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球団施設の生ゴミが肥料になり、米となって選手の食卓へ。福岡ソフトバンクホークスが取り組む循環型リサイクル|SoftBank SDGs Actions #37

「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」といコンセプトを掲げ、SDGsの実現に向けて取り組んでいるソフトバンク。「SoftBank SDGs Actions」では、いま実際に行われている取り組みを、社員自らの言葉で紹介します。37回目は、球団施設から排出される生ゴミを液体肥料にリサイクルする活動を行っている福岡ソフトバンクホークス株式会社の取り組みです。

高橋 正範(たかはし・まさき)さん

お話を聞いた人

福岡ソフトバンクホークス株式会社 事業統括本部 野球事業推進本部 筑後事業推進部

高橋 正樹(たかはし・まさき)さん

福岡県大木町と連携して始まった資源循環の取り組み

プロ野球チームには、若手選手の育成拠点となるファーム施設があります。福岡ソフトバンクホークスは、福岡県筑後市の「HAWKSベースボールパーク筑後」がファーム施設の役割を担っており、メイン球場のタマホーム スタジアム筑後を中心に、室内練習場やサブグラウンド、選手が暮らす若鷹寮、トレーニング施設などがそろっています。メイン球場はみずほPayPayドームと同じ広さで、2軍公式戦も行われる本格的な環境です。

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

そのファーム施設で、私たちは発生する生ゴミを液体肥料にリサイクルし、その肥料で育てたお米を選手の食卓に戻す取り組みを進めています。きっかけは、二酸化炭素を出さない資源循環の仕組みづくりをみずほPayPayドームが先行して進めており、「タマホームスタジアム筑後でも同様の取り組みができないか」という話が上がったことでした。そこから筑後周辺で実施可能な場所を探し、隣町の大木町に処理施設があることが分かり、実現に向けて取り組みを開始しました。
鍵になったのが、大木町にある「くるるん」という循環施設です。家庭や飲食店から出る生ゴミを液体肥料に変換する取り組みを行っており、大量の生ゴミが出る球団施設と相性が良いと感じました。

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

もともと大木町には循環施設の活用を進めたいという考えがあり、球団側にも環境配慮を強化したいという課題があったことから、双方のニーズが一致し、2025年4月5日に「持続可能なまちづくりに係る協定」を締結しました。このようにして「ホークスの生ゴミをくるるんで肥料にし、その肥料で育ったお米が選手寮の食卓に並ぶ」という循環型の取り組みが本格的に動き出したんです。ファーム誘致の際には、筑後市だけでなく「筑後七国」と呼ばれる周辺自治体が協力してくださった経緯もあり、地域とともに未来につながる取り組みを形にしたいという思いが、このプロジェクトを後押ししています。

生ゴミが肥料になり、お米として戻るまでの循環の仕組み

では、循環の流れをもう少し具体的にお話しします。

①球場と寮から出る生ゴミを分けて集める

タマホームスタジアム筑後の売店や、選手が生活する若鷹寮では、日々多くの生ゴミが発生します。売店では調理の際に出る野菜くずや売れ残りが、寮では選手の食べ残しや調理時の残りかすが主なものです。

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行
往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

タマホームスタジアム筑後の寮/選手が食事する筑後寮

これまでは、こうした生ゴミをすべて一般ゴミとして処理していました。しかし現在は、球場と寮それぞれで生ゴミを分別し、ざるにあけて水分を切り、計量し、専用システムに記録したうえで、専用バケツへ移す工程が追加されています。工程は増えましたが、趣旨を丁寧に説明し、関係者の賛同を得ながら進めたことで、寮の調理スタッフ、売店の委託先、寮長、球団スタッフが日替わりで協力し、安定した運用を継続できています。

②「くるるん」で液体肥料に加工する

1週間ほど蓄積した生ゴミは業者が回収し、大木町にある循環センター「くるるん」へ運ばれます。ここで生ゴミは液体肥料へと生まれ変わります。
出来上がった液体肥料は大木町の農家に提供され、農薬や化学肥料の使用をできるだけ減らしながら、お米や菜種といった作物の栽培に利用されています。今回の取り組みでは、とくにお米が主な活用先となっています。

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行
往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

③田んぼや畑で活用

「くるるん」で作られた液体肥料は、大木町内の田んぼや畑で使用されます。肥料を使って育てられたお米や菜種は、秋の収穫期を迎えると農家によって収穫され、地域での農作物として出荷されます。

わかめ

④液肥で育ったお米が寮の食卓へ

液体肥料を使用して育てられたお米は、福岡県産の「元気つくし」という銘柄です。農薬や肥料を抑えた「環のめぐみ」は特別栽培米で、若鷹寮の選手たちの食卓に並びす。また、このお米は ふるさと納税の返礼品としてもお求めいただけます。大木町の循環型社会の取組を応援していただけると幸いです。

わかめ

「くるるん」の液体肥料で育てたお米(元気つくし)

この取り組みは始まったばかりですが、1 カ月あたり約 1.6トン、これまで一般ゴミとして廃棄されていた生ゴミが資源として循環しています。年間では約 20トンの削減が見込まれる規模です。

“廃棄ゼロの球団”を目指し、地域とともに取り組む

正直なところ、ここまで大きなプロジェクトになるとは思っていませんでした。しかし、ホークスがファームを筑後で運営してきたなかで、地域の皆さんからさまざまなご支援をいただいてきた歴史があり、その恩返しをしたいという気持ちがありました。さらに、ソフトバンクグループ企業として掲げる環境理念とも重なり、両立した形で何か実現できないかという思いから、今回のプロジェクトが動き出しました。

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

とはいえ実現は決して簡単ではありませんでした。ゴミ処理は法令上の規制が多くあるため、筑後市内で出たゴミを大木町へ持ち込むには複数の乗り越えるべき課題がありました。それでも「地域と一緒に循環の仕組みをつくりたい」という思いで協議を続ける中で、筑後市への粘り強い働きかけの結果、筑後市と大木町との三者協議を行い、協定を締結しました。大木町とホークスが力を合わせて壁を乗り越えられたことは、大きな経験になったと感じています。

そして、今後の展望としては、生ゴミだけにとどまらず資源として活用できる廃棄物の対象を広げ、球団全体の運営に資源循環の考え方を根付かせていきたいと考えています。大木町や筑後七国の皆さんと連携し、今回の取り組みを「野球チームが地域とともに築く循環モデル」として発信していくことで、 “廃棄ゼロの球団” に近づければと思っています。今回の取り組みが、その第一歩になればうれしいです。

 

ソフトバンクのサステナビリティ

サステナビリティ

今回紹介した内容は、「DXによる社会・産業の構築」に貢献することで、SDGsの目標「1、2、3、8、9、11、17」の達成と社会課題解決を目指す取り組みの一つです。

サステナビリティの取り組み

(掲載日:2025年12月16日)
文:ソフトバンクニュース編集部