Alibaba Cloudのネットワーク技術は、特に日中間のネットワーク環境構築において有効です。日本企業が中国進出する際の、現地ITインフラ調達から安定した通信環境、柔軟な運用方法などを可能にしています。
具体的なプロダクトとして挙げられるのが、Alibaba Cloudのバックボーンネットワークを利用した以下の5つのプロダクトです。
今回はこれらのプロダクトを活用した、具体的なネットワーク構成実例をご紹介していきます。
ソフトバンク株式会社
クラウドエンジニアリング本部 PaaSエンジニアリング統括部
通信キャリアの伝送路構築からエンタープライズのLAN設計構築まで、ネットワークを中心としたインフラ経験を経て、2020年にSBクラウド入社。ソリューションアーキテクトとして、ネットワークプロダクトの技術検証、ソリューション開発を担当。
コラムの前編でご説明した通り、日中間ネットワークには
といった課題がありました。
「CEN」は、コンソール画面から数分で申し込みが可能かつ初期費用も不要な、国際専用線品質のネットワークサービス。1Mbpsあたり約1.5万円の低価格ながら月単位の速度変更が可能なため、スピーディかつ柔軟な運用が可能です。
まずはこのCENを活用した社外・社内の通信改善の事例をご紹介します。
中国向けにアプリサービスを配信する企業様では、ユーザのサービス利用時の通信安定性に課題がありました。従来の環境ではユーザがアプリを利用する際に、2〜5%の確率で通信断が発生していたのです。
そこで、日中間ネットワークの安定を図るために「CEN」を導入したところ、通信遮断頻度が激減。 安定したサービスの提供により、アプリ利用者の満足度も向上。1〜2ヵ月という短期間だったにも関わらず、検証環境から本番環境までスムーズに構築ができました。
中国に拠点を置く情報サービス企業様では、中国から日本のグループウェアにアクセスする際に通信の遅延が発生。業務に支障をきたしていました。
こちらは中国拠点の複数端末を「VPN Gateway」で接続。日中間は「CEN」でつなぐことにより、安全で安定した通信環境を確保しました。 従来では15〜20%あったパケットロスがほぼ0となり、約80msecという安定した通信を実現。費用対効果も評価されており、月額約5万円で常時5、6人が快適にグループウェアを利用できる環境になっています。
クラウドインフラを活用するうえで、既存のオンプレミス環境と併用する「ハイブリッドクラウド」から、少しずつクラウドシフトしていくのが一般的です。この場合、日中間ネットワークにおいてはオンプレミスとクラウドの接続、または複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」においては異なるクラウド間のネットワーク接続が課題となります。
完全にクラウドシフトしていない企業であれば、物理接続サービスの「Express Connect」が解決策の一つ。日本のデータセンターからAlibaba Cloudのインフラを物理接続することができます。
一方、国内に小規模な拠点が各地にあり、閉域接続ではなくインターネット回線を利用したスモールスタートでAlibaba Cloudと接続するのであれば、「VPN Gateway」が推奨されます。「VPN Gateway」は閉域回線を新たに調達する必要がなく、既存のインターネット回線でIPsec接続またはSSL VPN接続が利用可能。また、拠点ルータとの接続だけでなく、他社パブリッククラウドのVPN製品とも接続可能です。
これらのサービスを活用した構成事例をご紹介します。
50,000人以上の従業員を抱える大手企業様でも、日中間のネットワーク環境に課題を持っていました。中国拠点から中国国外にメールを送信する際にメールが送信できなくなることがあったのです。
この課題を解決するため、すでに利用中だった他社のパブリッククラウドを含めたマルチクラウド構成でプロキシ環境を構築。これにより、安定したメールの送受信が可能になりました。
またWeb会議ツールの使用時にも、音声の遅延が解消され、業務をスムーズに進めていただくことが可能となりました。
日本で管理しているECサイトやゲームサイトを中国で展開する際、課題となるのはオリジンサーバへの距離です。国内と比べて距離が出てしまうため、国際インターネットであればレイテンシーやパケットロスを招いてしまいがち。これはユーザ満足の低下やアクセス数の減少の原因となります。
グローバルIP加速化サービス「GA」はAlibaba Cloudがグローバルに展開しているネットワークインフラと最寄りのアクセスポイントを結ぶサービス。特に中国におけるアクセスポイントは密度が濃いため、日中間の体感距離のギャップを埋めるのに役立つ手法です。
「GA」が提供する低レイテンシ、高安定性ネットワークは特にゲームアプリなどに有効。ゲームサーバを高速化させ、送信待ち時間の短縮が可能に。世界中のユーザが途切れることなくプレイできるようになり、定着率の向上も期待できます。 デプロイや管理も非常にシンプル。迅速にサービスが提供できるほか、コンソールを使用して連携されたネットワークアクセスと管理を促進。開発者の負担を軽減します。
中国でチェーン展開する飲食業などは、急遽新しい拠点にネットワークを構築しなければならないケースもあります。ところが「有線の手配に時間がかかってしまう」、「現地ベンダに頼らざるを得ない」、「スムーズな機器の交換ができない」といった課題が考えられます。
そこで一時的な回線の確保やバックアップとして幅広く活用されているのが、自分たちで導入から設定、保守が可能な「SAG(Smart Access Gateway)」です。
コンソール画面から購入し、送られてきたSAGの機器にインターネット回線を繋げるだけで、ゼロタッチプロビジョニング機能により、自動的にAlibaba Cloudと連携。Alibaba Cloudコンソールから設定変更やバージョンアップが可能な上、従来のCPEルータのように現地ベンダに運用を依頼する必要がなく、日本から管理できるのもメリットと言えます。4G SIMに対応しているため、ネットワーク構築までのリードタイムカバーやトラブル時のバックアップ回線としてもパフォーマンスを発揮するハードウェアです。
運用がシンプルな「SAG」ですが、展開力と高可用性も併せ持っており、これまで以上に中国拠点の展開をサポートするデバイス言えるでしょう。Alibaba Cloudは中国に多数のアクセスポイントを配しており、低レイテンシーな通信を可能にしています。さらに「SAG」は1ヶ国につき最大500デバイスを展開することができます。 また「SAG」は、アクティブデバイスに障害が発生した場合、バックアップデバイスに自動切り替えされ、安全な企業活動を促進します。
巨大マーケット中国に注目する日本企業の多くは、日中間ネットワークのハードルに頭を抱えていました。調達、コスト、通信速度、安定性、複雑性、保守管理などさまざまな課題がありますが、Alibaba Cloudのネットワークはその課題一つ一つに対し、ユーザ目線を持った設計・仕様でサービス・製品を提供しています。
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