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圧倒的な突破力の物語『志高く 孫正義正伝』。編集者が読み解く人生と仕事へのヒント

ビジネスパーソン必読の『志高く 孫正義正伝』。編集者が伝えたい読みどころと仕事へのヒント

1987年からソフトバンクグループ代表 孫正義の密着取材を続け、その軌跡をさまざまなエピソードを織り交ぜて丹念に記録し続けてきた井上篤夫氏の書籍『志高く 孫正義正伝 決定版』の文庫本が、2024年4月に発売されました。初版から20年が経ちますが、版を重ねるごとに新たなエピソードが加筆され、幅広い年齢層の読者の方々に読み継がれてきました。今回、この文庫本の出版に伴い、初めて『志高く』の編集担当となった実業之日本社の村嶋章紀さんに、文庫化への道のりや、本書の魅力、注目ポイントなどをお聞きしました。

『志高く 孫正義正伝』 井上篤夫 著

孫正義本人へのロングインタビューや、アーム買収やソフトバンク・ビジョンなど新たな情報を満載。少年時代に始まり、ソフトバンクの創業からAI革命、ソフトバンクグループの未来までを、孫が絶大なる信頼を寄せる作家・井上篤夫が、他の追随を許さない長期密着取材で鮮烈に描き出す。

村嶋 章紀(むらしま・あきのり)さん

実業之日本社 書籍出版部

村嶋 章紀(むらしま・あきのり)さん

大学在学中に講談社「フライデー」編集部、新潮社「週刊新潮」編集部で記者として活動を開始。雑誌社を経て、2022年、実業之日本社に書籍編集者として入社。

若い世代の興味を喚起。無理だと言われた前澤友作さんからの推薦文

2004年の『志高く 孫正義正伝』出版以降、3年ごとにアップデートを重ねてきていますね。村嶋さんが編集に携わるきっかけは何だったのでしょうか。

『志高く』の初版当時から、編集は実業之日本社 社長の岩野裕一が担当してきました。かねてより岩野には「もっと幅広く、特に若い世代の人に『志高く』を読んでもらいたい」という思いがあり、20代の私に編集のバトンが渡され、初版から20周年を記念して2024年4月に出版した『志高く 孫正義正伝 決定版』の文庫版に携わりました。『志高く』を出版していることで、いろいろな方面から孫代表に関係した企画の打診をされることがしばしばあり、そういった企画の検討や調整も含め、私が担当しています。

村嶋さんは編集を担当する前から、孫代表に関心を持っていたのでしょうか。

ここでは、孫代表を「孫さん」と呼ばせていただきます。10代後半の頃、孫さんのエピソードを知る機会があったことをきっかけにして、関心を持ち始めました。当時大学受験の浪人をしていた自分と、米国の大学に留学していた孫さんを重ね合わせて、同じような年齢の孫さんが猛烈に勉強していたことに奮起させられたり…。

大学生活を経て、『志高く』を度々読む機会がありました。例えば、「魚は釣るのではなく魚捕り。網で総捕り」、「生命に関わる大病を患って入院生活を余儀なくされていたときに3,000冊もの本を読む」、「数字は1兆単位で大きく捉える」「韓国の金大中大統領(当時)に『集中すべきはブロードバンド』と提言し、韓国をブロードバンド先進国に導く」など…。とにかく行動のスケールが異次元で大胆であることに、感銘を覚えました。

仕事として携わっている今と比べれば、当時はまだ、孫さんやソフトバンクのことにどっぷり漬かっている訳ではありませんでしたが、思い返すと、10代で関心を持ってからずっと、胸の内にある孫さんの言葉が、私の人生のいろいろな場面で登場して、仕事を進めていく上での行動につながっていますね。

実際に『志高く』の編集に携わることになって、何から着手しましたか。

まず、従来の『志高く』は、読者ターゲットを40〜50代中心にしていたため、今回はアプローチ方法自体から見直してみました。同世代の友人に聞いても、「孫さんのことは知っているけど、『志高く』は知らない」という反応なんです。本は大きくてページ数も多い…。外出先でちょっと時間のあるときに読もうとはなかなかならない。たとえ書店で見かけても若い人にスルーされてしまう…。

「どうすれば若い世代に手に取ってもらえるか」

必死で考えて思いついたのは、株式会社ZOZOTOWN 創業者で実業家の前澤友作さんに推薦文を書いてもらうこと。SNSのフォロワーも多く、若い世代に知名度が高い前澤さんのコメントが帯に載っていたら、きっと惹きつけられるのでは、という狙いです。

これまで前澤さんに関する本は出版されたことがなく、また、書籍への推薦文を書いていない方だったので、実は、ご本人へ依頼するのは無茶だという周囲の意見もありました。一方、本にとって一番重要な「帯」は、企業に置き換えるとCMなど広告と同じ役割です。だからこそ、孫さんの強い思い入れがあるこの本には、前澤さんしかいないと、周囲に言い切って前澤さんに交渉、と行動に移し、無事ご快諾をいただきました。

