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「名もなき家事」の負担を減らす。“考える・覚えておく” をスマホに任せる家事管理術

「名もなき家事」の負担を減らす。“考える・覚えておく” をスマホに任せる家事管理術

一人暮らしや共働き世帯が増えている現代社会。働きながら家事をこなすことは、もはや当たり前になりつつあります。忙しい日々の中で、どうしたら家事をもっと楽に、効率よくできるのでしょうか? 今回は私たちの暮らしに欠かせないスマホを活用して、手軽に家事タスクを管理する方法を、日本で唯一の「家事シェア研究家」の三木智有さんに教えてもらいました。

三木智有(みき・ともあり)さん

NPO法人tadaima!代表

三木智有(みき・ともあり)さん

家事シェア研究家。内閣府「男性の暮らし方・意識の変革に関する専門調査会」委員(2016年)。「10年後、20年後も “ただいま!” って帰りたくなる家庭にしよう!」をスローガンに、家族の家事シェアを当たり前にする活動を行う。著書に『家族全員自分で動く チーム家事』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

暮らしは便利になったのに、家事は減らない? 現代人を悩ませる「家事時間のパラドックス」

メディアや全国各地の講演で、家事・育児に関する情報やノウハウを発信している三木さん。多くの人が抱えている家事の悩みやその背景、そして効率化のポイントを聞きました。

三木さんが家事を “シェア” する点に重きをおいて発信されている背景はなんでしょうか?

元々はインテリアコーディネーターの仕事をしており、住まいについての提案をしている中で、家なのに居心地の悪さを感じている男性が多いことに気付きました。そこでご家族がいる100人の男女にヒアリングを実施した結果、感じたのが “一緒に暮らす人同士がお互い家事に責任を持ち、共有すること” の重要性。家族の一員なのに家の中のことを何もやらなければ、だんだん居場所がなくなってしまうのは当然ですよね。男性の家庭への関わり方はとても大事なポイントなんです。

男女共に社会で活躍することが当たり前の時代になっても、男性が主体的に家事をこなし、家庭がうまく機能しているケースはまだまだ多いとは言えません。僕自身も独身のころは家事についてあまり深く考えていなかったのですが、今は家のすべての家事に関わっています。そうした中で新たな気付きがたくさんあり、「性別に関係なく、家事や育児をもっと家族や社会でシェアできるように」という思いから、2011年から現在の仕事をするようになりました。

家族やパートナーと住む人も、一人暮らしの人も、家事は避けられないもの。居心地のいい家をつくるための家事との向き合い方を伝えられたらと思っています。

働きながら家事をこなすことが当たり前になってきた今、三木さんの元にも、「家事を効率化したい」という相談はよく寄せられていますか?

悩みというよりは、もはや効率化が前提になっている印象です。やっぱり、みんな時間がなくて忙しいんですね。よく「家事は隙間時間に済ませよう」なんて言葉を聞きますが、共働きの家庭では隙間時間すらないのが現状だと思います。

食洗機や乾燥機付き洗濯機、お掃除ロボットなど家電の進化で、家事効率は上がっているはずなのに…。それでも「時間が足りない」と感じるのはなぜでしょう?

工業化が進んだ1970年代以降、家電を導入しても家事に費やす時間が減らないことについて、国内外でさまざまな研究がされていて、そうした現象を「家事時間のパラドックス」というそうです。例えば、洗濯機が登場したことにより人々の “清潔” に対する水準が上がり、洗濯する頻度や量が爆発的に増えたのだとか。技術が発達したことによって、家事に求められる水準が上がり、むしろ負担が増えてしまっているのです。

便利になった分、スピードやクオリティが求められてしまう… 仕事と同じですね。

だから僕は家事についてアドバイスするとき、「やめ家事」を提案するんです。「やめ家事」とは、やめても構わない家事のこと。例えば、取り込んだ洗濯物を畳まずにハンガーのままつるす収納にする、洗った食器を棚にしまわずに水切りかごから直接取る、とか。人によっては受け入れづらいものもあるかもしれませんが、ストレスになるくらいならやらないほうがいいと思います。

暮らしは便利になったのに、家事は減らない? 現代人を悩ませる「家事時間のパラドックス」

家事の面倒な “考える” を削る。家事を効率化するために大切なこと

家電をはじめ、テクノロジーの進展が家事の水準を上げてしまったという側面がある一方、上手に活用すれば、家事効率を上げることもできると思います。そのためのポイントはありますか?

