ニューノーマル時代の福利厚生のあり方を考える

2023年10月1日更新
2020年11月9日掲載

今、社会は急速に新しい時代へと動き始め、ビジネスにも多大な影響が生じています。企業はさまざまな対応を迫られていますが、福利厚生の見直しもそのひとつでしょう。働き方が多様になり、従来のようにオフィス勤務の従業員ばかりではなくなった今、企業には、従業員それぞれの働き方や事情をより細かく把握し、柔軟に対応する姿勢が必要とされています。今回は、変化の中で求められている福利厚生のあり方について探ってみましょう。

目次

テレワークが急速に普及した背景

自宅やサテライトオフィスなどを利用し、場所に縛られずに働くスタイルを指すテレワーク。普及が拡大した背景には、主に2つの要因があります。

1つ目は、働き方の多様化と働き方改革の影響です。1990年代以降、少子高齢化が進む中で、育児・介護と仕事を両立したい従業員や働き続けたいシニア世代を中心に、柔軟な働き方に対するニーズが高まりました。近年では、政府が推進する働き方改革にもあと押しされ、多様な働き方に対応する手段としてテレワークが注目を集め、徐々に普及し始めています。

2つ目の要因が、新型コロナウイルス感染症の流行です。感染防止のため、人々には、密集や密接を避ける、ソーシャルディスタンスを保つ、人と会話するときはマスクを着用するといった新しい生活様式の実践が求められるようになりました。それに伴って多くの企業が、満員電車での通勤やオフィスでの密集を避けるためにテレワークを導入し始め、急速に普及したのです。 医療、物流、小売・サービス業など出勤が不可欠な業種を除いた多くの企業で、今後もテレワークは推進され、定着していくと考えられています。

テレワークの普及で変化する福利厚生

福利厚生とは、企業が従業員に提供する賃金以外の報酬のことで、社会保険や雇用保険をはじめ、社員食堂や保養所、住宅費の補助、カウンセリングなど、従業員の生活を豊かにするためのさまざまなサービスを含みます。従業員の生活の質を向上させて、人材の定着を図ることを主な目的としています。

なお、福利厚生には、大きく分けて「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があります。前者は法律で定められた社会保障制度ですが、後者は企業が自らの負担で用意するもので、企業によって内容が異なります。次に、それぞれがどんな制度・サービスを含むのかを紹介します。

法定福利厚生(提供は必須)

健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険(失業保険)、労災保険(労働保険)、児童手当拠出金

法定外福利厚生(提供は任意)

自社運用のもの
社宅、寮、社員食堂、家族手当、家賃補助、交通費、特別休暇、資格取得手当 など

外部サービスを利用するもの
宿泊・旅行、スポーツクラブ、健康診断、カウンセリング、財産形成(財形制度)、育児支援、レジャー など

従業員の働き方やニーズが多様化し、テレワークの普及が進んだことで、福利厚生にも変化が求められています。というのも、従業員のワークスタイルが大きく変化すると、さまざまな面で負担やストレス、ケアが必要な部分が増え、従来の福利厚生ではカバーしきれなくなってくるからです。

例えば、これまでオフィス勤務だった従業員が在宅勤務をするには、自宅に業務可能なスペックのPCやインターネット回線を導入して、環境を整備しなければなりません。 さらに、Web会議中の生活音を配慮してもらうなど、従業員が在宅勤務することで家族の負担が増すといった環境面の問題が発生する場合もあります。

環境面の負担のほかに懸念されるのが、健康問題です。まず身体面では、キッチンテーブルや座卓などで仕事をして腰を痛める、通勤が不要になったことで運動不足になるなどの問題が考えられます。さらに、リアルなコミュニケーションが減ったことで孤独を感じやすくなったり、仕事の悩みを相談しづらくなったりと、精神面にも少なからぬ影響があります。ニューノーマル時代の福利厚生には、テレワークのための環境整備に加え、さまざまな形で心身をケアするメニューも必要とされるでしょう。

従業員が求める福利厚生とは?

