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行きは弁当、帰りはワカメ。17km離れた場所にドローンで商品を届ける往復型配送モデルを島根県松江市と実証

暮らしを支える新たな物流手段。島根県松江市でソフトバンクが実施した17kmのドローン共同配送実証

2025年11月13日、島根県松江市でドローンを活用した物流実証実験が行われました。少子高齢化や人口減少が進む中で物流の担い手不足や非採算エリアの拡大といった課題を背景に、往路でお弁当を配送し、復路ではスーパーへの仕入れ商品のわかめを運ぶ往復型の共同配送モデルを検証。担当者に話を聞きました。

松江市とソフトバンクが連携して進める新たな配送モデル

人口減少と高齢化が進む島根県松江市では、買い物や食料品の宅配を担う人手不足が課題となっています。特に中山間地域では坂道や細い生活道路が多く、配達に時間とコストがかかるうえ、配達員の高齢化が進行しており、「お弁当を届けるだけでも半日かかる」「往路は荷があり収入になるが、復路は空荷で収入が出ない」など、物流効率と採算の両立が難しい現実があります。
このような地域課題を解決するために、2024年10月、ソフトバンクは松江市と事業連携協定を締結し、ドローンを活用した新しい物流モデルの実証実験を行い、地域の発展と利便性向上を目的にドローンのユースケース創出を進めています。

今回の実証はその第一歩となる取り組みで、お弁当の製造工場から個人宅への配送を車両とドローンを組み合わせて行い、復路ではスーパーへの仕入れ商品を運ぶという、往復型の共同配送モデルを検証しました。
実証には、在宅高齢者向けのお弁当を製造・配達するモルツウェル株式会社やスーパーマーケットを運営する株式会社みしまや、地方創生に取り組まれている株式会社アップデートなど地元企業が参加。本庄町からマリンパーク多古鼻までの約17kmをドローンが飛行し、配送の効率性と実用性を確認しました。

松江市とソフトバンクが連携して進める新たな配送モデル

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

実証は、松江市本庄町の河川敷からスタートしました。はじめに、モルツウェルから届いたお弁当がパイロットチームに手渡され、専用コンテナに慎重に積み込まれました。コンテナはドローンの機体下部に固定され、輸送の準備が整います。

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

使用した機体は双葉電子工業製の物流用ドローン「FMC-01DASB」で、LTE通信を用いたレベル3.5の自律飛行によって、約10kgの荷物を安定して運搬することができます。

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行
往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

ドローンは本庄町を離陸した後、沿岸部のマリンパーク多古鼻まで約17kmを飛行しました。目的地では、スタッフが着陸地点で待機し、コンテナを受け取りました。取り外されたお弁当は、その後、モルツウェルのごようきき三河屋サービスのスタッフによって無事に個人宅へ届けられました。

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行
往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

続いて復路では、地元漁師が水揚げした乾燥わかめの仕入れ品を積み込み、ドローンが同じルートを戻り、最後はモルツウェルの車両による共同配送でスーパーへ輸送しました。店頭には、運んだ商品が無事に陳列され、往復配送モデルの有効性が確認されました。

わかめ

最後に今回の実証について、担当者のソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット統括 次世代社会インフラ推進室 推進部 UAV技術戦略課の天野悠平に、当日の様子や今後の展望を聞きました。

天野 悠平(あまの・ゆうへい)

ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット統括 次世代社会インフラ推進室 推進部 UAV技術戦略課

天野 悠平(あまの・ゆうへい)

実際に現場でドローンが飛んだとき、どのような手応えがありましたか。

手応えと言うよりも、約40kmを往復し、安全に飛行を完了させることへの緊張感がありました。すべての飛行が完了した際には、これまで準備してきたことが形になった達成感があり、やっとここからドローンの社会実装に向けた取り組みのスタート地点に立てたという気持ちになりました。

現場で印象に残った出来事や声などがあれば教えてください。

お弁当の配送を手掛けているモルツウェルさまやスーパーに仕入れする海産物直売所の永幸丸(おすそわけ)さまから、ドローンのパイロットにお弁当や仕入れ品のわかめが受け渡されたとき、新しい取り組みのバトンがつながっているような光景に見え、とても感動しました。また、地元の方が様子を見に来られていたり、メディアの方の注目度もかなりあったため、1回きりではなくしっかり継続した取り組みにしていかなければならないという使命感がありました。

往路でお弁当を届けて復路でわかめをスーパーへ届けた約17kmの自律飛行

今後、この取り組みをどのように広げていきたいと考えていますか。

現在、国の補助金の採択を受けながら、松江市さまや物流会社さま、荷主さまを巻き込んだ「松江市モーダルシフト協議会」を設立し、松江市内の物流における最適化を目指して議論を進めています。協議会の中で、どこに課題があり、どんな方法でどれだけの荷物を誰が運ぶのが最も良いのかを分析し、ドローン配送も含めた新しい配送モデルの構築を目指しています。この取り組みを広げ、しっかりと社会実装を進めていきたいと思います。

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(掲載日:2025年12月12日)
文:ソフトバンクニュース編集部