【セイノー情報サービス × ソフトバンク × 日本IBMの3社で開発・提供】検査業務の省人化に効果「AI品質検査ソリューション」

2023年09月11日掲載

IBM Cloudパートナー事例_セイノー情報サービス

生産年齢の人口が1995年にピークアウトして以降、減少の一途を辿り、幅広い業界で人手不足が深刻化している。政府は、働き方改革や再雇用制度などを通じて女性や高齢者の労働力の活用を進める一方、“従来よりも少ない時間や労力で、多くの成果を出すために”IT技術の活用を推奨している。こうしたなか企業が注目しているのが、ロボットやAI/MLの活用だ。特にAI/MLについては、これまで人間の五感に頼っていた、高度かつ複雑な判断業務なども置き換えて自動化し、省人化や業務品質の向上が期待できることから、様々な領域で活用を検討する企業が増えている。日本IBM、ソフトバンクとの3社協業「AI品質検査ソリューション」の提供を開始したセイノー情報サービスもその1つだ。同ソリューションの概要や開発の経緯などについて、セイノー情報サービスとソフトバンクのお2人にお聞きした。

●お話を聞いた方

IBM Cloudパートナー事例_セイノー情報サービス 石井氏

株式会社セイノー情報サービス

LLP事業部 BRAISグループ 課長
石井 哲治 氏

IBM Cloudパートナー事例_ソフトバンク 二藤

ソフトバンク株式会社

法人プロダクト&事業戦略本部
データ・クラウドビジネス企画部 課長
二藤 優公

開発の背景・経緯

───どのような背景・経緯で「AI品質検査ソリューション」を開発することになったのでしょうか。

石井氏:ご存知のとおり、物流業ではドライバーなどの人手不足が深刻化しており、配送業務だけではなく、検品・検査など倉庫業務でもリソースが逼迫しています。入・出荷時のバーコードによる種類や個数のチェックはもちろんですが、内容物について、汚れ・キズの有無や程度を確認したり、付属品が一式揃っているかをチェックしたりするなど、本来、製造業の側で実施していた検査業務を、物流側で請け負うケースも増えています。EC市場の急拡大で、小売・流通ビジネスの少量多種販売化が進んだ結果、検査業務もより多種多様になってきており、人が目視でおこなう検査が増えてきたこともあります。また、検査の品質(精度)向上のために、複数人が2段階のチェックをおこなうケースも増え、人手不足に拍車をかけている状況です。検査業務については、人手不足以外にも、属人化による品質(精度)のバラツキや技術継承(教育)などの課題が山積しており、解決に向けたソリューションのニーズが高まっていました。
二藤氏:今回の取り組みは、共通の取引先である日本IBM様から、ロボットやAIを活用して物流業の課題を解決してきたセイノー情報サービス様のノウハウと、弊社が取り扱うIBM Cloudやモバイル機器、回線などの製品・サービスを組み合わせて、何か物流業向けDXソリューションを提案できないか、とお声がけいただきスタートしました。最初の3ヵ月間、セイノー情報サービス様から提起いただいた30以上の課題について検討を重ねた結果、物流業に限らず、幅広い業種にあてはまる普遍的なテーマであり、3社の既存製品・サービスやノウハウを組み合わせて、比較的短期間でリリースできる、といった理由から品質検査にテーマを絞り、ソリューション検討を進めました。

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「AI品質検査ソリューション」の概要

───「AI品質検査ソリューション」について、特長やメリットをご紹介いただけますか。

二藤氏:簡単にいうと、お客様がカメラで写した画像を元にクラウド上のAIで判定を行う仕組みです。ソフトバンクがAIを含むクラウドサービス(IBM Cloud)のほか、カメラや通信サービスなど、機器を含むインフラ一式を用意し、セイノー情報サービスには、お客様の現場ニーズにあわせたセッティングや他システム連携など、主にソフト面を担当いただくイメージです。従来ですと、クラウドサービスはクラウド事業者と、クラウド転送のためのネットワークは通信会社と個別に契約し、カメラなど必要な機器を買い揃えた上で、それらを現場でセッティングしたり、必要に応じて他システムとの連携開発をしたり、といくつもの窓口とやりとりをして環境を整備する必要がありました。これらすべての窓口を一本化し、ワンストップで必要な環境を提供するのが「AI品質検査ソリューション」です。

