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大規模災害時のネットワーク早期復旧を。通信事業者間の協力体制強化を発表

災害時通信事業者間連携説明会

2024年12月18日、NTTグループ(日本電信電話株式会社、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社、株式会社NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ株式会社)、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、楽天モバイル株式会社が共同で記者説明会を開催しました。2024年1月に発生した能登半島地震から間もなく1年を迎えることを受け、各通信事業者が取り組んできた復旧対策や、災害時のネットワーク早期復旧に向けた事業者間の新たな協力体制強化の取り組みについて説明しました。

登壇者
      • 日本電信電話株式会社 技術企画部門 災害対策室 室長 森田公剛
      • KDDI株式会社 コア技術統括本部 エンジニアリング推進本部 エンジニアリング企画部 部長 小坂啓輔
      • ソフトバンク株式会社 ネットワーク運用本部 運用企画統括部 災害対策室 室長 杉本篤史
      • 楽天モバイル株式会社 BCP管理本部 本部長 磯邉直志

能登半島地震の発災から1年を振り返って

2024年1月1日、石川県能登地方で発生した最大震度7(M7.6)の能登半島地震は、多くの建物の倒壊や津波による家屋流失など、地域に甚大な被害をもたらし、通信事業者各社の設備も大きな被害を受けました。ネットワークの早急な復旧には、通信事業者各社の工夫だけでなく、船や給油所などの設備を共同で利用し連携する場面があったといいます。代表して日本電信電話株式会社(以下「NTT」)の森田氏が、この1年の復旧活動を振り返りました。

災害時通信事業者間連携説明会

携帯電話や固定通信のネットワークは、地震による土砂崩れや電柱・道路の倒壊、津波などの被害によって通信サービスが中断。早期に復旧させるために、伝送ルートの新たな構築や、衛星通信やドローン基地局、船上基地局の活用など、各社がさまざまな工夫を行いました。

携帯基地局被災

固定電話被災

また、道路が至る所で寸断したため、交通渋滞が発生して復旧活動地域までの移動時間が長時間化。実際に現地で作業できるのは数時間程度と、非常に作業効率が悪かったため、被災地の深部に、寝泊まりできる前線基地を設置したほか、仮設の給油所を設置して通信事業者間で給油を連携する取り組みも行われました。

仮設の給油所

道路の復旧までに長期間を要する立ち入り困難地域へは、海底ケーブル敷設船を活用し、船上で基地局を運用して陸上側に電波を照射し、モバイルネットワークを早期復旧する取り組みが通信事業者共同で行われたと紹介しました。

海底ケーブル敷設船

通信事業者のアセットの共同利用など、新たな協力体制を構築

続いて、大規模災害発生時におけるネットワークのさらなる早期復旧を目的とした、通信事業者間の新たな協力体制について説明が行われました。 登壇した4社を含む通信事業者8社が、能登半島地震で得た経験を生かし、各社のアセットの共同利用、船舶の活用、モバイルと固定の連携強化を行うというもので、2024年12月1日から共同で運用を開始しています。
※日本電信電話株式会社、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社、株式会社NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ株式会社、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、楽天モバイル株式会社

通信事業者間の協力体制を強化~各社のアセットの共同利用や船上基地局を活用~(2024年12月18日 ソフトバンク株式会社)

通信事業者間の協力体制を強化

NTTの森田氏は「各社が持つそれぞれの強み、いろいろな知恵と工夫を凝らして災害復旧してきた内容やアセットを、自社に限るのではなく、通信事業者全体が一つの企業のように取り組もうということで今回の協定につながった」とコメント。

「大規模災害発生時の各社のアセットの共同利用」「NTTグループおよびKDDIが保有する船舶の活用」「モバイル通信事業者と固定事業者の連携強化」の3分野における具体的な協力体制が説明されました。

① 大規模災害発生時の各社のアセットの共同利用

大規模災害の発生時に、各社が保有するアセット(事業所、宿泊場所、資材置き場、給油拠点など)を共同で利用することで、被災地のネットワークの復旧活動を相互に支援し、早期復旧を目指す。

各社のアセットの共同利用

② NTTグループおよびKDDIが保有する船舶の活用

NTTグループおよびKDDIが保有するケーブル敷設船を活用し、通信設備や被災地への災害物資(可搬型基地局、発電機、燃料、携帯電話、水、食料など)の搬送や船上基地局の展開を実施する枠組みに、ソフトバンクと楽天モバイルが参画。これにより、NTTグループとKDDIが保有する船舶に、ソフトバンクと楽天モバイルの船上基地局の設置が可能になり、海側からエリア復旧が可能な沿岸地域に対して携帯電話サービスを提供することで、被災地におけるモバイルネットワークの早期復旧に寄与する。

船舶の活用

③ モバイル通信事業者と固定事業者の連携強化

モバイル通信事業者と固定通信事業者が連携を強化し、被害状況の把握やネットワークの復旧に必要な設備情報などの共有を通じ、自治体や病院などの重要拠点をカバーするネットワークの障害の原因となる固定通信網の支障箇所を特定するなど、復旧作業における優先順位を明確化する。特に携帯電話基地局向けの回線の復旧を迅速化することで、被災地のモバイルネットワークを、これまで以上に早期に復旧できるよう取り組む。

モバイル通信事業者と固定事業者の連携

各社は今回構築された協力体制に基づき、給油拠点や船舶の共同利用訓練を実施するなど、さらなる事業者連携を推進していく予定です。

事業者連携を推進

会社は違えどネットワークの早期復旧への思いは同じ

能登半島地震の経験を踏まえ、各社が実施してきたさまざまな災害復旧の取り組みや今後の予定などが紹介され、ソフトバンクの杉本は、防災力の強化や作業員の技術力の向上に向けた取り組みについて説明しました。

ソフトバンクは、社員と協力会社による「有線給電ドローン無線中継システム」の飛行や仮設給油所の設置、可搬型発電機の始動などのさまざまな訓練を実施し、防災力の強化と作業員の技術力の向上に努めてきたと紹介。また、停電の長期化対策として、従来の発電機よりも稼働時間が約6倍運用できるインテリジェントタンクや従来の約12倍の稼働時間となるLPガスのハイブリッド発電機を増強するほか、既存の293台の可搬型衛星アンテナに加えて、Starlinkを約500台増強する方針を示しました。避難所向けには、Starlinkと小型無線機を組み合わせたシステムを新たに開発し、全国の拠点に配備したと説明しました。

ソフトバンク対策

質疑応答で記者から「各社のアセットには差があり、調整が難しくなることはないのか」という質問が寄せられました。これに対し、森田氏は「被災地には通信ができなくて不安に思っている方が大勢いる。その不安をいかに早く取り除き日常の生活に近づけられるか、その思いだけでやっている。その思いは各社で全く同じだったので、今回の協定に至っている」と経緯を説明しました。さらに「各社が持っているアセットを包み隠さず出し合って『そんなのもあるんだね、うちもこんなのがもっと出せるよ』といった非常にいい取り組みにつながっている」と語ると、登壇者たちもその発言にうなずいていました。

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(掲載日:2024年12月19日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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