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物語の透明感、言葉にできない想いを、どう映すか。映画『ストロベリームーン』酒井麻衣監督×原作者・芥川なお氏対談

小説『ストロベリームーン』実写映画化。原作者・芥川なお氏と酒井監督が語る創作の裏側

ソフトバンクが映画の製作委員会に参加している、10月17日公開の映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』。SNSで「令和イチ “泣ける”」と話題になった芥川なお氏の純愛小説「ストロベリームーン」を原作として、ヒューマンドラマのレジェンド脚本家・岡田惠和氏と新進気鋭の若手実力派監督・酒井麻衣氏の手によって実写映画化された作品です。
原作者の芥川なおさんと酒井監督のお二人に、映画に込めた思いなどについて語っていただきました。

純粋な気持ちをそのまま書いた物語。どこまでその透明感を映像にできるかがいちばんの挑戦

純粋な気持ちをそのまま書いた物語。どこまでその透明感を映像にできるかがいちばんの挑戦でした

映画の魅力や原作との向き合い方、そして制作の舞台裏について、お二人に対談していただきました。

芥川 なお(あくたがわ・なお)さん

作家

芥川 なお(あくたがわ・なお)さん

大分県中津市出身。「ストロベリームーン」がデビュー作。芥川の姓は本名。

酒井 麻衣(さかい・まい)さん

監督

酒井 麻衣(さかい・まい)さん

2017年『はらはらなのか。』で商業映画デビュー。「映像作家100人2020」に選出される。
近年の主な作品に劇場版『美しい彼〜eternal〜』(23)、映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』(23)、『恋を知らない僕たちは』(24)、『チャチャ』(24)やドラマ『美しい彼』(21,22/CX)、『明日、私は誰かのカノジョ』(24/MBS・TBS)などがあるほか、岡田惠和脚本のドラマ「小さい頃は、神様がいて」(フジテレビ系)が毎週木曜10時に放送中。また、なにわ男子「初心LOVE(うぶらぶ)」、優里「レオ」、Nissy「I Need You」などのMVを監督する。

まず、芥川さんに伺います。小説『ストロベリームーン』を書こうと思ったきっかけを教えてください。

芥川さん

テレビのニュースで「ストロベリームーン」を取り上げていて、その中で紹介されていた “好きな人と一緒に見ると幸せになれる” という逸話が、すごくかわいいなと思ったんです。ピンクの月っていうのもかわいいし。そのすてきだなって思った気持ちを、自分の中にある純粋なものだけを紡いで物語にしたいなと思って、初めて恋愛小説にチャレンジしました。

映画化のお話が来たときは、どんなお気持ちでしたか?

芥川さん

率直にうれしかったですね。小説って、“読もう” と思って読んでもらう能動的なものだと思うんですけど、映像や音って読書に比べればスッとイメージが共通認識で入りやすいものなのではないかと思っています。映画になったら、もっといろいろな人に伝わるんじゃないかなって。この物語が広がっていけばいいなというのがあって、もちろん小説も読んでいただきたいんですけど、映像として広がっていくことで、また新しい形で伝わるんじゃないかと感じています。

酒井監督はこれまで数々のすてきな青春映画を手がけてこられましたが、この作品をやろうと思ったのはなぜですか?

酒井監督

とても熱意を持ったプロデューサーさんから、純粋な愛と生きた証のような物語があると紹介されまして。実際に小説を読んでみたら、もう1日ですぐバーッと、一気にのめり込んでしまったんです。昔から自分が感じてきた “温かい気持ち” とか、純粋なものを見ると自然と笑顔になってしまう感情みたいなものがギュッと詰まっていて。これを映像化するのは簡単じゃない気もしたんですけど、お話いただけたならぜひ挑戦したい、という気持ちになりました。このみずみずしく透きとおっている物語を、どこまでそのままの透明感で映像にできるか、それが今回のいちばんの挑戦でした。

