プロジェクトストーリー 大容量ニーズに応え、
小容量ニーズもカバーする

「メリハリプラン」の誕生

2020年3月、ソフトバンクは料金プラン「メリハリプラン」の提供を開始した。
それまでの「ウルトラギガモンスター+(プラス)」と同様、
大容量ニーズに応えるプランでありながら、
データ利用が2GB以下の月は利用料を1,650円割り引くなど、
幅広いユーザーがメリットを享受できるプランとなっている。
提供開始後、約90%のお客さまに満足いただいたこのプランは
どのようにして生まれたのだろうか。
ソフトバンクの新たなテレビCMシリーズとして注目を集めた
「勝手にHERO’S」の制作秘話とあわせて、
「メリハリプラン」誕生の舞台裏に迫る。

2017年にソフトバンクが提供開始した「ウルトラギガモンスター」は、
月間50GBのデータ容量を定額で利用できる料金プランとして、
モバイル業界全体の料金体系に大きなインパクトを与えた。
さらにソフトバンクは、対象の動画サービスやSNSが使い放題となる
「ウルトラギガモンスター+」を発表するなど、
スマートフォンや周辺サービスの進化に伴う大容量ニーズに対し、
業界の常識を刷新するようなプランを打ち出し続けてきた。
しかし、すべてのスマートフォンユーザーが、毎月数十GBものデータ容量を使うわけではない。
また、40GB使う月もあれば、1Gしか使わない月もあるという人もいるはずだ。
そのようなユーザーの多様な利用動向を踏まえつつ、
新たな通信規格である5Gにも対応する料金プランとして生み出されたのが、
2020年3月に提供を開始した「メリハリプラン」(新規申し込み受け付けは終了)である。

  • 大野木 裕子 YUKO ONOGI

    モバイル事業推進本部 事業企画統括部
    サービスプランニング部 1課
    2010年度中途入社

  • 水本 紀代子 KIYOKO MIZUMOTO

    コミュニケーション本部 コミュニケーション統括部
    コミュニケーションデザイン部 プロデュース課
    2012年度新卒入社

  • 武田 将英 MASAHIDE TAKEDA

    モバイル事業推進本部 事業企画統括部
    サービスプランニング部 1課
    2018年度新卒入社

異なるニーズを
1つのプランで解決するという難題に挑む

Episode.1 『ウルトラギガモンスター+』を超え、
さらに多くのお客さまに満足いただくために

2020年3月、ソフトバンクの料金プランである「メリハリプラン」がスタートした。同プランは月間50GBのデータ容量を定額で利用でき、対象の動画サービスやSNSが使い放題といった「ウルトラギガモンスター+」の特徴を引き継ぎつつ、同時期にサービス提供がスタートした5G通信にも対応。さらには家族割引などの各種割引により月額3,828円から利用でき、「動画SNS放題」の対象サービスの利用分を含めたデータ利用量が2GB以下の月は自動的に1,650円割引されるため、2,178円から利用できます。月毎の利用状況によって通信費を適切な金額に抑えられるという意味では、まさに “メリハリ” が効いていると言えるだろう。プロジェクトのリーダーとして「メリハリプラン」の立ち上げを牽引した大野木が、同プランの企画背景について語った。

「今回のプランを企画するにあたっては、2つの大きなミッションがありました。1つは2020年3月からスタートした5Gを料金プランの中に組み込むこと。もう1つは小容量ニーズへの対応でした。『ウルトラギガモンスター+』は、大容量ニーズに応えるプランとして多くのお客さまから好評を得ていました。一方で小容量ニーズ向けプランとしては『ミニモンスター』があるのですが、一定の利用量を超えると急激に料金が上がってしまう階段型の料金体系であったため、お客さまが加入時にハードルを感じてしまうという課題があったのです」

2019年9月、大野木と武田が所属するサービスプランニング部を含む総勢十数名の体制で料金プランの立ち上げプロジェクトがスタートした。社内でもコンフィデンシャルなプロジェクトであったため、プロジェクト名には当時流行っていたヒット曲のタイトル名が付けられた。

Episode.2 お客さま目線とビジネス視点の双方を重視
チーム全員で考え抜いた末に生まれた
大容量プランをベースとした割引スキーム

まず、メンバーが取り組んだのは「ウルトラギガモンスター」によって軌道に乗った大容量プランを主軸とするソフトバンクの事業戦略を重視しつつ、小容量ニーズの課題にもアプローチできるプランを企画することだった。大容量と小容量、相反する2つのニーズを同時に満たすプランの創案について、大野木は当時を振り返った。

