テレビのCMなどで「紫外線対策」の文字を見るたび、「別に美容に関心があるわけじゃないし、正直面倒かも…」と思いながら、今日も素肌で外へ飛び出しているそこのあなた! 丸腰で紫外線を浴び続けると、美容だけでなく、健康にも影響を与えるかもしれないことをご存じでしたか?
今回は、肌の再生医療の専門家である医学博士の北條元治さんに、紫外線が私たちに与える影響について詳しく伺いました。さらに、日焼け止めの塗り方やインナーケアなど、誰でも簡単に始められる対策方法もご紹介。この記事を読んで、健康意識を高めていきましょう!
決してあなどるなかれ。紫外線による影響とは?
強い日差しが降り注ぐ時期は、紫外線の影響を気にする人も多いのではないでしょうか。そもそも紫外線とはどういったものなのか、まず基礎知識を北條さんに伺います。
紫外線は3種類。特に気をつけるべきはA波・B波
はじめに、紫外線の概要について教えてください。そういえばCMなどで、「A波」「B波」という言葉を聞いたことがあります。
北條さん 「紫外線とは、太陽光に含まれる電磁波の一種。紫外線、赤外線などの見えない光、目で見える光(可視光)は、『波長』という単位で表されます。
そして波長とは “光の波の1回分の長さ”、つまり波の山と山の間隔のことを指しており、紫外線はこの波長の長いものからA波(UV-A)、B波(UV-B)、C波(UV-C)の3種類に分けられます。このうち、C波は地球を覆うように存在しているオゾン層にほとんど吸収・反射されるため、地表には届きません。私たちが気にすべき紫外線は、A波とB波。それぞれの波長の長さは以下の通りです」
- A波(UV-A)の波長:320~400nm
- B波(UV-B)の波長:280~320nm
- C波(UV-C)の波長:280nm以下
波長が異なると、私たちの体への影響も異なるのでしょうか?
北條さん 「その通りです。波長が異なることで、肌への影響力も変わります。波長の長いA波は『真皮』と呼ばれる肌の奥まで届き、肌の弾力などを保っているコラーゲンなどを刺激します。紫外線がしわやたるみの原因になる、という話を聞いたことがあるかもしれませんが、その主な原因となっているのはA波なんですね。
一方、B波は真皮と比べて浅い部位、『表皮』まで届きます。B波はエネルギーが強いといわれているので、肌を赤くただれさせる熱傷、つまりやけどを引き起こすケースがあります。また、しみ、そばかすの原因となる、メラニン色素の生成を促す作用もあるのです」
紫外線を浴びるメリット、デメリットを正しく知っておこう
なるほど。紫外線は浴びないようにすべきなんですね…。
北條さん 「そう言えますが、メリットもあるんですよ。例えば、紫外線を浴びれば体内でビタミンDが生成され、免疫力アップや骨粗しょう症の予防にもつながります。その他、殺菌効果もあるといわれていますね。
さらに私個人としては、精神面によい影響を与えるとも思っていて。私は自転車が趣味なのですが、太陽の下で行うスポーツって気持ちがいいですよね。紫外線の影響ばかりを気にして外出を控えるのは、精神衛生上よくないとも思うんです」
一概にデメリットだけとは言い切れないんですね。
北條さん 「はい。実は、紫外線が人体にとって有害とされたのはここ50年くらいの話なんです。人間は古来より太陽とともに生きてきて、メラニン生成など防御反応が備わっていますから、過度に怖がる必要はありません。
とはいえ最近では、特にオゾン層の破壊が深刻なオーストラリアで、主にB波の影響による皮膚がんが増えているなどの傾向も見られます。皮膚がんの発生原因は明確化されていませんが、紫外線による慢性的な刺激が原因の1つと考えられていますね。また、白内障の原因になるなど、肌以外にも紫外線は影響するので、恐れずに適切な対策を行っていくことが大切だと思います」
紫外線対策は、1年を通じて必要
紫外線対策は、日差しの強い夏だけ行えばいいのでしょうか?
北條さん 「いえ、実は夏以外にも注意が必要です。気象庁が発表している紫外線の強さ指標『UVインデックス』によると、月ごとの量に多少の差はあるものの、紫外線は年間を通して降り注いでいることがわかります。つまり、1年を通して紫外線対策をすることがベストと言えるでしょう」
紫外線のメリット、デメリットを正しく知った上で、年間を通して対策を行っていくことが重要だと話す北條さん。次のページでは、適切な対策方法について詳しく見ていきます。
誰でもすぐできる! 紫外線対策として有効な方法は?