純粋な気持ちをそのまま書いた物語。どこまでその透明感を映像にできるかがいちばんの挑戦でした

脚本はヒューマンドラマのレジェンド・岡田惠和さんが担当されていますね。

芥川さん

プロデューサーさんや岡田先生から「原作の大切な部分を反映しながらも、ストーリーを2時間に収めるために変わる部分があります」と事前にお聞きしておりましたが、私はそれに対して「承知しました」と二つ返事でした。中身が多少変わっても、物語の根底が同じなら問題ないと思っていたので、基本的には信じてお任せする道を選んだのです。
それと、映像化が酒井監督に決まったと聞いたときは、とても安心と安堵に包まれました。光や花びら、水の透明感をすごく美しく表現される方なので、「これは絶対にすてきな作品になる」と確信した通りの最高の出来に仕上がっています。感謝しかありません。

酒井監督

芥川先生に初めてお会いしたのは撮影現場だったんですけど、それまでもプロデューサーを通じて「お任せします」とか「酒井監督のその視点は面白いと思います」と、その “信頼してお任せくださる感じ” がうれしくて、芥川先生の気持ちに応えたいという思いがより強くなりました。原作から受け取った大切な思いをどう映像にするかを常に考えて、「決めつけない」ことを意識して、現場で生まれた感情を素直に映すようにしました。それが萌ちゃんに誠実であると思ったんです。

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想像していた萌ちゃんや日向くんがモニターの中にいた。原作と映画がつながった瞬間

お二人にとって萌ちゃんはどのような存在ですか?

酒井監督

當真あみさん(桜井萌役)の存在がとても大きかったです。當真さんの持つはかなさの中の強さや生きる強い光が、小説の萌ちゃんと共鳴し合って、見ているだけで不思議と温かい涙が出るような存在でした。

芥川さん

本当にそう思います。萌ちゃんって天真爛漫なんですけど、ちゃんと芯がある子なんです。映画化が決まったときに、プロデューサーさんから「萌ちゃんは誰をイメージしていますか?」と聞かれて、真っ先に浮かんだのが當真さんでした。強さとはかなさ、その両方を持っている方じゃないと難しいと思っていたので。現場でモニターを見たときに、「あ、私の想像していた萌ちゃんや日向くんがそこにいる」って本当に感動して、涙が出そうになりました。

想像していた萌ちゃんや日向くんがモニターの中にいました

酒井監督

あのときの先生の表情、すごく印象的でした。初めて現場でお会いした日に、モニターを一緒に見ながら「萌ちゃんがいました」っておっしゃってくださって。その瞬間、原作と映画がちゃんと一つにつながったんだと思いました。

キャスティングが決まったとき、どう感じましたか?

芥川さん

もう本当にイメージ通りでしたね。當真さんをはじめ、日向くん役の齋藤潤さんも麗ちゃん役の池端杏慈さんも、大人になった彼らを演じていただいた杉野遥亮さんや中条あやみさんもキャストの皆さんがそれぞれのキャラクターにぴったりで。演技ももちろんですが、酒井監督の演出がそれぞれの人物の心の動きをすごく丁寧に引き出していて。それぞれの人物がちゃんと “生きている” 感じがしました。

酒井監督

芥川先生から受け取ったこの大切な物語、思いをどう映像にするかをずっと考えていました。脚本を読めば読むほど、ロケ地に行ったり、衣装を着た俳優さんを見たりするたびに、じんわり感情が湧いてくるんです。だからこそ「このシーンはこういう感情だからこうだ」と決め切らず、俳優さんが持っている “優しさ” や “思いやり”、起こったこと、感じたことを素直に受け止めて、その “にじみ” をそのまま映したいと思っていました。人の優しさや思いやり、感情って言葉にしなくても目やしぐさに出るので、そこを逃さないようにしました。

原作者も120%満足の作品。小説と映画を見比べながら心に残る “余韻” を楽しんでほしい

芥川さん

あの、勝手に… なんですけど、私、監督と感性が似てるところがあるのかな、と思っています(笑)
今回、基本的にお任せするとは言ったんですけど、2つだけ要望を出させていただいたんです。1つは、向日葵の花言葉『変わらぬ想い』を入れてくださいということ。もう1つはキスシーンの位置です。あと、お気に入りのシーンなんですが、「好き」と「月」をかけたのって、監督がお考えになったんですよね?