「企画立案にあたっては、海外各国の通信キャリアの料金プラン、モバイル以外のあらゆるサービスの料金プランを参考に検討を重ね、メンバー同士で何度も議論を交わし合いました。そのような議論の中で『大容量プランがベースであるものの、使わなかった月は料金が勝手に割引される』というプランの骨子が生まれたのです。このようなプランであれば、多くのお客さまが納得感やメリットを感じられますし、ソフトバンクとしても大容量プラン中心の事業方針を変えずにビジネスを展開できます」

単純に「ウルトラギガモンスター+」と「ミニモンスター」の中間にあたるプランを新設する方法もあったが、それでは「ウルトラギガモンスター+」の収益性が損なわれるリスクもあったという。お客さま目線とビジネス視点、その双方を満たすための最適解こそがデータ利用量に応じた割引のスキームだったのだ。

また、社内やプロジェクトチーム内では、「高速・大容量通信を実現する5Gをストレスフリーで活用するためには、無制限プランが相応しい」という議論もあったという。しかし、当時の5G端末の普及率や対応エリアを考慮すると、月間50GBを上限にしてもお客さまが不便に感じるシーンは少ないという結論に至った。加えて「ウルトラギガモンスター+」で実現した対象動画サービス・SNSの使い放題に関しては、多くのパートナー企業と協業して作り上げたサービスであったため、「継続以外は考えられなかった」と大野木は回想する。

Episode.3 驚異的なスピード感の中で
プロジェクトを実現に導いた社員たちの奮闘

「メリハリプラン」の企画案は2019年11月上旬に経営会議に付議され、会社の承認を得ることとなった。それからわずか1週間後、大野木と武田を中心とするプロジェクトメンバーは、料金プランの変更に関わる全ての関連部署の担当者・責任者200名以上を集めて全体説明会を開催した。

「経営会議の承認から全体会議の開催までは1週間しかなく、会議準備や資料作成をスピーディーに進めなければなりませんでした。加えて、電気通信事業法や消費税の改正対応が同時期に重なったため、複数のプロジェクトを同時並行で担当していました。いずれもミスが許されない業務ばかりだったので、抜け漏れのチェック対応には気の遠くなるような時間を費やした覚えがあります」と語るのは、当時入社2年目だった武田だ。当然、武田にとっても今回のような大規模な料金プラン改定に携わるのは初めての経験となる。プロジェクトチームのメンバー自体は十数名という少数体制だが、プロジェクトに関わるNDA締結者数は3,500名を超えていたという。このような数字だけでも、今回の料金改定プロジェクトの影響範囲の広さを想像できるだろう。

時を同じくして動き出したのはコミュニケーションデザイン部の水本だ。テレビCMや交通広告、デジタル広告、店頭ツールなど、ユーザーとのコミュニケーション戦略を担当する同部門では、大野木や武田の所属するサービスプランニング部が企画した「メリハリプラン」に関するユーザーベネフィット調査を進めることとなった。

「メリハリプラン」には、「ウルトラギガモンスター+」のセールスポイントであった「大容量」「動画SNS放題」に加え、「データ利用量が2GB以下の月は自動的に1,500円割引」「5G通信への対応」といった特徴がプラスされた。しかし、短い時間での視聴を前提としたテレビCMやその他の広告で、それらのユーザーベネフィットのすべてを説明することはできない。「メリハリプラン」の素晴らしさを一言でアピールするために、最も効果的な訴求要素を見つけることがベネフィット調査の目的であり、そこで決定された訴求要素をもとにテレビCMや各種広告ツールの制作が進められることになる。水本は当時を振り返ってこう語った。

「最初は『大容量』『動画SNS放題』『月末の速度低下が気にならない』『自動で割引』など、10案程度の訴求要素を上司に提案したのですが、『もっとユーザーの気持ちになって考えた案を出してほしい』と言われ、最終的には私一人で100案以上考えたと思います。大容量を求める方から小容量で満足できる方まで、さまざまなお客さまの視点に立って、『一番うれしいことは何か。どんな言葉が分かりやすいか』を徹底的に考え抜きました」

Episode.4 テレビCMを大幅に刷新
「勝手にHERO’S」シリーズの誕生

水本が考え出した数々の訴求要素はマーケティングサイエンス部の手によってベネフィット調査にかけられた。その後、調査結果を確認した水本や大野木は、ユーザーの予想外の反応に驚いたという。

「私も大野木さんも、これまで通り『大容量』という訴求要素が一番響くだろうという仮説を立てていたのですが、大容量ユーザー・中容量ユーザー・小容量ユーザーのほとんどに対して『ギガを使わない月は自動で割引』という訴求要素が圧倒的に刺さっていたのです。数パーセントの差を比較する調査であるにも関わらず、他の訴求要素と10%以上の差がつき、私たちとしても『ここをメインで訴求していくべきだ』と、自信を持って決断することができました」

