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ロボットがサーバーを自動交換。“ケーブルレス” サーバーラックで実現するデータセンター自動化

ケーブルレスでロボットが自動設置! 次世代のサーバーラックで実現するデータセンターの自動化とは

今や、さまざまなシーンでロボットが活躍しているのを見かけるようになりましたね。ソフトバンクが開発したのは、ロボットがサーバーを押し込むだけで設置・交換が完了する「ケーブルレス構造」のサーバーラック。果たして何が「ロボットフレンドリー」なのか、 開発の目的を担当者に聞きました。

大高 道雪(おおたか・みちゆき)

話を聞いた人

ソフトバンク株式会社 共通プラットフォーム開発本部 クラウドインフラ開発部

大高 道雪(おおたか・みちゆき)

手作業でのケーブルの接続や取り外し不要。データセンターの自動化を実現する次世代サーバーラック

そもそも、サーバーラックはどんな役割を果たしているのでしょうか。

サーバーラックとは、データセンター内でサーバーを効率的に収納し、電源や通信ケーブルを整理するための棚で、複数のサーバーを積み上げて格納することで、限られたスペースで大量のデータ処理を可能にするものです。

一般的なサーバラックのイメージ

一般的なサーバーラックのイメージ

一方、今回、ソフトバンクが開発したのは、データセンターの自動化を加速させる「ロボットフレンドリーなサーバーラック」。ケーブルを使わず、電源や通信を自動接続でき、ロボットがサーバーをラックに押し込むだけで設置・交換作業が完了するというものです。

手作業でのケーブルの接続や取り外し不要。データセンターの自動化を実現する次世代サーバーラック

ロボットが人の代わりに安全に作業できる環境を

ロボットフレンドリーなサーバーラックを開発したきっかけや狙いは、どんなところにあるのでしょうか?

大高 「現在、普及しているサーバーラックのほとんどは、ケーブルを抜き差ししたり、サーバーを交換したりといったメンテナンスが手作業により実施されています。一方、近年は生成AIなどの普及により、サーバーの台数や設置頻度が増えているにも関わらず、熟練した技術者の不足や作業コストの上昇が深刻な課題になっています。特に、大規模なデータセンターでは、構築や保守に年間数億円規模の費用がかかる場合もあります」

人がサーバーの設置やメンテナンスをする体制では、今の急激な生成AIの普及に対応するのが難しいということですね。

大高 「はい。サーバーの増設や交換をする作業では、ケーブル配線やラベリング、メモリー搭載など多くの工程を人手に依存しているのが現状です。業界全体で深刻な人手不足の課題を抱える中で、人の作業からロボットの作業へとシフトして、データセンター全体を自動化する仕組みを作りたいというのが、ロボットフレンドリーなサーバーラックを開発した背景です」

ロボットフレンドリーなサーバーラックの開発は、具体的に何から着手したのでしょうか

大高 「データセンターの自動化を進める上で、最も大きな課題となっていたケーブルをなくすところから着手しました。いくらサーバーの設置や交換作業を自動化しようとしても、サーバーラック内に密集する電源ケーブルや通信ケーブルがロボットによる作業の妨げになるのです。この課題を根本的に解消するために、ケーブルを使用しない構造のサーバーラックを採用し、将来的にロボットが安全かつ正確に作業できる環境を実現することを目指しました」

さまざまな作業がロボットにより自動化されたデータセンターのイメージ

さまざまな作業がロボットにより自動化されたデータセンターのイメージ

電源や通信設備を、ケーブルなしで接続できる仕組みを教えてください。

大高 「電源・通信・冷却という3つの要素を、1つのサーバーアダプターに統合し、ケーブルレスによる接続を可能にしました。

具体的には、電源供給は従来のケーブルではなく、『バスバークリップ』と呼ばれる金属製の接点部品と、『電源バスバー(電力を分配する導体バー)』を用います。これにより、サーバーを押し込むだけで確実に電力を供給することができます。

通信については、接続時のずれにも強く、高い信頼性を持つ『ブラインドメイト構造』の光コネクターを採用しています。この光コネクタは、ネットワークバスバーを経由して市販のネットワーク機器と接続され、複雑な手動配線を不要にしています。

