アリババ株式会社 代表取締役社長
香山 誠(こうやま まこと)
1999年に中国で設立されたアリババ・グループは、世界最大規模のBtoB(企業間取引)サイトである「阿里巴巴(アリババドットコム)」、アジア市場最大のBtoC/CtoC(消費者間取引)オークションサイトであるEC(電子商取引)サイト「淘宝網(タオバオ)」、電子マネーサービス「支付宝(アリペイ)」、ヤフー中国などを傘下に持ち、世界最大級のEC企業となりました。「アリババドットコム」の日本法人であるアリババ株式会社は、日本企業の中国向け輸出支援サービスサイトを開設し、中小企業を中心とした日本企業の海外進出をサポートしています。同社の取り組みや今後の可能性などについてご紹介します。
アリババグループが築いた10年間の資産を生かす
「アリババドットコム」の日本法人であるアリババ株式会社(以下、アリババ)は、日中間の商業取引における“架け橋”の役割を担っています。その事業内容は、大きく2つのフィールドに分けることができます。一つは中国製品を日本に売り込みたい中国企業向けに、もう一つは日本製品を中国で販売したい日本の中小企業向けに、それぞれインターネット上での取引ができる場を設け、支援することです。
まず、アリババのBtoBサイトである「アリババドットコム」に登録された中国のサプライヤー(売り手)企業に、日本におけるビジネス展開の機会を提供しています。「アリババジャパン」の中国の製造委託先を探すサイトには約5万社のサプライヤー企業が登録されており、過去にはサイトを通じて欧米に進出し、“世界の工場”となって成功した中国企業も数多く登録されています。
このサイトでは、日本進出に意欲のある中国のサプライヤー企業と、中国で委託製造を行いたいという希望を持つ日本のバイヤー(買い手)企業との出会いの場を提供することで、中国のサプライヤー資産を生かしています。
一方、日本の中小企業向けとしては、アリババ・グループが創業以来約10年間をかけて築いてきた中国のバイヤー資産を生かし、巨大な消費市場である中国で、日本製品を販売する機会を提供します。中国国内の企業で、海外のどこの国から製品を買いたいかという意向を分析したところ、“日本から買いたい”という意向が一番強いことが分かりました。「アリババドットコム」にはすでに1,500万社以上のバイヤー企業が存在しますから、そのバイヤー資産を日本の中小企業に活用していくというわけです。海外で売れる高品質な製品があるにも関わらず、手段がなく海外進出ができていない日本の中小企業に対して、中国に、そして世界に向けて日本製品を販売するサポートをします。
「2008年12月15日に日本のサプライヤー向けサイトをオープンし、2009年1月12日に日本企業の中国進出をサポートする『中国輸出支援サービス』サイトをオープンしました。事前に中国で日本製品輸入希望の募集を行ったところ、会員登録には3日間で約1万社の応募をいただいたため、登録を制限するほどの反響がありました。一般公開せずに、事前登録のみで募集を行ったにも関わらず、すでに数件の商談が成立しており、いいスタートを切れたと実感しています」(代表取締役社長 香山 誠)。
言葉や貿易実務の問題も解決
アリババ・グループのBtoBサイト「アリババドットコム」は、約9,000アイテム、約2,900万社の企業が集まる、中国国内トップのサイトです。
中国の企業は、インターネットを使って海外の顧客を獲得することに慣れていますが、日本の中小企業にとっては、従来の商習慣を変えることが難しく、海外に進出したいという意欲はあっても、なかなか一歩が踏み出せない実状があります。中でも大きな不安材料となっているのが、言葉や貿易実務の壁です。
そこでアリババでは、中国語と日本語との大規模な翻訳辞書を自社で開発し、サイトに自動変換機能を搭載することで、「言葉の壁」の不安を取り除きました。また「貿易実務の壁」を取り払うため、代金回収と通関手続き、商品配送サービスを手厚くサポートしています。さらに成功事例をサイトに掲載するなど、日本の中小企業の不安を取り除くことに注力しています。
「中国のインターネット人口は3億人とも言われ、携帯電話の販売台数は6億台超、新車販売台数は約940万台と、沿岸部を中心に消費は非常に好調です。高額、高級ブランド品もよく売れています。欧米の高級ブランド直営店は、日本への出店をあきらめ、中国をターゲットにするなど、すでにいろいろな実績が中国市場の可能性を証明していると思います」(同)。
今や中国は“世界の工場”としてだけでなく“世界有数の消費市場”としても飛躍的に存在感が高まっており、日本の対中輸出額は過去10年間で6倍に増加。中国は今や米国を抜いて、日本最大の貿易相手国に成長しています。
世界的な金融危機も追い風に
2008年10月から12月にかけて、世界的な金融危機にも関わらず、アリババ・グループは逆にこれを利用して成長しています。この期間に英語版国際サイトの登録者は、150万人増えました。さらに「アリババドットコム」を使っているサプライヤー企業の倒産率が、登録していない企業に比べて5〜10分の1*というデータも出ています。この未曾有の金融危機がアリババには追い風となっています。
「日本の中小企業も今こそチャンスです。内需が厳しいこの時期に、外需に活路を見出すべきです。日本から見た輸出国として、中国はNo.1。中国からみた輸入国としても日本はNo.1です。
日中間の貿易額は現在30兆円規模と言われていますが、過去数年の10%を超える日中貿易成長率を少なめに見ても、今後5年間で45〜50兆円に増えていくと予想されます。これまで中国に製品を売ることができなかった日本の中小企業や小規模事業主の製品を紹介することで、全体の5%、2兆円を超える流通総額を、5年以内にアリババ・グループが創出することが目標です」(同)。
大きな可能性を秘めた今後のアリババ株式会社に、どうぞご期待ください。
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アリババ・グループ調べ
(掲載日:2009年2月16日)