2020年1月、水本を中心とするコミュニケーションデザイン部は、広告代理店へ本施策の趣旨を説明すべく、CMオリエンテーションを実施した。
「広告代理店から提案された複数のCM案の中でも、幅広い年代の方々からポジティブな反応が集まったのが松本人志さんのCM案でした。事前のオリエンテーションで説明していた『ギガを使わない月は自動で割引』の『自動で』の部分が『勝手に』という言葉にブラッシュアップされたことで、訴求メッセージがより強いものになったと思います。これまでとは異なる料金プランであることを打ち出すべく、CM内容の大幅刷新を決定し、松本人志さんの「勝手にHERO’S」シリーズを経営層に提案しました。
また、視聴者の方々にソフトバンクのCMであることを認知してもらうべく、松本人志さんと白戸家のお父さんがセットで登場する内容でCM制作を進めることも決めました」

水本はテレビCMの制作と並行して、「メリハリプラン」というサービスそのもののネーミング企画も担当していた。大野木や武田を中心とするサービスプランニング部が企画した料金プランが「メリハリプラン」という名称に決まったのはテレビCMの完成とほぼ同時期、2020年2月のことだった。

Episode.5 プロジェクトを終えて
それぞれが感じたソフトバンクの強みとは

結果的に「メリハリプラン」は、2019年9月の企画立ち上げから、わずか半年間という異例のスピードでのサービスインとなった。「普通なら最低でも1年はかけて進めることを半年で進めるのがソフトバンクです。このスピード感は尋常ではないと思いますよ」と大野木は笑いながら語った。

「メリハリプラン」の企画からリリースまでの流れ
2019年9月 プロジェクトチーム発足・課題解決のための議論と企画立案
2019年10月 マーケットリサーチを実施。市場ニーズと収益性を調査
2019年11月 経営会議への付議・承認
2019年11月 関連部署の担当者・責任者への全体説明会を実施
2019年11月 テレビCMなどのコミュニケーション戦略の策定開始
2019年12月
〜2020年2月
サービスの実運用に向けた関係部署との連携・調整、
記者発表会準備
2020年2月 サービス名称が「メリハリプラン」に決定。テレビCMおよび
各種コミュニケーション施策の制作完了
2020年3月 サービス開始。テレビCM・交通広告・デジタル広告・店頭ツールなどの
コミュケーション施策の展開開始

サービス開始以降の調査によると「メリハリプラン」は、約9割のお客さまに支持されていることが明らかになった。また、市場に対するインパクトの大きさを評価され、社内のアワード表彰でも社長賞で1位を獲得した。さらには「お客さまに提案しやすい」ということで社内の営業担当者からの評判も上々だという。サービス開始から数カ月後には競合他社が「メリハリプラン」と同じような、データ利用量に応じた割引を行う料金プランを打ち出してきたことからも、「メリハリプラン」が業界全体に与えた影響の大きさが分かる。この件について大野木は、「他社が追随したプランを出してきたことで、自分たちの作ったプランが認められた感触はある」と、他社から追いかけられる状況に悪い気はしないようだ。

今回、大々的な料金プランの立ち上げプロジェクトに初めて関わった武田は、社内のさまざまな部署の関係者と仕事をしたことで、「改めてソフトバンクの強みを知ることができた」と語った。

「プランの立て付けや仕様について関係部署の方々に説明した際に、多くの方々が『こうした方がいいのでは?』『こう説明した方が分かりやすいかもしれない』と、積極的に意見やアイデアを出してくれました。『企画のことは企画の部署でやってよ』という空気はまったくなく、社員の誰もが『お客さまのために素晴らしいものを作ろう』という考えを持って仕事をしているんですよね。このような社員一人ひとりの姿勢こそが、ソフトバンクの強さにつながっているのではないかと思いました」

「メリハリプラン」のサービス開始と同時に、テレビCM「勝手にHERO’S」と統一した訴求メッセージを交通広告・デジタル広告・店頭ツールなどで発信し、コミュニケーション施策の全方位的な展開もスタートした。このテレビCMは、CMデータバンクによる『CM好感度調査』でソフトバンクとして2年ぶりに1位を獲得したことをはじめ、さまざまな指標で水本たちが設定していた目標を大幅に上回る効果をあげたという。

「料金プランが決まってからコミュニケーション戦略を策定するまでの期間が短かったこともあり、常にスピードを意識して仕事を進めていたことを覚えています。プロジェクトが難航した際には、他部門の本部長クラスの方々に直接、交渉やプレゼンをしたこともありました。大野木さんや武田さんがサービスでNo.1を目指していたように、私たちも『コミュニケーション施策でNo.1を取りたい』という気持ちを常に持っていました。今回のプロジェクトではベネフィット調査からメディアプランの設計まで、一貫性のある効果的なコミュニケーション戦略を展開することができたので、達成感も大きいですね」と、水本は当時の状況を思い出しながら満足気に語った。

ソフトバンクで人々の暮らしを変える
イノベーションを生み出そう

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