
動画の再生が止まったり、リモート会議で音声が途切れたり。「通信が遅くなった」と感じたとき、もしかすると原因はWi-Fiルーターの老化にあるかもしれません。普段意識しづらい機器ですが、スマートフォンやパソコンと同じように寿命があります。
そんな自宅のWi-Fiの調子が気になっている夫婦が、気になる疑問を解消するために、Wi-Fiルーターの寿命や買い替えのサイン、新しく選ぶときのポイント、そしてセキュリティの注意点をソフトバンクの担当者に聞きました。

話を聞いた人
ソフトバンク株式会社 ホームソリューション事業推進本部 サービス企画部 プロダクト品質企画課
香田 雅人(こうだ・まさと)
家庭向けインターネットサービスの品質企画を担当。Wi-Fiルーターの仕様検証や品質改善など、日々の暮らしに寄り添った通信環境づくりに携わっている。

相談者
妻
自宅でスマホやPCを使う機会が多く、最近Wi-Fiの調子が気になっている。

相談者
夫
在宅勤務が多く、オンライン会議でWi-Fiの不安定さを感じることがある。
目次
Wi-Fiルーターにも寿命がある?
家庭のインターネット環境を支えるWi-Fiルーター。一度設置するとそのまま使い続けている、という方も多いのではないでしょうか。
「ルーターって、一度買ったらずっと使えるものだと思っていました…。寿命ってあるのですか?」
「一般的には4〜5年がひとつの目安ですね。突然壊れることもありますが、多くの場合は熱やホコリ、長時間の稼働によって内部の部品が徐々に劣化します。その結果、通信が不安定になったり、再起動が増えてきたりする形で “サイン” が出ることが多いんです」
「うちはもう10年くらい同じルーターを使っているかも…。こういうケースって珍しくないのですか?」
「はい、壊れていないからそのまま使うという方は一定数いらっしゃいます。ただ、スマホやパソコンは3〜4年で買い替える人がいますよね。端末だけ新しくしても、ルーターが古いままだと本来の性能を生かしきれないということが起きます」
例えば、最新のスマートフォンはWi-Fi 6〜Wi-Fi 7相当の高速通信に対応しているものが多いのですが、家のルーターがWi-Fi 4や5のままだと、最大速度がそもそも追いついていません。
- 古いルーター(約10年前):最大1Gbps未満
- 最新スマホ:最大2Gbps以上も可能
性能差は2倍以上になることもあります。
「新しいスマホにしたのに、家では速くなった気がしない」という声は意外と少なくありません。この場合、原因はスマホではなく、古いルーター側がボトルネックになっていることが多いそうです。
「確かに、スマホは新しいのに家のWi-Fiだけ遅いって感じることあります」
「そうですね。Wi-Fi規格はだいたい4〜5年ごとに世代交代しています。10年同じルーターを使っていると、規格が2世代くらい前になっていることもあるので、通信の混雑に弱かったり、同時接続に対応しきれなかったりします。不満がないなら無理に買い替える必要はないですが、もっと快適にできる余地があるという意味では見直す価値がありますね」

Wi-Fiの “数字” は世代を表していて、数字が大きいほど新しい規格。Wi-Fi 4 → 5 → 6 → 6E → 7 という順に進化しており、同時接続の強さや通信の効率が大きく改善されています。
買い替えを検討したほうがいいサイン
Wi-Fiルーターは、寿命に近づくとさまざまなサインを出します。突然使えなくなることもありますが、ほとんどの場合、まずは通信の不安定さや動作の変化として現れるそうです。
「最近、動画の読み込みが遅かったり、Wi-Fiがよく落ちたりするんです。こういうのって買い替えのサインなのでしょうか」
「はい。例えば『急に通信が遅くなる』『途切れやすくなる』『本体が以前より熱い』『再起動が増える』などは、代表的なサインですね」
「本体が熱いときってあります…! あれも寿命のサインにつながるんですか?」
「そうですね。内部の回路に負荷がかかっている可能性があります。使用年数がたっている場合は、買い替えを考えてもよい状態です」
Wi-Fiルーターは4〜5年を超えたあたりから劣化が進みやすくなり、10年ほど使い続けている場合は、故障や不具合だけでなく安全性の面でも注意が必要になります。 長期間の使用によって内部の部品が想定以上に劣化していることもあり、ただ “まだ動いている” というだけでは安心とは言いきれません。
セキュリティ面から見た買い替えサイン
機能面だけでなく、セキュリティが最新の状態かどうかも、買い替えを判断する大切なポイントです。古いルーターはメーカーサポートが終わっているものが多く、脆弱(ぜいじゃく)性が見つかっても修正されず、そのまま使い続けると危険が高まります。現在主流の暗号化方式「WPA3」は、従来のWPA2よりも安全性が高く、通信を守る仕組みが強化されています。

