2024年1月24日掲載
長年、国内企業のビジネスを支えてきたIBM i®の基幹システムや業務システム。DXに向けてクラウドへの移行を検討する企業が増えるなか、IBM iはそのまま活かし、SaaSやIaaS、SNSやモバイルアプリなどとの外部連携によって、インフラ全体のモダナイズを提案するのがベル・データ株式会社だ。IBM iの外部連携を手軽に実現する同社のソリューション「B-Core API-HUB」について、実際の導入・活用事例をご紹介いただきながら、特長やメリットをお聞きした。
●お話を聞いた方
アプリケーションビジネス本部
アプリセールス推進室
セールス プロフェッショナル
安達 美知政 氏
安達氏:弊社は1991年の設立以降一貫して、IBM Power®製品およびIBM iを事業の中核に据え、ハードウェアのレンタル・保守から、アプリケーション開発・保守、運用支援・アウトソーシングサービスなどを手がけてきました。現在は、オンプレミスだけでなく、SaaS/IaaSなどのパブリッククラウドやプライベートクラウド、クラウドとオンプレミスを連携したハイブリッドクラウドなど、多様なインフラニーズに対応し、構築・運用サービスを提供しています。
お客様が“クラウドシフト”を進めるプロセスでは、クラウド移行が難しくオンプレミスのまま残された基幹システムや業務システムとクラウドサービスとの連携の問題が必ず発生します。基幹システムからCSVを吐き出してクラウドサービスに取り込んだり、人手で再登録したりといったアナログ対応で連携させることもできますが、いずれも非効率的で、手作業での再登録には人為ミスがつきものです。
特にIBM iのシステムを長年利用しているお客様のなかには、“レガシーなIBM iだけに、SaaSとの自動連携の仕組み構築は難しいだろう”と思い込んで、大きなストレスを抱えつつ手動での連携を続けているケースがよくありますが、実際には、自動連携の仕組みを構築する手法はいろいろあります。SaaSやモバイルアプリの導入が進むにつれ、お客様からIBM iのAPI連携環境開発について相談やご依頼をいただくことが増え、こうしたニーズに応える連携ソリューションとして「B-Core API-HUB」を開発、2022年10月から提供を開始しました。
安達氏:「B-Core API-HUB」は、業界標準技術であるREST APIを利用したIBM iと外部(オンプレミス/クラウドを問わず)のサービス連携ソリューションの総称です。「B-Core API-HUB」を活用することで、IBM iをREST APIサーバとして外部のサービスから問合せを受けてデータの受け渡しをしたり、逆に、IBM iをREST APIクライアントとして基幹システムからクラウドサービスに連携したりが容易にできます。
最大のメリットは、オンプレミスのIBM iはそのままに、SaaSやIaaS、SNS、各種モバイルアプリ、ECサイトなどと連携し、DXに向けた社内インフラのモダナイズを最適コストで実現することです。単純にレガシーだから……という理由で、クラウドやIAサーバへの移行を唱える経営者もいらっしゃいますが、高い安定性・信頼性でビジネスを支えてきたIBM iの社内システムは、今なお企業にとって重要な資産です。
すべて移行するには膨大なコストと工数を要するうえ、現状のパフォーマンスや安定性・堅牢性、セキュリティを確保できるとは限りません。このため弊社では、度々の法改正対応が必要なものや経費精算など個別業務からSaaSなどクラウドに移行して、IBM iに残る基幹系や業務システムと連携する形をお勧めしており、これを手早く実現するのが「B-Core API-HUB」というわけです。
IBM iの外部API連携には様々な方法がありますが、「B-Core API-HUB」では、内製化に向けた学習支援サービスや、ノーコード/ローコードツールを活用した構築、環境構築のフルアウトソーシングなど多様なサービスをご用意しており、お客様の情シス部門の規模やスキルレベル、将来の内製化意向など、多様なニーズに応じた最適なソリューション提供が可能です。
安達氏:はい。オンプレミスのIBM iで基幹システムを構築している製造・販売業の事例ですが、このお客様は顧客の大半を占める小規模事業者からFAXで発注を受け付けており、注文内容の確認・入力業務が発生していました。また、決算の開示がなく与信リスクを判断できない事業者も多く、新規取引を獲得するうえで障壁となっていました。
最近は、こうした事業者が一般のECサイトで調達するケースも増え、ビジネスチャンス損失につながるなど課題が多く改善が求められていました。そこで、「LINE」を利用したチャットボット発注システムを開発し、チャットボットサービスからIBM iのデータ(在庫の有無や金額など)を参照して簡単に発注できるようにしました。その結果、手作業の受注処理業務から脱却し、さらにクレジット会社の決済代行サービスとも連携して、注文を受ける前に与信を行うことで与信リスクからも解放されました。
このケースでは、「LINE」や決済代行サービスなどとの外部連携を、IBM Cloud®上に構築した「B-Core API-HUB」による連携アプリケーションサーバ経由で実現しています。外部連携によるIBM iモダナイズのメリットはほかにもあります。「LINE」という新たな顧客接点を得たことにより、キャンペーンや新製品情報などを発信することで売上拡大が期待できるほか、将来的には、IBM Cloudが標準提供するAIソリューションIBM Watson®を利用した傾向分析や販売予測も可能になります。
日本アイ・ビー・エムおよびソフトバンクの3社のサービスによって実現した本事例は、国民の間で広く普及し知名度の高い「LINE」との連携ということもあり、IBM iユーザの間ではかなり注目されました。(本事例の詳細はこちらから)
安達氏:3社協業については、お客様の企業規模やニーズが弊社独自の案件とは大きく異なるケースも多く、今後も積極的に取り組んでいきたいと思います。特にソフトバンクについては、メガクラウドすべてを扱っていてマルチクラウドに対応するほか、セキュアに接続するためのネットワークからゼロトラストなどセキュリティ対策まで、ポートフォリオがユーザのDX事例です。今後さらにAI連携などについても協業を進められればいいですね。
現在弊社は、1,000台弱のIBM i(AS/400®)、約120社のアプリケーションについて運用・保守契約を締結し、24✕365のインフラ環境監視や障害対応、技術支援などのサービスを提供しています。IBM iに精通したエンジニアは約100人を数え、お客様ごとにSMO(Service Management Office)や担当サービス責任者を配置するアウトソーシングサービスにも注力しています。高品質のサービスを継続的に提供していくために、社内の人材育成・教育が欠かせませんが、社外に向けても教育メニューも提供することで内製化ニーズに応えていく計画です。
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