ポイントは、“考える部分をいかに削ることができるか”。その上で必要なのは、自分が「何をしんどいと思っているのか」を知ることです。僕の例でいうと、毎日夕飯を作るのが僕の担当なのですが、メニューを考える工程が一番しんどいんですね。そこでAIがメニューを考えてくれるスマホアプリを使い始めました。使いたい食材を入力して、「高タンパク」や「低カロリー」などの条件を入れると、最適なレシピを提案してくれるんです。必要な材料のリストも提示してくれるので、それを見ながら買い物をしたり、妻にLINEでシェアして買ってきてもらったりしています。“考える” という作業から解放され、僕にとってかなりありがたいツールです。

家事の面倒な “考える” を削る。家事を効率化するために大切なこと

スマホは人間の代わりに家事をやってくれるわけではありませんが、面倒な “考える” 、“覚えておく” 部分をお任せできるんですね。

そうですね。家事にはいわゆる “名もなき家事” がたくさんあります。トイレットペーパーを交換する、麦茶を補充する、排水口の髪の毛を捨てる… などなど。「今、自分がしなくても」と思うようなことが多いので忘れがちですが、そこで有効なのがスマホの機能やアプリです。

特に、自分が苦手なタスクはどんどんスマホに考えてもらいたいですね。

中には全てのタスクを効率化したい方もいると思いますが、人によっては “手を掛けたい家事” もあると思います。例えば料理が好きな人だったら、他の家事を効率化することで、手間を掛けた料理を楽しむ時間ができる。効率化によって “生活の一部がなくなる” のではなく、むしろ “生活が豊かになる” と思っています。

僕は、スマホアプリを「一度使ってみるといいですよ」とお伝えしています。新しいアプリを入れたり、使ったりするのは面倒だし、抵抗感がある人もいるかもしれませんが、その壁を乗り越えて使ってみたら「こんなにラクになった」となるケースは多いです。もし一度試して合わなかったら、やめればいいんです。トライアンドエラーを繰り返して、しっくりくるやり方を見つけられると「なんでこんな簡単なことをやらなかったんだろう」と感じるはずです。

普段使っているアプリから家事分担アプリまで。スマホを活用して家事をラクにする方法

普段使っているアプリから家事分担アプリまで。スマホを活用して家事をラクにする方法

スマホを活用した家事の効率化について、具体的な方法やアイデアを三木さんに教えていただきました。基本的には、すでに日常で使っている機能やアプリの活用がおススメだそうです。

三木さん

「家事は終わりがなく毎日あるもの。あまり見る習慣がなければ続きません。ただし、新しいものを取り入れてモチベーションを上げる人もいると思います。そういう方はいくつか試してみて取り入れるのもいいですね」

スマホのデフォルト機能を活用した家事管理術

スマホのデフォルト機能として入っているメモアプリが役立ちます。メモしたことをそのままカレンダーに表示させたり、リマインダー設定したりできますし、チェックリストの作成機能もあるため、タスク管理にも使えます。家族への共有も簡単で、共同編集機能があるのもうれしいポイントです。

また、買い物リストとして優秀なのが、リマインダーアプリ。これは iPhone に限りますが、iOS 17 以降、「買い物リスト」機能が加わりました。新規リストを作成する際、リストタイプを「買い物リスト」にすると、さまざまな種類の品物が「家庭用品」「野菜・果物」など、自動で分類されるのです。こちらも家族への共有・共同作業ができますし、ロック画面やホーム画面にウィジェットとして置いておくことで、いつでもチェックできます。

スマホのデフォルト機能を活用した家事管理術

日常生活で使っているスマホアプリを活用した家事管理術

Google カレンダー

家事タスクの管理に使えるのが、Google カレンダーです。例えば、スケジュールを立てるとき、仕事やプライベートの用事だけではなく、家事の時間も入力します。毎日同じ時間に「夕飯の支度」という予定を入れたり、決まった曜日に「掃除する」と予定を入れることで他の予定をブロックできるので、家事をする時間が取れないといったことがなくなります。

「時間があるときにやろう」と頭の中にタスクがある状態だと、モヤモヤしてしまうので、それを Google カレンダーに書き出すイメージです。もし予定通り実行できなくても、そのまま次の日など、空いているところにズラせばいいだけなので、あまり気負う必要もありません。Google には「ファミリー グループ」という最大6名まで各種サービスを共有できる機能があるので「ファミリー カレンダー」を作って、家族に共有するのもおススメです。