IBM Cloudパートナー事例_構成 シンプルな構成でリーズナブルなコストでスピード導入が可能

石井氏:画像データをAI解析すると言っても、お客様によってAIでやりたいことや、予算、現場環境など百社あれば百とおりになります。カメラひとつとっても、撮影対象の大きさや要求される解像度によって、スマホのカメラで十分という場合もあれば、高解像度のデジカメが必要もしくはデジカメでなければならない、という場合もあり、環境によっては照明設備を用意する必要があるかもしれません。これまでAIやIoTなどの技術を活用して物流現場の様々な課題を解決してきたノウハウを元に、お客様のニーズや現場環境に最適なソリューション構成を提案できるのが弊社の強みです。このほか、AIで何らか判定を下した後の工程を自動化したり、AIによる誤判定をリカバリする工程の設計なども対応可能です。本ソリューションの目的は、これまで人が目視で行っていた品質検査をAIに置き換えて省人化を実現することですが、品質検査の前後業務を司るシステムと連携して自動化の範囲を拡大することで、より大きな効果が期待できます。弊社は、このあたりのSIについても豊富な実績があるのでおまかせください。

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小規模から、幅広い業種、多様な環境の検品・検査ニーズに対応

───「AI品質検査ソリューション」のユーザとして、具体的にどのような業種を想定していますか。

石井氏:製造業を筆頭に、物流業を含め様々な業種・業態で検品・検査業務が発生しており、AI活用による省人化や精度向上のニーズは、かなり多いのではと考えています。実際、最近開催したセミナーで本ソリューションを紹介したところ、建築現場の施工検査で活用できないか、レンタル業にて返却商品のキズや汚れチェックに使えないかなど、全く想定外の業種からお問い合わせをいただきました。このほか、中古ブランド品の買い取り・販売業が、人の目とダブルでチェックして査定する、といったシナリオにもフィットしそうですね。ベテランでなくても、真贋判定ができ、適正な査定価格が提示できるのは、AIならではのメリットです。
二藤氏:幅広い業種で小規模でも利用いただけるよう、一番苦労したのが料金設定です。AIエンジンとしてIBM CloudのMaximoファミリーを利用していますが、どちらかというと大規模な製造業で使われるケースが多く、品質検査の仕組みとしては大規模な投資が必要でした。今回、利用する機能を絞るなどして、その部分の料金を抑えることで、スマホのカメラとモバイル通信を利用する最小構成の場合、人件費1人分程度でご利用いただけるようにしました。

個別最適から全体最適へ、フェーズ展開していく計画

───3社協業プロジェクトの今後についてお聞かせください。

二藤氏:品質検査業務の省人化・可視化を実現する「AI品質検査ソリューション」を、個別最適化を実現するフェーズ1の1つと位置づけており、これに続くフェーズ2・フェーズ3を検討しています。フェーズ2では、フェーズ1の「部分最適化」を組み合わせ、工場全体の最適化(ファクトリー最適化)を推進。 フェーズ3ではファクトリー最適化をさらに発展させ、エンドツーエンドの物流業務全体最適化を提案・推進していく計画です。

IBM Cloudパートナー事例_品質検査業務 全体最適化に向けたソリューション群を開発・提供

石井氏:個別最適化ソリューションについては、弊社が提供する物流DXソリューション「BRAIS」で様々なサービス群を提供しています。Big Data/Robot/AI/IoT/Sharingの頭文字をとったネーミングのとおり、先端IT技術を活用して現場の課題を解決へと導きます。今後のフェーズ展開でもこうしたノウハウを活かせればと考えています。 

IBM Cloudパートナー事例_セイノー情報サービス_BRAIS 物流DXソリューション「BRAIS」

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