組織の「心理的安全性」を脅かす「リモートハラスメント」とは

2020年9月11日掲載

リモートワークが「ニューノーマル」になる。その言説が現実味を帯びつつある今、企業は組織体制やマネージメントを抜本的に見直さなければいけない。

リモートワークは自由で多様な働き方を実現する一方で、社員に新たなストレスをもたらすこともある。その一例が「リモートハラスメント」だ。“画面越し”という、上司と部下とのこれまでにない距離感は、時に軋轢(あつれき)も生む。

これらのコミュニケーションギャップを乗り越え、ニューノーマルにおいて生産性の高い組織を構築するためにはどうすれば良いか。「リモハラ」問題から、ニューノーマルの強い組織づくりについて紐解いていく。

目次

コロナ禍で、リモートワークはニューノーマルになる

コロナ禍の中で、多くの企業がリモートワークを実施している。2020年7月26日には、西村康稔経済再生担当大臣が経済界に7割のリモートワークを改めて要請するなど、今後もしばらくは在宅勤務などのリモートワークが推奨されると予想される。

また、これを契機に働き方を抜本的に転換しようと試みる企業も現れている。

本当に出社しなければできない業務は? 緊急事態宣言により、半ば強制的に企業の働き方をデジタルシフトしたことで、これまでの働き方の非効率さが表面化した。結果的にコロナ禍以前より課題になっていた働き方改革を推進させることにつながり、今後もリモートワークが働き方のスタンダードとして定着する風向きだ。

株式会社ネオマーケティングが20~59歳の男女1,000名にアンケート調査をした結果、57.1%が非常時に限らず今後もリモートワークを実施したいと回答している。

多くの社員がリモートワークでも「業務ができる」という実感を得た今、企業はアフターコロナにおいてもリモートで働ける環境を整備しなければならない。そして、リモートの体制でも競争力を保てる、生産性の高い組織が、今、求められている。

ニューノーマル組織の鍵は「心理的安全性」

では、リモートでも生産性の高いチームを作るにはどうすれば良いのか?

Google のピープルアナリティクスチームは、「プロジェクト・アリストテレス」というプロジェクトの中で、社内で効果的なチームの特徴を調査し、次のような結果を導き出した。

※Google 「re:work」より

安心できる環境で、チームを信頼し、自分の役割を理解し、自分にとって意味がある仕事で、社会に良い変化をもたらす。Google の調査チームが発見した生産性の高いチームの特徴。その中でも最も重要なのが「心理的安全性」だと言う。

チームの中でミスをしても、それを理由に社員自身がチームメンバーから非難されることはないと思えることで、社員は安心して自分らしく働けるようになる。そして、心理的安全性の高い社員は、離職率が低く、仲間のアイデアを上手く利用し、収益性が高く、マネージャから評価される機会も2倍程になるという。

また、一方でGoogle のピープルアナリティクスチームは、同調査の中で生産性に影響の少なかった変数として、「チームメンバーの働く場所(同じオフィスで働くこと)」を挙げている。

つまり、社員が心理的安全性を感じられる環境はリモートでも提供可能であり、それを用意することが、ニューノーマルなマネージメントの重要な役割になるのだ。

心理的安全性を妨げる「リモハラ」の存在

では、コロナ禍におけるリモートワーク環境下では社員の心理的安全性はどれほど担保されていたのだろうか。対面で過ごす時間が減った分、コミュニケーションに起因するストレスが減ったかと思えば、実はそうではない。

ダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社が、リモートワークを実施する会社員110名に実施したアンケート調査では、79%が上司とのコミュニケーションにストレスや不快感を感じたことがあると回答した。また出社時と比較しても、66.4%がストレスや不快感が増えたと回答している。

つまり、リモートワークになったことで、上司と部下のコミュニケーションの溝は深まったとも言える。

最近では「リモハラ(リモートワークハラスメント)」「テレハラ(テレワークハラスメント)」と呼ばれる新しいハラスメントも生まれている。

言うまでもなく、ハラスメントは心理的安全性を妨げる要因となる。また、ハラスメントが起きにくい環境こそが、心理的安全性が担保された生産性の高い組織であることの証だとも言える。

