより電気を使ってしまっていた、なんていうことにならないようにしたいものですね。
最近は電気代の値上げや電力のひっ迫に加えて、世界情勢の影響によるエネルギー燃料問題などもあり、電力を取り巻く状況にはあまり明るい材料が揃っているとは言えません。一人暮らしに限らず、電力の使用を抑えて、電気代を安くする工夫が必要になってきました。
そこで、これまでの内容を踏まえながら、電気代を安くする方法についていくつかご紹介します。すぐに実践できそうなものも、時間のあるときにゆっくり検討したいものもあると思うので、興味のあるところから参考にしてみてください。
電気代を安くするためには、電気を使わないのが一番です。とは言っても、便利で快適な生活のために電化製品は欠かせません。
そこで、まずは電源を意識することから始めましょう。例えば、照明やテレビなどは利用しないときにつけっぱなしにせず、こまめに電源を切るだけで節約になります。いくつも差込口のある電源タップを使って、使用頻度の低い電化製品の電源をオフにしておくのも節電に役立ちます。
洗濯の際は消費電力の高い乾燥機をなるべく使わず、天気のいい日は外干しにしたり、厚手の服はある程度乾かしてから乾燥機は短時間で仕上げるようにするなど、ちょっと意識して使うだけでも違います。
このほかにも、電化製品の特徴によってそれぞれに電気代を安くする方法をご紹介していますので、こちらもチェックしてみてください。
一人暮らしを始めるタイミングで電化製品を一式揃えた、という人も多いと思います。購入の際には機能やサイズ、価格などももちろん大事ですが、省エネ性能についてはチェックして選びましたか?
省エネ性能の高い電化製品にすると消費電力量が低く抑えられるので、節電に役立つだけでなく、電気代も安くなるのです。
例えば断熱性能の向上した省エネタイプの冷蔵庫(401~450L)なら、10年前の冷蔵庫と比較した場合に年間の電力消費量が170~230KWh(キロワットアワー)も減少し、年間の電気代も4,590円~6,210円ほどおトクになります。
これまでの記事の中でも省エネ電化製品の選び方について紹介しているので、「揃えたばかりで買い替えの予定はずっと先」という人も、そろそろ買い替えを考えている人も、今後の参考にしてみてください。
電気代を安くするために、現在契約している電力会社を見直すという方法もあります。
これまでは住まいのある地域を管轄する大手電力会社10社だけが家庭に電力を供給していましたが、2016年に電力小売全面自由化となって以来、新規参入の電力会社が増えて、さまざまな料金プランやサービスの提供が可能となりました。
従来は、基本料金に使った分の電力使用量を加えた「規制料金」だけだったのが、基本料金ナシで使った分だけ支払うプランや、夜など時間帯によって料金単価が安くなるプランなど、自由に料金を設定できるようになったのです。
中には、電力事業を展開する企業のサービスに関連して割引が適用されたり、ポイントが付いたり、独自の特典が得られるプランもあります。つまり、電気代を安く抑えながら、自分のライフスタイルに合わせておトクな料金プランを選べるようになっているのです。
ただし、賃貸住宅で管理会社や大家さんに対して電気代を支払っている場合は、委託契約や一括徴収契約のために個人で見直しを行うのが難しいというケースもあるので、確認しておきましょう。
電力会社の見直しに関して詳細を知りたい場合は、こちらをご覧ください。
一人暮らしの電気代に関する平均的な金額や節約方法などが分かったところで、ここからは「気を付けたいこと」について考えてみましょう。
以下に、一人暮らしをしていて電気代で困ったことや失敗したことについての声を集めてみました。「あるある!」というものから、「そんなことになるとは!」というものまで、自分の場合と照らし合わせてみてください。
「失敗した」「電気代が高くなってしまった」という結果は同じでも、その理由はいろいろ違います。節約したいと思うあまりにやりすぎたり、気付かずにトラブルを招いたり。
一つでも思い当たるものがあれば、確認してみましょう。他人の失敗から学ぶのは、リスク管理にも役立つはずです。
一人暮らしを始める前には気付かなかったことで、電気代が高くなってしまっていたという話はよくあります。一度学習しておけば、次からはきっと大丈夫!
「引っ越しの初期費用を抑えたいならエアコン付き物件がいいと聞いて、築年数は少し古いけれど小ぎれいでエアコンの付いた部屋を選択。でも、エアコンの製造年が古かったせいで省エネ機能もなく、かえって電気代が高くなってしまいました。」
資源エネルギー庁のデータでは、10年前の古いタイプと最新の省エネタイプでは消費電力量が約17%も違うそうです。どんなエアコンが付いているのか、機能や製造年を確認しておくことも大切ですね。
「予算が少ないこともあって、一番安くて小さいサイズの冷蔵庫を購入。電気代も安く済むだろうと思っていたのですが、思った以上に物が入らず、物を詰め込みすぎてなかなか冷えない。結局、余計な電気代がかかることになりました。」
冷蔵庫に物を詰めすぎると冷気が循環しなくなり、消費電力量も増えるために電気代も上がります。半分の量にした場合と比較すると、年間で1,000円以上高くなるというデータもあります。また、冷蔵庫は必ずしもサイズに比例して消費電力が大きくなるわけではありません。 小さいものより大きいサイズの方が、消費電力量が少ない場合もあります。一人暮らしでも、余裕をもって食品が入れられる容量のものを選びましょう。
「洗濯物を外に干したくないのと、部屋干しの生乾きの匂いが嫌で、冬は毎日浴室乾燥機を使っていました。さらに浴室内の暖房も毎回つけていたら、電気代が高額に! これからは考えて使わないと。」
浴室乾燥機は、不在の間も室内で洗濯物を乾かすことができるし、一人暮らしには便利な機能です。でも、電化製品の中でも消費電力量が大きいので、長時間の使用は電気代にも大きく影響します。必要最小限の使用で、電力も家計も負担軽減を。
浴室乾燥機について詳細を知りたいなら、こちらもチェック。
また、よかれと思って電気代を節約したつもりが、余計な手間やコストがかかってしまったという失敗談も。
「実家に帰省するので、電気代の節約をしようと思って冷蔵庫の中を空にしてブレーカーを落として出かけました。2日後に戻ると、冷凍庫の氷が溶けて床が水浸しに!帰宅早々、掃除に追われました。」
さらに、録画予約をしていたのに待機電力を減らそうとしてコンセントからプラグを抜いたせいで録画できていなかった、なんていうことも。通年稼動している冷蔵庫や、タイマーを使用する電化製品は、コンセントからプラグを抜いたりブレーカーを落とす前に不具合が起きないかしっかり確認しましょう。
「夏はエアコンをつけずに過ごせば節約になると、扇風機だけで頑張っていたら熱中症になってしまいました。結局、体調をこわして医療費もかかってしまうことに。」
無理をして健康を損ねてしまっては、節約の意味がありません。稼働させる時間を短くしたり風量や風向きを調節したり、エアコンも使い方次第で電気代を抑える方法はいろいろあるので、賢く利用して快適に過ごしましょう。
エアコンの上手な利用法について知りたい人は、こちらもどうぞ。
あらためて、自宅の電気代の請求書を見ると、いろいろなことが見えてくるのではないでしょうか。支払額は全国平均よりも少ないけれど、住んでいるエリアの平均よりも高いなとか、契約アンペア数は一人暮らしにしては多いかもしれない、などなど。
一人暮らしの場合は、誰の影響もない分、自分自身のライフスタイルがそのまま電気代に反映されます。自分に合った方法で節約して安く抑えたり、トラブルを回避したり、電気代と賢く付き合ってください。