WPA2やWPA3は、Wi-Fiを安全に使うための “暗号化のルール” のことです。WPA3はWPA2よりも強固な仕組みになっていて、外部から盗み見られるリスクを減らせます。
また、ルーター内部のソフトウエア(ファームウエア)も、脆弱性が見つかった際に更新されますが、古いルーターはメーカーサポートが終了している場合が多く、更新が止まる=守りが弱くなる状態になってしまいます。
長く同じルーターを使っている場合は、暗号化方式が古いままになっていないか、ソフトウエア更新が行われているかを確認し、安全面から見直しを考えるきっかけにするとよいかもしれません。
「暗号化方式や更新って、意外と気にしていませんでした…。性能より、セキュリティが心配になってきますね」
「そうなんです。どちらも最新の状態であることが大事なのです。古いルーターだと更新が止まってしまい、守りが弱くなってしまいます」
セキュリティ面も含め、買い替えを検討したいサインは次のとおりです。
- 通信が不安定
- 本体が熱い
- 再起動が増える
- セキュリティ更新が止まっている
- 暗号化方式が古い(WPA2まで)
これらが複数当てはまる場合は、快適さだけでなく安全にインターネットを使い続けるためにもルーターの見直しを考えたいタイミングです。
新しいWi-Fiルーターを選ぶときの3つのポイント