NotionやTrelloなどのタスク管理アプリを仕事で使っている方なら、それを家事のタスク管理に活用するのもいいでしょう。

Google カレンダー

LINE

家族との連絡手段としてはもちろん、リマインダー機能のあるbotアカウントが便利です。botアカウントを友だち追加して、トークルームで予定を話しかけると、指定したタイミングでリマインドしてくれます。特筆すべきは、グループラインでも使うことができる点。家族のLINEグループに入れておくと、メンバー全員にリマインドが可能です。「明日トイレットペーパーを買う」「毎週水曜日は資源ゴミの日」「2月20日 クリーニング返却日」など、自分だけでは忘れそうなタスクも家族みんなで共有できます。

LINE

ビジネスチャット

SlackやChatworkなどのビジネスチャットを家庭で使う選択肢も。「七五三」や「運動会」など、イベントやテーマ別にチャンネルを作ると便利です。

家事分担アプリを活用した家事管理術

最近は、家事分担のためのアプリをいくつも見かけるようになりました。アプリごとに特色がありますが、主に次のような機能があります。

  • タスク管理機能やタスクを共有できる機能
  • 分担状況を可視化できる機能
  • リマインダー機能
  • カレンダー機能
  • トーク機能

三木さん

「家事分担アプリは、“名もなき家事” を可視化し、家族間で共有するのに便利です。また、トーク機能として、家事分担に必要な話題を表示してくれるアプリも。普段は話しづらいテーマを話すきっかけになりますし、そうした機能は専門アプリならではですね」

まだ聞きなじみのない家事分担アプリを取り入れる際に、知っておきたいメリット・デメリットは何でしょうか?

メリット

普段は味気ない家事が、アプリを使うことで少し楽しくなります。デザイン性に優れたものも多く、新しいツールを使い始めることによる、モチベーションアップも期待できます。中には、家事をこなすと達成ポイントが付くアプリも。

デメリット

習慣化しづらいこと。わざわざアプリを開くことが面倒くさかったり、家族間だと新しいアプリを入れることに抵抗がある方もいたりするかもしれません。また、無料のアプリだと頻繁に広告が出ることも。

スマホ以外にも。 スマート家電やスマートスピーカーで家事をラクに

今はスマホ以外にも、家事を効率化してくれるデジタルツールがたくさんあります。スマホと機能連携ができる「スマート家電」はもちろん、スマートスピーカーも便利です。家族の間で「水を買っておかなきゃね」という話が出たとき、そのままスマートスピーカーに話しかけ、家族カードを登録済みのECサイトで即購入… なんて使い方も!

家事アプリの選び方は? 押さえておきたいポイント

家事アプリの選び方は? 押さえておきたいポイント

さまざまなスマホ活用術があるのが分かったところで、実際どのアプリや機能を選べばいいのでしょうか? 家族構成別に、取り入れ方のポイントを教えてもらいました。

家族構成別のおススメ機能

一人暮らし(単独世帯)

普段仕事で使っているタスク管理アプリがおススメ。また、一人暮らしなら誰かの好みに合わせる必要もないので、ChatGPTなどを使い、AIに1週間分の夕飯のメニューを考えてもらうといったこともためらいなくできます。

共働き世帯

同棲や結婚をしたばかりなら、なるべく早いうちに家事の分担について話し合っておいたほうがいいので、話し合いを促進するトーク機能がついているアプリがおススメです。家庭が “運用ベース” に入ってきたら、よりシンプルなタスク管理アプリに移行する… など、使い分けをしてもいいでしょう。

子どものいる世帯

メールアドレスを持っていなくてもアカウントを作成できるアプリなら、お子さんと一緒に家事シェアができます。ゲーム性やポイント制度があるものを選べば、お子さんも楽しみながら家事に取り組んでくれますよ。

スマホ機能やアプリを活用することで、家事の面倒な “考える”、“覚えておく” が省略でき、毎日の生活がラクになります。家事をサポートしてくれる心強い味方として、今回紹介したスマホ活用術をぜひ試してみてください!

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(掲載日:2024年12月6日)
写真:山野一真
文:吉玉サキ
編集:エクスライト