ここからは、紫外線をどのようにしのいでいけばよいのか、適切な対処法を北條さんにご紹介いただきます。
紫外線対策のポイントを教えてください!
北條さん 「まずは何より、自分が続けやすい方法を見つけることです。顔や体を覆い隠すような衣服や帽子をまとって外出するなど、自分の生活スタイルを大きく変える方法は、多分あまり長続きしないんじゃないでしょうか。紫外線対策はあくまで『よりよく生きるための手段の1つ』。対策そのものを目的と捉えないようにすれば、無理なく続けられるはずです。いくつかの方法を紹介していきますので、自分に合う方法を見つけてみてください」
紫外線と付き合っていくための、3つの対策法
まずはどんなことから取り組めばよいのでしょうか?
北條さん 「以下の優先順位で意識してみましょう」
この優先順位でやってみよう。3つの紫外線対策
- 10〜16時の外出は避ける
まずは時間帯を気にするところから。10〜16時は紫外線がもっとも強くなる時間帯なので、その時間帯の外出を避けられればベストです。
- 日焼け止めを塗る
外に出るときは、日焼け止めを塗るようにしましょう。仮に日陰などにいても、紫外線は建物やアスファルトに反射して私たちに影響を及ぼします。色や生地の薄い衣服を来ている際は、その部分も日焼け止めを塗っておきましょう。
- 日傘や帽子、サングラスなどを活用する
日傘や帽子などを取り入れれば、頭皮の日焼けも防げます。熱中症対策にもなるのでおススメです。見落としがちなのが目の対策。目から紫外線が入ると、先ほども言ったとおり白内障の原因になるほか、脳からメラニン細胞を生成するメラノサイトを活性化するホルモンが分泌されるともいわれているんです。
そういえば、室内にいるときも日焼けすると聞いたことがあるのですが…。 日焼け止めを塗っておいたほうがいいのでしょうか?
北條さん 「室内でも日焼けのリスクがあるのは事実です。ただ、対策をするにしても、やはり自分が続けやすい方法で、無理せず取り組んでいくことをおススメします。日焼け止めを塗り続けられるならベストではありますが、まずは遮光率の高いカーテンに変える、窓にUVカットシートを貼るなどの方法を試してみてはいかがでしょうか。強い日差しは家具の劣化などを招く可能性もありますから、一石二鳥かもしれませんよ」
もし日焼けをしてしまった場合、どうしたらよいでしょうか?
北條さん 「すぐに冷やして安静にすることですね。日焼けは熱傷、つまりやけどの1つなので、いわゆるケガと同じ状態ですから。肌が赤くなり、痛みやかゆみ、水ぶくれなどが見られる場合はすぐ病院を受診しましょう」
肌のバリア機能を高める水分補給も効果的
効果的なインナーケアはありますか?
北條さん 「水分補給は効果的だと思います。体内に水が不足すると、肌の水分が他の臓器に回されてしまい、肌の防御機能が低下することがあるんです。この状態が続くと、紫外線の影響を受けやすくなります。食物からも水分補給は可能ですが、意識的に水を飲むようにできれば、よりよいでしょう。熱中症予防にもなりますしね。
最近は『飲む日焼け止め』といったサプリメントも販売されています。ただ、サプリメント自体に紫外線をブロックする作用があるわけではないので、過信しすぎないほうがよいのではと思います。飲んだから大丈夫と思わず、ここまで挙げてきた対策と並行するのが無難ではないでしょうか」
無理なくできる紫外線対策のポイントを押さえられたら、気になってくるのは「日焼け止めの塗り方」。次のページでは、北條さん直伝、日焼け止めの使用方法について教えていただきます。
日焼け止めの塗り方を知って、万全の対策を!
最後に、紫外線対策に必要な日焼け止め、日傘といったアイテムの使い方、選び方について、北條さんにアドバイスをいただきました。
日焼け止めの防御力を示す「サンケア指数」
日焼け止めのパッケージには、「SPF」とか「PA」といった言葉が並んでいます。なんとなく、数値が高い方が効果がありそうな気がしますが、この言葉の意味について教えていただけますか?