若い世代の興味を喚起。無理だと言われた前澤友作さんからの推薦文

他にも、せっかく文庫化して本のサイズを小さくするので、ページ数を減らして本を薄くして、もっと軽くしようと試みたのですが、いざ取り掛かってみると、どの部分も貴重なシーンばかりで、実際にカットしたのはわずか3ページ程度という結果に…。孫さんの歴史書とも言えますから、孫さんの表現はそのまま残し、他の部分を少し削除しました。

孫さんの困難な状況を打破する突破力に倣う

孫さんの困難な状況を打破する突破力に倣う

他には、『志高く』で描かれている孫代表のどのような点が、ご自身の編集の仕事に影響を与えていると思いますか。

孫さんは、到底不可能に見えることでも、絶対にやり遂げてみせるという意気込みを常に持ち続けていて、ずばぬけた行動力や人間的な魅力で突破してしまったり…。常に一番を狙うための圧倒的な突破力に、編集担当として特に大きく影響を受けていると感じます。

私が企画したのですが、孫さんとの縁が深い方々と井上篤夫さんとの対談記事が、現在、ダイヤモンド・オンラインに掲載されています。対談相手を検討していく中で、『志高く』の中でも紹介されているビル・ゲイツ氏に登場してほしいと強く願うようになりました。ただ、思いついたものの、周囲からは無謀だと言われながら、ビル&メリンダ・ゲイツ財団に問い合わせをし、皆さんのお力添えがあって、なんとか実現にこぎ着けました(対談は6月中旬頃掲載予定)。

どこかで無理なのではという思いが頭をよぎりながらも、何事も行動してみることから成功した一例ですが、この行動を起こしてみるというところは影響を受けたのかもしれません。

『志高く』以外にも担当されている本が多いと聞きます。他の本ではどのような企画がありますか。

他に担当している公安警察をテーマにした『諜・無法地帯 暗躍するスパイたち』では、著者である元公安警察官の勝丸円覚さんと『SPY&FAMILY』の作者である遠藤達哉さんが対談したら、フィクションとリアルのスパイつながりで面白そう… とむくむくと思いついてしまって…。こちらも対談企画を私が仕掛けて、コーディネートに成功しました。単に面白そうというだけでなく、勝丸さん、遠藤さんの双方の作品にベネフィットが生まれそうな要素を大切にしました。

村嶋さんが編集を担当する『自民党と派閥 政治の密室 増補最新版』(著:渡辺恒雄氏)、『諜・無法地帯 暗躍するスパイたち』(著者:勝丸円覚氏)

村嶋さんが編集を担当する『自民党と派閥 政治の密室 増補最新版』(著:渡辺恒雄氏)、『諜・無法地帯 暗躍するスパイたち』(著:勝丸円覚氏)

勝丸さんはYouTubeでいろんな情報発信をしています。動画を観たYouTuberが興味を持ってくれて、また対談の動画が増えるということもあります。書籍そのものを書店や新聞社、テレビ局に売り込むだけではなく、著者の勝丸さんをプロデュースするマネージャーのような役割で動いていますね。

オンラインでの書籍販売や電子書籍の普及など、書籍の販売を取り巻く環境が大きく変化してきましたね。今の時代の書籍販売マーケティングについてどう考えていますか。

「この本は売れる!」

書店にそう思ってもらうために私たち出版社ができることは何かを考えるのが大事ですね。書籍をこれまでの物流のラインに乗せれば売れる時代は終わっています。ECサイトで本を買ったり、電子書籍を読んだりすることが当たり前の時代に、例えば10年前の販売実績やマーケティングデータはアテにできません。書店の平積みにされる本は、ECサイトの売れ筋ランキングが大きく影響しています。

先ほどのダイヤモンド・オンラインの井上篤夫さんの対談企画もそうした視点から生まれました。オンラインで購入される本にはネットメディアの影響力が必須ということです。

村嶋さんと同じような若い世代に向け、『志高く』をこれから読む人へメッセージをお願いします。

孫さんに比べたら、仕事のスケールは小さいのですが、さまざまなシーンで『志高く』に登場するエピソードや言葉が参考になっています。

孫さんの困難な状況を打破する突破力に倣う

私が思う『志高く』は、一人の「天才」の物語ではなく、孫さんの「突破力」の物語です。困難な場面に遭遇したときには、強烈な熱意で立ち向かっていく孫さんの姿勢を思い浮かべて挑んでいます。

これから『志高く』を読む方は、圧倒的熱量を持って体当たりで物事に向き合っていく孫さんの姿勢に、「もしかすると自分も案外、孫さんのように突破できそう」という気持ちにきっとなるはずです。自分と重ね合わせながら読んでみることで、自分の動き方・働き方の参考になることが多いと思いますので、ぜひ一度読んでみてください。

(掲載日:2024年6月3日)
文:ソフトバンクニュース編集部

志高く 孫正義正伝 決定版

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