冷却に関しても、同様にブラインドメイト構造の『水冷コネクター』を採用しました。これにより、『マニホールド(冷却液を分配する配管装置)』との接続を、センサー等による確認を行わずに自動で完了させることが可能になりました。

このように、各要素において専用の接続機構を設けることで、ケーブルレスかつ高信頼な自動接続を実現し、ロボットによる安全で効率的なサーバー運用が可能となります。

また、サーバーアダプターを正確に誘い込む『フローティング構造』により、多少のズレがあっても安定して接続できるなど、ロボットの動作精度を考慮した工夫も施されています」

ロボットが人の代わりに安全に作業できる環境を

開発する上で、どのような課題がありましたか?

大高 「ソフトバンクは、データセンターの建設や運営を行う立場のため、従来はデータセンターに収容する設備はメーカーが製造したものを仕入れてきました。しかし、データセンターの自動化を実現するには、既存の製品では対応ができません。そこでサーバーラックを新しく開発したいとメーカーに相談を持ちかけてみたところ、幅19インチの汎用(はんよう)的なサーバーを、人ではなくロボットが取り付けるには、特殊なサーバーアダプターとラックが必要であることが分かり、ハードウエアの仕様や設計の標準化・効率化を進める非営利組織「Open Compute Project(OCP)」がデータセンター向けの製品の設計について定めた仕様であるORV3規格に準拠させつつ、一部独自の設計をすることになりました。こうして、対応可能なメーカーと協議を進め、現在の仕様のサーバーラックが完成しました」

EIA規格(幅19インチ)の汎用サーバーをケーブルレスで設置することが可能で、市販のサーバーにも対応できる高い汎用性を実現

EIA規格(幅19インチ)の汎用サーバーをケーブルレスで設置することが可能で、市販のサーバーにも対応できる高い汎用性を実現

ロボットはどのようにサーバーを設置・交換するのですか?

大高 「今後の自動化に備え、ロボットが動作しやすい物理構造とインターフェース設計を行いました。例えば、サーバーを押し込むだけで接続が完了する構造や、ラック間に障害物がない直線的な構造になることを考慮した設計を行い、自動搬送フォークリフト(AGF)や、コンテナロボット(CTU)との連携を想定しています。
コンテナロボットからリフターロボットがサーバーを受け取って、ラックのQRコード(カメラ)とレーザーで位置判定を行い、対象の位置にサーバーを投入することを想定しています」

サーバーラックはもちろんサーバーそのものもかなり重量がありますよね。ロボット操作の安全性を高めるための仕組みはありますか?

大高 「ロボットには、障害物を検知するLiDAR(Light Detection And Ranging)や、衝突防止バー、緊急停止スイッチなどを取り入れています。移動中に障害物を検出したら、自動で減速・停止し、人や機器との衝突を回避することで安全性を高めています」

実証の舞台は次世代社会インフラの重要拠点「北海道苫小牧AIデータセンター」

実証の舞台は次世代社会インフラの重要拠点「北海道苫小牧AIデータセンター」

北海道苫小牧AIデータセンター完成予想図

今回開発したサーバーラックは、現在建設中の「北海道苫小牧AIデータセンター」に設置して実証実験をするそうですね。どのようなことを確認する予定ですか?

大高 「まず、今回開発したロボットフレンドリーなラックと、サーバーなどを運搬するロボットの信頼性や接続安定性を評価します。また、将来的なロボット導入に備え、各ロボットの群管理やロボット間の連携、インターフェースが自動装置に適合するか、数カ月かけて確認していく予定です」

実証の舞台は次世代社会インフラの重要拠点「北海道苫小牧AIデータセンター」

他の拠点への展開は予定していますか?

大高 「北海道苫小牧AIデータセンターでの評価結果を踏まえ、ロボットフレンドリーなラックの設計を標準化し、将来的にソフトバンクの他のデータセンターへ展開していく予定です。最終的には、ロボットとAIが連携し、人が介入せずに運用できるデータセンターの実現を目指しています」

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(掲載日:2025年12月3日)
文:ソフトバンクニュース編集部