北條さん 「SPFやPAは『サンケア指数』と言って、どちらも紫外線からの防御力を示す数値です。SPFは主にB波に対する防御力を表す指標で、数字が多くなるほどパワーが増します。PAは主にA波の防御効果を表していて、PAの後に続く『+』の数が多いほど、効果が高いことを意味します。
目安としては海などでレジャーを楽しむ場合、SPF50・PA+++など高い防御力の日焼け止めを使いましょう。ただし日常生活ではここまでサンケア指数が高い日焼け止めを使う必要はありません。SPF30・PA++以下の日焼け止めで十分です。サンケア指数が高いほど肌への負担も増える可能性があるので、シーンに合わせて使い分けるのがよいですね」
日焼け止めと毎日付き合うための「塗り方メソッド」
塗り方のコツはありますか?
北條さん 「日焼け止めを手に取って、顔に点で置いて、少しずつ伸ばして…。確かにそうすれば、ムラなく丁寧に塗れると思います。ただ正直、それを毎日続けるのって大変ですよね。これまで塗ってこなかった方は、特にそう感じるかもしれません。なので私は、『とにかくまんべんなく塗れていれば、どんな塗り方でもOK』と言っていますよ」
北條さん流・日焼け止めの塗り方
- 10円玉程度の量を手に取る
製品によっては具体的な使用量が明記されている場合もありますが、特に記載がなければ、私は一度にこれくらいの量を使っています。手に取ったら、両手を擦り合わせ、手のひら全体に広げてください。
- 顔全体に塗り広げる
ざっと顔から首まで塗布していきます。白くなりにくいタイプの日焼け止めなら、鏡を見なくても簡単に塗れて、初めて日焼け止めを使う方にもおススメです。
- 残った日焼け止めを、耳、首の後ろ、腕まで伸ばす
塗り忘れがちな耳や首の後ろもしっかり塗ってくださいね。腕が出ている服装のときは、同様に塗り残しがないよう気をつけましょう。
日焼け止めを落とすときに、気をつけた方がよいことがあれば教えてください。
北條さん 「落とすときは、製品ごとに指定されているかとは思いますが、基本的には普段使っている洗顔料やボディーソープなどを用いれば十分です。ただし水をはじくウォータープルーフタイプの日焼け止めは落ちにくいので、製品の注意書きをよく確認しつつ、クレンジング料を使ってしっかりと洗い流してください」
紫外線対策や皮膚トラブルも相談できるオンライン診療「HELPO」
日々移り変わる気温や天候。紫外線対策をしていたつもりでも、皮膚の状態が気になることも…。ヘルスケアアプリ「HELPO」は、24時間365日いつでも医師や看護師に質問できるチャット機能や、オンライン診療などのサービスが充実しています。美容皮膚(シミ対策、美容美肌対策)などの自由診療メニューも用意しています。
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日焼け止めの形状別、おススメの活用シーン
最近、日焼け止めはスプレーやシートなどさまざまなタイプが販売されています。どのようなものを選べばよいでしょうか?
北條さん 「使いやすく、続けられるものであれば、どんな日焼け止めでもよいと思います。例えば、先ほども言ったように、白くなりにくい日焼け止めなら色ムラができにくいので、鏡がなくてもノールックでサッと塗ることができます。また、ベタつかないサラサラとした使用感のものなら、ベタつきが気になってこれまで日焼け止めを塗ってこなかったような方でも抵抗なく使えるでしょう。自分好みの日焼け止めを見つけることが、継続して塗り続けるための近道です!
日焼け止めは汗などで落ちてしまうので、2~3時間ごとに塗り直しをするのが理想です。メイクをしている方なら、塗布しやすいスプレータイプのものを持ち歩くと、化粧を崩すことなく使いやすいのではないでしょうか」
衣服雑貨は、色の濃いものをチョイス!
日傘は紫外線を吸収・反射する効果の高い黒色のものがベストだと北條さん。同じく日焼け防止のために長袖の上着を着用する際は、色が濃く、生地の厚めのものが効果的。サングラスは最近UVカット効果の高い製品があるので、色の濃淡に限らず、まずは機能性をしっかりチェックして。
紫外線を浴び続けると、日焼けやしわだけでなく、皮膚がんや白内障のリスクも高まります。日焼け止めはもちろん、日傘や帽子、水分補給は熱中症対策にも効果的なので、ぜひ取り入れてみてください。思い立ったが吉日、できそうだと思えることから対策を始めて、紫外線と上手に付き合っていきましょう!
(掲載日:2024年8月22日)
写真:大崎あゆみ
文:大瀧亜友美
編集:エクスライト