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「給与デジタル払い」が受取方法の新たな選択肢に。PayPayの「給与革命」への挑戦

「給与デジタル払い」が受取方法の新たな選択肢に。PayPayの「給与革命」への挑戦

新たな給与の受け取り方法として注目されている「給与デジタル払い」。テクノロジーの進化により、従来の銀行振込などに加え、スマートフォンの決済アプリや電子マネーを通じて受け取る選択肢が広がりつつあります。今回は、PayPay株式会社(以下「PayPay」)の担当者に、給与デジタル払いについて解説してもらうとともに、国内では初めて厚生労働大臣から指定を受けた給与デジタル払いの資金移動事業者として、昨年から提供している「PayPay給与受取」のサービス内容について聞きました。

柴田 直良(しばた・なおおし)さん

PayPay株式会社 金融戦略本部 金融プラットフォーム開発部 部長

柴田 直良(しばた・なおよし)さん

楽天銀行、住信SBIネット銀行を経て2022年にPayPay株式会社入社。2023年4月より現職。給与受取を起点にした事業開発の責任を負う

新たな給与受取の手段として注目の「デジタル給与」

「デジタル給与」や「賃金のデジタル払い」とも呼ばれる給与デジタル払いは、企業が従業員の給与をスマートフォンの決済アプリや電子マネーに直接支払う制度のことです。従来の労働基準法では、給与の支払いは現金が原則とされていますが、従業員の同意に基づき、銀行口座や証券口座への振込が認められてきました。そこに新たに加わったのが「デジタルマネー」による支払いです。2023年4月の労働基準法施行規則の一部改正(以下「法改正」)により、従業員が希望した場合に、企業は給料の一部をデジタルマネーで支払えるようになりました。

柴田さん

「従業員が給与デジタル払いの受け取りができるのは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動事業者(銀行以外で送金サービスを提供する登録事業者)の口座に限られます。現在、指定を受けている資金移動事業者は、PayPayと株式会社リクルートMUFGビジネスの2社となります」

  • 2025年2月末時点

そもそも、なぜ「給与デジタル払い」が注目されるようになったのか?

法改正により、賃金のデジタル払いが認められた背景には、日本国内でキャッシュレス決済の普及が進んでいることが挙げられます。経済産業省が発表したキャッシュレス決済額および比率の推移を見ると、決済比率は年々上昇しており、2023年には39.3%となりました。しかし、世界主要国のキャッシュレス決済比率と比べると、日本は依然として低い水準にとどまっており、この状況を受け政府は、将来的に80%まで引き上げることを目標に掲げると発表しています。

日本国内のキャッシュレス決済額及び比率の推移(2023年)

我が国のキャッシュレス決済額及び比率の推移(2023年) 出典:経済産業省 ニュースリリース「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」

出典:経済産業省 ニュースリリース「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました

ソフトバンクでも導入している「給与デジタル払い」のメリットとは?

ソフトバンクでも導入している「デジタル給与」のメリットとは?

給与デジタル払いの制度を利用することで、従業員側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。一般的に言われている代表的なメリットとして、以下が挙げられます。

①キャッシュレス決済の利便性向上

普段から使用しているキャッシュレス決済サービスで給与が受け取れるようになれば、よりスムーズな利用が可能になり、銀行口座からチャージする手間が省けます。また、キャッシュレス決済の利用機会が増えることで、ポイント還元などの特典を受けることもできます。

②銀行口座とキャッシュレス決済の両方を使い分けて給与を受け取れる

給与デジタル払いで受け取る給与の金額を従業員自身で設定すれば、「生活費用として決済する分はデジタルマネーで受け取り、貯蓄にまわすお金は銀行口座で受け取る」など、都合に合わせることが可能になり、生活費や貯蓄などの管理を行いやすくなります。

ソフトバンクグループ各社では、昨年9月分の給与から給与デジタル払いでの受け取りが開始されています。実際に利用しているソフトバンク社員からはどのような声が上がっているのか一部を紹介します。

  • 自動で入金されるのでチャージの手間がなくなった
  • 毎月一定額が振り込まれるので、使った金額を把握しやすく、使い過ぎを防げる
  • 給与デジタル払いをいち早く体感することができた

柴田さん

「給与デジタル払いのメリットをなかなか感じにくいと思う人もいるかもしれません。ですが、特定の層にとっては魅力的な選択肢となることがアンケート調査で分かっています。例えば、スポットワークをしている人の約7割が、給与デジタル払いの利用に前向きであるという興味深い結果が出ています。普段からPayPayを使い慣れているのと、稼いだお金をPayPayですぐに使えるという点で利便性を魅力に感じている人が多いのだと思われます」

一方で、企業側にはどんなメリットがあるのでしょうか。柴田さんによると、一番のメリットは企業のイメージアップにつながることが大きいと言います。

柴田さん

「先進的な取り組みを行う企業として、企業イメージの向上だけでなく、積極的な採用活動にもつながることが期待できます。キャッシュレス決済に慣れている若者やデジタルネイティブ層ほど給与デジタル払いの利用意向が高いことが調査から分かっているので、導入企業への好感につながるでしょう。さらに、選択肢が増えることで従業員の満足度向上にもつながると考えられます」

