SNSボタン
記事分割(js記載用)

【ソフトバンクのCSR】障がいがある人の「働きたい」を実現する新しい「ショートタイムワーク制度」とは

「『ショートタイムワーク制度』に出会い、働き出したことで、少しずつできることが増えてきて、自信も取り戻せている」

そう話すMさんの仕事は、データ集計や、プロジェクトの状況把握・報告。毎週木曜日の午前11時から午後4時までの4時間(1時間の休憩を挟む)、ソフトバンク本社(東京都港区)の管理系部門で働いています。

4カ月前まで「仕事をするのは夢でしかないのかな」と諦めかけていたMさん。統合失調症と診断され、長時間働いた翌日は動けなくなることもあったため、地域の障がい者支援センターに通うのも一苦労でしたが、新しい雇用制度をきっかけに、新たな一歩を踏み出しています。

Mさんのある日のスケジュール(例)

11:00~12:00 書類整理
12:00~13:00 昼食
13:00~15:50 午前中やり残した書類整理およびデータ整理
15:50~16:00 日報作成、パソコンの返却
16:00 業務終了

この日の仕事は、名刺データ整理と資料作成など

「ショートタイムワーク制度」とは?

仕事は問題なくこなせるにも関わらず、障がいなどの理由により、長時間勤務が難しい方が、週20時間未満※1で就業できる制度です。意欲があっても、働く機会を得られなかった全ての方が参加できる新しい雇用システムづくりを目指しています。

ソフトバンクでは、東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野※2と連携し、2015年9月から「ショートタイムワーク制度」を試験導入。2016年5月より本格導入し、2016年9月1日現在、15名の方がこの制度を利用して働いています。

アンケート集計、データ入力、郵便物の封入・発送といった作業工程がシンプルな業務から、サービス説明用のイラスト作成、チラシデザイン制作、資料の英訳など特定スキルを生かした業務など、他の従業員と同じ環境でさまざまな仕事に取り組んでいます。

今回は、「ショートタイムワーク制度」を共同で推進している、近藤 武夫准教授と、ソフトバンクCSR企画部の田中 宏明さんにお話を伺いました。

ショートタイムワーク制度はどんな背景で生まれたのですか?

近藤准教授:日本には障がいのある人の雇用を促進するための制度がいろいろとあります。しかし、基本的には週30時間以上、短時間雇用の場合でも週20時間以上働くことが必要です。「雇用」は社会参加の大きな一部分を占めているにも関わらず、障がいや難病などを抱えている人のうち、週20時間以上働くことができない人は、その枠組みから漏れてしまうというのが現状でした。

そこで、私たちの研究室では、20時間よりもさらに短い「超短時間」を軸に、多様な社会参加のあり方について研究を進め、主に学内で導入・実践を積み重ねてきました。 これを学内にとどまらず、実際に企業での導入展開を検討している段階で、以前から障がい者支援のプログラムを共同で実施していたソフトバンクへ話をしたところ、CSR企画部の主導で実施いただけることになりました。

東京大学先端科学技術研究センター 近藤 武夫准教授

これまで、障がい者の「超短時間」勤務制度が無かったのはなぜでしょう?

近藤准教授:日本型の雇用慣習では「ごく短い時間で誰かを雇用する」のはとても難しいという背景があります。多くの場合、一人の人材が長時間働いて幅広い業務に対応することが求められがちです。

でも、超短時間で働けるよう職場のあり方を変えれば、もっと多様な人材が同じ場所で働く経験を共有することができる。そんな発想から生まれたのが「ショートタイムワーク制度」です。この制度が、働く概念の多様化につながることを期待しています。

実際に制度を導入してみての感想は?


ソフトバンク CSR企画部 田中さん

田中さん:正直、初めはどういった業務をお願いすれば良いのか分からず悩みましたが、近藤准教授に、過去大学内で実施していた業務の例を教えていただき、それらを参考に依頼業務を決めていきました。社内でショートタイムスタッフへの業務依頼を募ったところ、想像以上に多くの部署から希望があり、仕事をしている本人はもとより、仕事を依頼している部署の満足度も高いことから、今後、さらにスタッフを増やしていきたいと思っています。

これまでに培ったショートタイムワーク制度のノウハウは、他企業や団体に共有するための手引書として作成を進めているとのこと。
超短時間勤務への理解が深まり、一人でも多くの方が就労できる環境が整うといいですね。

  • ※1
    障害者雇用促進法で企業や自治体は障がい者を一定以上の割合で雇用するよう義務付けられていますが、週の労働時間が20時間未満の場合、算定対象とならないため、就労意欲があってもその機会を得られずにいます。
  • ※2
    東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野は、障がいなどにより通常の雇用システムでは就労機会を得られない人々を排除しない新しい社会参加システム構築研究プロジェクト「IDEA(Inclusive and Diverse Employment with Accommodation)」において、企業との連携により、具体的な社会問題解決を目的として実施するアクションリサーチ型の研究を進めています。

(掲載日:2016年9月12日)