酒井監督

はい。夏目漱石が “I love you” を「月が綺麗ですね」と訳したという逸話、ありますよね。私、これは完全に妄想なのですが、もしかしたら「好きです」を言えなくて、もしくは聞き間違えて「す、す、すk…」「?」「あ、いえ。す、つ、月が綺麗だなと思いまして」と、そんなシーンを想像したことがあるんです。萌ちゃんと日向くんの初々しさに重ねて、あのセリフを提案しました。

原作者も120%満足の作品。小説と映画を見比べながら心に残る “余韻” を楽しんでほしい

芥川さん

最初に台本で見たときに「これ、すごく良いです」って言ったんですけど、次の台本では見つけられなくて、「あれ、どうしたんですか?」って。でも映画を観たらちゃんと入っていて、本当によかったです。あのシーン、すごく好きなんです。
しかも、キスシーンの位置について監督と私が偶然まったく同じことを考えていたと聞いて、鳥肌が立ちました。話し合ってもいないのに、着地点が一緒だったんです。作品に対する気持ちが同じ方向を向いていたんだと思いますね。

酒井監督

本当に不思議でしたね。お互い全然話したこともないのに、同じシーンで同じことを感じていたんです。「月が綺麗ですね」という言葉みたいに、言葉にしなくても伝わる気持ちってあるんだなと思いました。

完成した映画をご覧になって、率直な感想をお願いします。

芥川さん

奇跡みたいなことが起きてるな、と思ってます。原作者が100%満足できる映画ってそうそうないと思うんですけど、今回は完全に120%です。観終わったあとに、悲しいだけじゃなくて “あたたかい涙” が残る。そんな映画になっていて、本当に感動しました。

酒井監督

うれしいです。芥川先生の言葉のやさしさが、映像になっても変わらず届いていて。“純粋なものを信じて撮ってよかった” と心から思いました。人生や家族愛、友情、そして恋心と、いろんな愛の形が詰まっていて、観る人によって感じ方が違うと思います。

原作者も120%満足の作品。小説と映画を見比べながら心に残る “余韻” を楽しんでほしい

映画の見どころを改めて教えてください。

酒井監督

好きな人を思いながら見た景色や香り、そんな誰の心にも残る記憶を呼び覚ますような描写を意識しました。恋をきっかけに“愛”を知り、誰かを想うことで芽生える優しさや強さを丁寧に描いています。恋愛のときめきだけでなく、登場人物たちの成長や生き方にも深く踏み込んでいて、ラブストーリーとしてもヒューマンドラマとしても心に響く仕上がりになっていると思います。ぜひ世代を問わず楽しんでもらえたらと思います。

芥川さん

大切な人の幸せを願う姿に、人の優しさや思いやりを感じてもらえたらうれしいです。映画と小説では多少の違いはありますが、どちらも心に残る “余韻” は同じだと思いました。ぜひ、小説と映画を見比べながら楽しんでいただきたいです。

芥川さんが手がける『ストロベリームーン』の映画では、主人公の萌の親友であり、日向の幼なじみである麗の心情が描かれています。小説ならではの繊細な心理描写に、きっともう一度胸を締めつけられるはずです。映画を観た人も、これから読む人も楽しめる一冊です。

小説『ストロベリームーン』、『コールドムーン』(すばる舎刊)

小説『ストロベリームーン』、『コールドムーン』(すばる舎刊)

大分県中津市出身の兼業作家・芥川なお氏が描く、心を揺さぶる純愛小説『ストロベリームーン』。地元・中津市を舞台に、高校1年の佐藤日向と病を抱える少女・桜井萌の切なくも温かな恋を描いています。そして、幼なじみの高遠麗と日向の10年越しの想いをつづった続編『コールドムーン』。誰もが胸を締めつけられる、青春のきらめきと優しさにあふれた物語です。

(掲載日:2025年10月15日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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