では、これからの時代、企業は従業員にどのような福利厚生を提供していけばいいのでしょうか。実際にテレワークに対応した福利厚生を導入している企業の事例や最新の福利厚生サービスから、今求められている福利厚生のあり方を探ってみましょう。

テレワーク支援の福利厚生の事例

IT業界を中心に、すでに多くの企業がいち早くテレワーク体制に移行し、従業員の自宅での労働環境整備のため、新たな福利厚生を導入しています。ここでは、代表的な事例を紹介します。

メルカリ
フリマアプリを運営する株式会社メルカリは、緊急事態宣言中の2020年4月に、完全在宅勤務体制への移行と、自宅での勤務環境構築などのために、半年分で6万円の在宅勤務手当を支給すると発表しました。

note
デジタルコンテンツの制作・配信を手がけるnote株式会社は、2020年7月から在宅勤務をベースとしてケースに応じて出社を認める「フレキシブル出社制度」を導入。在宅勤務手当として正社員・契約社員に月1万円、アルバイトにも月5,000円を支給するほか、出社時の交通費は実費支給するとしています。

(参考:https://note.jp/n/nf0985293c654

ヤフー
インターネット関連サービスのヤフー株式会社は、2020年10月からの無制限リモートワークの導入に伴い、通勤定期代の支給を取りやめ、交通費を実費精算にすると発表。代わりに月に最大7,000円(どこでもオフィス手当4,000円+通信費補助3,000円※)の在宅勤務手当を支給するとしています。
※従来の通信費補助に新たな補助を足した合計

テレワークに対応した福利厚生サービス

企業からの新たなニーズに合わせて、テレワークに対応した新たな福利厚生の外部サービスも登場しています。

Kagg+(カグプラス)
従業員が自宅用にデスクやチェアなどのオフィス家具を購入する際に、企業が補助できるサービスです。対象はKagg+のサイトに掲載されている商品で、企業負担額の割合が20%・50%・100%の3つのプランから選択できます。働きやすいデスク環境を整えることで、在宅勤務中の体への負担を軽減するとともに、作業効率アップも期待できます。

オフィスおかん仕送り便
在宅勤務中の従業員の自宅に、月に一度、真空包装の惣菜セットを配送するサービスです。メニューは管理栄養士監修のもと旬の食材を使用したオリジナルの惣菜で、従業員やその家族の健康サポート、家事負担の軽減につながります。

WORC(ワーク)
道具がなくても簡単に本格的なスペシャルティコーヒーを楽しめる商品を従業員の自宅に届けるサービスです。在宅勤務中のリフレッシュはもちろん、従業員どうしのコミュニケーションのきっかけにもなります。

バヅクリ
テレワーク導入による社内コミュニケーションやモチベーション、帰属意識の低下を解消するため、オンラインで体験イベントを提供する福利厚生サービスです。「アソビ・学び・つながる」をテーマに100種以上のプログラムが用意されています。

Cotree(コトリー)
法人向けにオンラインカウンセリングを提供する福利厚生サービスです。従業員がカウンセリングを利用した際の料金を使った分だけ企業が負担する仕組みです。テレワークによるストレスを抱え、育児や家庭生活との両立に悩む従業員のメンタルケアに役立ちます。

社会と体制の変化に合わせて福利厚生も見直しを

テレワークは今後IT業界以外にも普及し、定着していくと予想されます。本格的なテレワーク体制への移行後は、従来の福利厚生では従業員やその家族の満足度を維持することは難しいでしょう。モチベーションの低下は生産性の低下に直結します。テレワークを導入・実施するなら、あわせてテレワークに対応した福利厚生や環境の整備も求められます。時代の動きを見据え、他社の取り組みも参考にしながら、自社に最適な福利厚生について、従業員目線で考えてみましょう。

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