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ソフトバンクグループがロボット事業に本格参入

ソフトバンクグループは、2014年6月、ロボット事業を本格的に展開することを相次いで発表しました。まず2014年6月5日、ソフトバンクモバイル株式会社(以下「ソフトバンクモバイル」)が、世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」を発表。続く6月11日にはアスラテック株式会社(以下「アスラテック」)が、ロボット制御ソフトウエア「V-Sido OS(ブシドー・オーエス)」の提供とロボット開発支援の開始を発表しました。

“心”を持ったロボット「Pepper」

「Pepper Tech Festival 2014」では技術仕様も公開予定

最初に発表したのが、ソフトバンクモバイルとフランスのロボットメーカー、ALDEBARAN Robotics SAS(アルデバラン・ロボティクス)が共同開発した「Pepper(ペッパー)」です。

「Pepper」は、感情認識機能を持つパーソナルロボットです。各種センサーから、人の声や表情などを検知し、かつ周囲の状況をもモニターすることで、人間の感情を認識し、人間とコミュニケーションを取ることができます。「Pepper」はまた、単純にプログラムに従って行動する従来のロボットとは一線を画す「感情エンジン」を搭載し、学習型のロボットという特徴も備えています。

これは、人の“ありがとう”などの反応、表情や声のトーンを感情のデータとして蓄積し、“良いこと”と認識させる自律学習システムです。特に感情の振れ幅が大きい経験を重点的に蓄積し、これを繰り返し学習することで、空気を読んだ行動をするロボットへと成長します。さらに「クラウドAI」という機能により、他の家や場所で活動する「Pepper」と知識や経験を集合知として共有することで、その行動が加速度的に成長していきます。もちろん、個人を特定するようなプライベートな情報ではなく、あくまでより良い行動につながる経験が共有されるイメージです。

「Pepper」はすでに、「ソフトバンク銀座」「ソフトバンク表参道」をはじめとしたソフトバンクショップで、“ショップクルー”として勤務しています。勤務するショップは続々と拡大中です。また、株主総会やサービス発表会などのソフトバンクグループ関係のイベントや、ロボット関連のイベントにも出演しています。9月20日にはデベロッパーやクリエイターを対象とした「Pepper Tech Festival 2014」を企画しており、参加者向けに先行販売予約の受け付けも予定しています。

そして2015年2月、「Pepper」は一般向けに販売が開始されます。本体価格は198,000円(税抜)と、ほぼパソコン並みの価格設定となっています。
「Pepper」の発表に当たり、ソフトバンクグループ代表の孫 正義は、「ソフトバンクグループは心を持ったロボットの開発を目指していきたいと思います。『感情エンジン』と『クラウドAI』がわれわれのロボットの特徴です。『人々の喜びを大きくし、人々の悲しみを少なくしたい』がわれわれの願いです」と、抱負を述べました。

さまざまなロボットを安全かつ効率よく制御する「V-Sido OS」

続いてアスラテックが、ロボット制御ソフトウエア「V-Sido OS(ブシドー・オーエス)」の提供とロボット開発支援を開始することを発表しました。

「V-Sido OS」は、さまざまなロボットを制御することができる、汎用性の高いロボット制御ソフトウエアです。人間の体に例えると、運動神経をつかさどる「小脳」にあたる働きをします。例えば「右手を挙げる」という指示を与えた場合、従来のロボットは、手を挙げた反動でバランスを崩し、転倒してしまいます。ところが、「V-Sido OS」を搭載したロボットであれば、「右手を挙げる」という指示を与えただけで瞬時に全身のバランスを計算し、体をわずかに傾けたりすることで、転倒せずに手を挙げることができます。

「V-Sido OS」搭載のコンセプトモデル「ASRA C1(アスラ・シーワン)」と吉崎

このように、最低限の指示で、どうすれば安全かを考え、臨機応変に対応できるのが「V-Sido OS」の大きな特徴です。

また「V-Sido OS」は、大きな産業用の油圧式ロボットから、パーソナルロボットやおもちゃに至るまで、多様なロボットに応用することが可能です。これまでは、こうした汎用性の高い制御システムがなかったため、新たにロボットを開発する場合、メーカー各社はそれぞれ独自の制御システムを作る必要がありました。しかし「V-Sido OS」を採用すれば、一から制御システムを作る必要がなくなるため、開発コストの削減や開発期間の大幅な短縮が可能となり、メーカー各社はより効率的にロボットを開発できるようになります。

アスラテックは、この「V-Sido OS」の一部機能を実装したマイコンボード「V-Sido CONNECT(ブシドー・コネクト)」を年内に発売する予定です。
これらの発表に当たって、「V-Sido OS」の開発者であるアスラテック チーフロボットクリエーターの吉崎 航は「今後も、さまざまな分野でのロボット開発を後押しできればと考えています。われわれは『V-Sido OS』を通して、ロボットと人が共存できる社会を目指していきます」と意気込みを語りました。

なお、先に発表された「Pepper」には、現在は別のソフトウエアが搭載されていますが、「V-Sido OS」の技術もすでに一部反映されています。吉崎は「今後同じグループ会社として、ALDEBARAN Robotics SASと技術提携していきたい」と述べ、さらなる連携を目指しています。

(掲載日:2014年7月14日)