“支払い手段のPayPay” から “デジタルなお財布” へ。PayPayが変えていく給与のカタチ

“支払い手段のPayPay” から “デジタルなお財布” へ。PayPayが変えていく給与のカタチ

PayPayは、国内初の給与デジタル払いに対応する資金移動事業者として、厚生労働大臣の指定を受けました。2024年8月14日よりソフトバンクグループ各社の従業員を対象に「PayPay給与受取」の提供を開始。11月からは一般向けにも提供を開始し、幅広い企業がすでに導入をしています。

ここからは、PayPay給与受取サービスの特長や、柴田さんが考える「給与デジタル払いの未来」について話を聞いていきます。

「PayPay給与受取」サービスの特長について教えてください。

柴田さん

「『PayPay給与受取』は給与をPayPayアカウントで受け取れるサービスです。サービス機能の一つに、給与の振り分けができる『おまかせ振分』という機能があります。例えば、家族間でのおこづかいの受け渡しをPayPayで行っている家庭の場合、これまでは残高をチャージした後に個別に送金するというのが基本的な流れだったかと思います。この機能では、給与デジタル払いで受け取ったあとに、指定した日に決まった金額を自動で家族に送ることができ、送金の手間を省けるようになります。一気通貫でシームレスにPayPay上でお金のやり取りを完結できることが、PayPay給与受取の最大の特長だと思います」

PayPay給与受取の「おまかせ振分」機能

PayPay給与受取の「おまかせ振分」機能

そもそも、「PayPay給与受取」はどのような仕組みなのですか?

柴田さん

「資金移動事業者がどのような仕組みで給与を提供しなければいけないのかは、実は法律上では明確に定められていないんです。なので、私たちが最も重視したのは、『企業が導入する際の負担や手間を極力なくす』ということ。具体的には、企業が導入する際に、当社との契約を不要としているほか、給与を支払うための専用システムもなくしています。利用にあたっては、当社側で給与の受け取り専用口座をPayPayアカウント上で従業員に発行し、企業側は従来通りの方法でその口座番号に給与を振り込むだけのオペレーションとしています」

なるほど。それによって、企業が導入する際のハードルが低くなりそうですね。

柴田さん

「そうなんです。ある外部調査によると、『給与デジタル払いの導入を検討しているか』の問いに、導入予定があると回答した企業はわずか4%だったそうです。一方、当社が実施した労働者向けの調査では、2〜3割の人が利用してみたいと回答しているんです。こうした雇用側と雇用される側の認識のギャップを解消していかないと、従業員の満足度や採用活動にもゆくゆく影響を及ぼしかねないと考えています」

“国内初” の資金移動事業者の認定を受けたPayPayですが、「1番」にこだわった理由について教えてください。

柴田さん

「ユーザー数が国内No.1で6,500万人(2024年8月時点)を超える登録者を持つ企業として、やはり最初に資金移動事業者の指定を受けるべきだという自負がありましたね。

「PayPay」登録ユーザー数の推移

厚生労働大臣の指定を受けるには、厚生労働省からいくつかの要件審査がありました。具体的には、給与の適切な保全や、大規模災害などでシステム障害が発生した場合の復旧体制の構築など、さまざまな観点での審査が行われました。当社では、第三者保証機関である三井住友海上火災保険株式会社による保証により、万が一PayPayが破綻した場合でも、6営業日以内にPayPayアカウントで保有されている給与相当額の保証金を支払うことになっています。審査を通過するための準備は大変なことも多かったですね」

導入された企業からの反応はいかがですか?

柴田さん

「企業イメージのアップにつながっているとの意見や、それだけでなく、企業が給与デジタル払いを導入することで、社内のデジタルリテラシーの向上に取り組む企業もいます。DX推進を強化している企業の導入事例では、社員の約13%がこの制度を利用していて、その利用者の大半が40~50代の社員なんだそうです。PayPayでの給与受け取りをきっかけに、社員のデジタルへの興味関心やリテラシーの向上にもつながっているとても素晴らしいことだと思います」

今後、「PayPay給与受取」をどのようなサービスにしていきたいとお考えですか?

柴田さん

「給料の支払いは必ずしも月1回である必要はないと思っているんですよね。諸外国では、月1回以上が当たり前の国もあります。日本の法律では、月に最低1回以上支払えばよいと定められています。先ほど申し上げた、隙間時間でできるスポットワークの利用がさらに普及すると、PayPayに給与が振り込まれた方がチャージの手間も省けて利便性が高くなる。これまで “支払い手段” だったPayPayが、これからは “デジタル財布” のPayPayに変わっていく時代がくると思います。

私が目指したいのは、『給与受取革命』ではなく、『給与支払い革命』。月1回の給与という常識が覆る未来がくる可能性は十分にあると思っています。そのときに、PayPay給与受取を通じて、企業側の手間とコストをいかに抑えながら実現できるか、ということを今まさに真剣に考えています」

(掲載日:2025年3月18日)
文:ソフトバンクニュース編集部

国内初の給与デジタル払い対応サービス「PayPay給与受取」

国内初の給与デジタル払い対応サービス「PayPay給与受取」

給与デジタル払いに対応する企業の従業員は、給与を金融機関口座や現金で受け取ることに加え、会社から従来と同様に銀行口座宛ての振込をされることで、PayPayアカウントでもPayPayマネー残高(PayPayマネー(給与)として給与を受け取ることができるようになります。

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