Wi-Fiルーターは同じように見えても、搭載されている機能や対応する規格によって性能は大きく異なります。買い替えを検討するときは、「最新かどうか」だけでなく、家族構成や家の間取り、同時接続する台数など、暮らしに合わせて選ぶことが大切です。ここからは、ルーターを選ぶ際に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
① 最新規格「Wi-Fi 7」または「Wi-Fi 6E」に対応
Wi-Fiの通信規格は数年ごとに進化しており、新しい規格ほど通信の効率がよく、混雑に強い仕様になっています。Wi-Fi 7は、複数の端末を同時に接続していても速度が落ちにくく、在宅勤務・動画視聴・オンライン学習など、Wi-Fiに同時接続するデバイスが多い家庭に向いています。
「家電量販店でWi-Fi 6対応って書いているものをよく見かけますけれど、従来の規格とそんなに違うのですか?」
「はい、違います。Wi-Fi 6は同時接続に強い規格です。複数の機器が同時に通信する今の生活スタイルには特に効果がありますね」
Wi-Fi 6Eはさらに6GHz帯にも対応し、電波干渉が少ない帯域で通信できるのが特徴です。規格が新しくなるほど性能は上がりますが、実際にどれを選べばいいかは、ご家庭での使い方や住まいの環境によって異なります。動画をよく見る、部屋数が多い、同時にたくさん接続するといった状況を踏まえて、それぞれの家庭に合った性能を選ぶことが大切です。
② 同時接続台数とアンテナ本数をチェック
家族でスマホ・PC・テレビ・ゲーム機など複数の機器を同時に使うことが増えた今、同時接続台数とアンテナ本数はWi-Fiルーター選びで外せないポイントです。古いルーターやアンテナ数の少ない製品では、複数端末が一度に通信しようとすると順番待ちのような状態が発生し、動画が止まったり、オンライン会議が不安定になったりすることがあります。
「仕事で会議しているときに、誰かが動画を見始めると急に遅くなるときがあります…。やはり同時に使うと負荷が大きいのですか?」
「はい。同時に複数の機器がつながると、古いルーターでは対応しきれず通信の順番待ちが発生することがあります。同時接続台数やアンテナ本数が多いほど、その影響を受けにくくなります」
こうした同時利用のしやすさは、ルーターごとの性能差が特に出やすいポイントです。そこで確認したいのが、同時接続台数とアンテナ本数です。ルーターのパッケージや製品情報には「同時接続◯台」「アンテナ◯本」といった表記があります。
一般的な目安としては、
- 利用者が2〜3人程度の場合:アンテナ2本
- 家族全員が複数の機器を同時に使う場合:アンテナ4本以上
を選ぶと、通信が安定しやすくなります。アンテナ本数が多いほど “同時に通信できる枠” が増え、家族それぞれがWi-Fiを使っても互いへの影響が少なくなります。
「うちも、夫婦で同時にパソコンを使うことが多いので気になります…。動画を見たりスマホをつないだり、意外と同時に使う場面って多いですよね」
「そうですね。2人以上が同時に通信するなら、アンテナ本数が多いほうが安定しやすいです」
③ 家の広さや間取りに合わせてメッシュWi-Fiも選択肢に
家の構造や部屋の配置によっては、ある部屋だけWi-Fiが弱いというケースがあります。壁・ドア・家具・階層の違いなど、電波を遮る要因が多いほど “電波の死角” が生まれやすくなります。そんなときに頼れるのが「メッシュWi-Fi」です。メインルーターに加えて、家の複数の位置にサテライトルーターを配置し、家中に網目状のネットワークをつくることで、すみずみまでWi-Fiの電波を届ける仕組みです。
「うちは部屋によってつながりにくい場所があって…。間取りによってそんなに違うものなのですか?」
「はい。壁が多い家、縦に広い家(2階建てなど)、家具の配置などで電波の届きやすさは大きく変わります。そういう場合は、メッシュWi-Fiが効果的です。死角になりやすい場所にも電波を届けられます」
「なるほど…。場所によって差が出るのは家の構造のせいなのですね」
Wi-Fiが不安定なとき、すぐにルーターのせいと決めつけず、原因を切り分けることが大切です。チェックポイントとしては次のとおりです。
- ルーターの再起動・アップデートで改善する→ルーター側の劣化・性能不足の可能性
- 家中どこにいても常に遅い→回線側の混雑や建物構造の影響
- 特定の部屋だけ遅い→電波の死角の可能性(=メッシュWi-Fiが有効)
「まずは基本的な対処(再起動・更新・置き場所の見直し)をしていただいて、それでも改善しない場所があるならメッシュWi-Fiが効果的です」
マンションなどワンフロア構造の住まいであれば、ルーター1台で十分届くケースもあります。一方、戸建てや部屋数が多い住まいでは、ルーター1台だけでは電波が行き届きにくい場所が生まれやすいため、メッシュWi-Fiを組み合わせると安定しやすくなります。住まいの形や家族の使い方に合わせて、「どこで」「どのくらい使うのか」を基準に見直すことで、より快適なWi-Fi環境を整えられます。
快適に使い続けるためにできること

新しいルーターを買い替えたあとは、できるだけ長く快適に使い続けたいもの。Wi-Fiルーターは、日ごろの扱い方や環境によってパフォーマンスが大きく左右される機器です。ここでは、今日からできるルーターを長持ちさせるためのポイントをご紹介します。
Wi-Fiルーターは高温・多湿・ホコリに弱いという特徴があります。特に熱がこもりやすい場所に置いてしまうと、本体を守るために性能を抑えてしまい、結果として通信が遅くなることがあります。
- 射日光が当たる窓際
- テレビの裏や家具の隙間など風通しの悪い場所
- ホコリがたまりやすい棚の奥
こうした場所はできるだけ避け、風通しのよい場所に置くことがポイントです。
「うちはテレビの裏に置いていました…。熱がこもりやすい場所なのですね」
「そうなんです。ほんの少し前に出すだけでも変わりますよ。置き場所の見直しはすぐできる改善ポイントです」
「なるほど、今日からさっそくできそうですね」
関連記事
(掲載日:2025年12月18日)
文:ソフトバンクニュース編集部