以下は「リモハラ」の一例だ。

リモートワークの中でも在宅勤務は、それぞれの社員のプライベートとの距離が必然的に近くなるため、ハラスメントが起きやすくなる。また、オフラインでは気を遣えていた人が、オンラインになった途端に相手への配慮ができなくなるケースもある。

「オンライン会議セクハラ」や「在宅環境モラハラ」については、相手への気遣いと寛容さを改めて各自が意識して保つことが必要だ。

一方で、「監視パワハラ」の問題は根深い。

これまで勤務態度や印象などから上司が判断し、人事評価を決定していたような管理型組織であるほど、リモートワークではこれまでのマネージメントが通用しなくなる。

逆に、各自の役割が明確化され、成果で人事評価を決定していた自律型組織であれば、監視パラハラのような問題は起きにくいだろう。

「監視パワハラ」の原因を取り除くためには、企業はリモートワークを前提とした新たなメンタリティと組織体制を確立させなければならない。

ハラスメントリスクを回避する「組織の健康診断」

ハラスメントのリスクを回避するためには、事前の「予防措置」と事後の「発生時対応」の2つが必要だ。

いくら社内でハラスメント防止の啓蒙(けいもう)をしたとしても、そのリスクをゼロにすることは難しい。企業はハラスメントが起きてしまうことを前提に、その把握のための取り組みを行うべきだろう。

しかし、ハラスメントに関するヒアリングを全社員対象に定期的に行うのは膨大な人的コストがかかるため現実的ではない。

そこで効果を発揮するのが、社内サーベイと同時にハラスメントに関する調査を行う方法だ。「Wellness Eye Plus」はPC・スマホ・タブレットから回答できるアンケート調査システム。ストレスチェックサービス「Wellness Eye」にハラスメントリスク調査を加えた、総合的職場環境サーベイだ。

「Wellness Eye Plus」には、ストレスチェックに関する57の質問に加え、ハラスメントの実態調査のための18の質問、そしてパワハラ発生リスク算出のための17問の質問が用意されている。

パワハラ、セクハラの実態把握のほか、職場風土・マネージメントスタイルなどの質問から、パワハラ発生要因と抑制要因に着目し、発生リスクも算出。リスク算出ができることで、未然にハラスメントが起きにくい環境にするための多様な打ち手が可能になる。

ストレスチェックの回答結果も合わせ、他部門や業界平均と比較して、総合的に組織の健全性を計測することができる。言わば「会社・組織の健康診断」だ。

ハラスメントは心理的安全性の妨げになるだけでなく、直接的な経営リスクにもなり得る。従業員1,000人規模の企業でハラスメント事案が起きた場合の損失は、約1億円とも言われる。BCP(事業継続計画)の視点からも、ハラスメントは企業にとって喫緊の課題である。

1 on 1で「Wellness Eye Plus」の診断結果を組織づくりに生かす

「Wellness Eye Plus」によって洗い出された課題をどのように改善し、ハラスメントの起きにくい、心理的安全性の高い組織を目指すか。

ソフトバンクでは、サーベイの結果に基づき、上司と部下の関係の質の向上を目指し、1on1と言われる個人面談のミーティングを実施している。

1on1は、一方的な情報伝達の場ではなく、あくまで上司と部下の関係構築を行うための対話の場と位置づけている。対話により関係の質を「4」「5」までボトムアップさせることが、心理的安全性につながり、ひいてはハラスメントの起きにくい環境をつくる。

ソフトバンクでは1on1の結果、「上司が何をしているのか、何を考えているのかが分かり、上司をサポートしようという意識が芽生えた」「部下が業務をどのように工夫したり、どんな思いで行っているかを聞けるようになり共感力が高まった」という声も聞かれる。

なぜ1on1が有効なのか? コミュニケーションの課題を「○○してはいけない」というルールだけでコントロールをすると、逆に組織をぎこちなくする可能性もある。誰から言われたか、その相手との間に信頼は構築されていたかが、根本的な原因であるケースも多い。

ハラスメントに対して、相手との関係の質を高め、高度なコミュニケーションに取り組むことで改善を図ることは、心理的安全性を高め、組織の生産性向上の第一歩となるだろう。

「ニューノーマル」のリモートワーク環境下においては、社員の様子を目視することができない。だからこそ、サーベイなどのツールを活用することで、定期的に組織の健全性をチェックし、意識的に対話の時間を設ける必要があるのではないだろうか。

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