SNSボタン
記事分割(js記載用)

有機? EL? スマホでもおなじみ「有機ELディスプレー」の仕組み。黒がキレイに映る理由も解説します!

有機? EL? スマホでもおなじみ「有機ELディスプレー」の仕組み。黒がキレイに映る理由も解説します!

「有機ELディスプレーを搭載!」「有機ELによる美しい映像」。スマホ選びの際にこんな言葉を見たことはありませんか? スマホだけでなく、家庭用の薄型テレビなどにも使われている有機ELディスプレーですが、どんなものなのか知らない方も多いはず。そこで今回は、有機ELディスプレーの仕組みを詳しく解説します。

「有機EL」ってどんな意味?

有機ELディスプレー利用シーン

有機ELディスプレーは、その名のとおりディスプレーの1種です。スマホや薄型テレビの画面に使われているほか、ショッピングモールや駅構内の柱などに設置されるデジタルサイネージでも使用されています。

では「有機EL」とはどういうものなのか、言葉の意味から見ていきましょう。

「有機EL」ってどんな意味?

EL(イーエル)とは、「エレクトロ・ルミネセンス(Electro Luminescence)」の略。物質に電圧を加えることで発光する現象(およびその光)を指します。そして、発光材料となる物質に有機化合物を使用することから「有機EL」と呼ばれています。

ちなみに、材料に無機物を使用する「無機EL」というものもあります。さらに、ルミネセンス自体にも複数の種類があり、熱や光、音響波など発光の元となるエネルギーによって分類されています。

ところでiPhoneをお使いの方は、「OLED」という表記を見たことがあるかもしれません。 これは「Organic Light Emitting Diode」の頭文字を取って略したもので、日本語にすると「有機発光ダイオード」となります。実はこれも有機ELの一種。iPhoneなどのディスプレー情報には「OLED」と記載されていたり、製品によっては有機EL(OLED)という表記になっていることもあります。

ディスプレーの仕組みをおさらい

次にディスプレーそのものの仕組みを簡単に理解しておきましょう。

鍵となるのは、「画素(ピクセル)」という光の点です。普段見ているパソコンのモニターやテレビに近づいてみると、小さな点がびっしりと並んでいるのが分かると思いますが、この点が画素。1つ1つの画素が色を作ることで、画面に映る文字や風景を形作っています。
運動会やスポーツの試合で行う人文字を想像すると理解しやすいはず。色付きのパネルを持った一人一人が画素。人が集まると、文字や絵が浮かび上がるイメージです。

ディスプレーの仕組みをおさらい

色の表現には、光の三原色(赤・青・緑)を用います。各画素は光量を調節して三原色の明るさを変化させ、色を調合します。つまり、ディスプレーにイチゴの写真が映っているとしたら、赤い部分の画素は赤い色を作り、へたの部分の画素が緑色を作ることで、イチゴ(の像)を構成しているんですね。

一緒に知っておきたい、4Kや8Kの意味

ディスプレーの性能を表す「4K」や「8K」という数字。これは「解像度」という指標で、ディスプレーに縦横それぞれいくつの画素が並んでいるかを表します。「2160×3840」の解像度のディスプレーなら縦に2,160個、横に3,840個の画素が並んでいることを示します。

人文字で考えると、同じ大きさの文字を10人で作るよりも50人で作った方が、細かな部分を描写しやすくなります。また、同じ人数の場合は文字を小さくしたほうがきれいに形作ることができますよね。同じ大きさでも、解像度の高いディスプレーはたくさんの画素で映像を構成できるため、鮮明に表示できるんです。

一緒に知っておきたい、4Kや8Kの意味

映像を表示する仕組み、液晶とは何が違うの?

ディスプレーの基本を知ったところで、有機ELディスプレーの仕組みを見ていきましょう。有機ELと同じく多数の製品に採用されている「液晶ディスプレー」と比較したとき、有機ELディスプレーには、①ディスプレーを軽量化・省電力化できる、②パネルを曲げられる、③色彩の描写力に優れている、④応答速度が早い、という大きく4つの特長があります。

これらの詳細はもう少し後で触れることにして、まずは「液晶ディスプレー」の表示方法を解説します。液晶ディスプレーと比較することで、有機ELディスプレーの特長が分かりやすくなります。

映像を表示する仕組み、液晶とは何が違うの?

液晶ディスプレーは、私たちが普段見ている画面の後ろに複数のパネルが内蔵されています。基本的には、三原色が並ぶカラーフィルターにバックライトからの光が当たることで、画面に色が映る(映像を表示する)仕組みです。このとき光量を調節しているのが、バックライトとカラーフィルターの間にある液晶素子。透明度(光の透過率)を変化させてカラーフィルターに届く光量を調整し、画面に映る色を作ります。明るさが必要な部分には光を多く通し、暗い部分には光を通さないようにするなど、細かく調節することでさまざまな色を表現しています。

有機ELディスプレイの特長を解説

では有機ELディスプレーはどのような構造をしているのでしょうか。有機ELディスプレーは、有機EL素子と画面のシンプルな構造です(カラーフィルターを含む製品もあります)。有機EL素子が電圧を加えられると発光することはすでに説明したとおり。また、発光する際に色の調合も行います。

有機ELディスプレイの特長を解説

①ディスプレーを軽量化・省電力化できる

液晶ディスプレーのように後ろから光を当てる必要がなく、バックライトが要りません。余計な部品を省いて薄くできるのでディスプレーを軽量化することができるんです。加えて、常時バックライトが点灯している液晶ディスプレーと比べると、必要な画素だけが発光する有機ELディスプレーは省電力化も期待できます。

②パネルを曲げられる

薄い構造に加えてプラスチックのような加工しやすい素材を基盤に使うため、ディスプレーを曲げやすくなります。液晶ディスプレーはバックライトなどを必要とするため、曲面の設計が困難です。前面がゆるやかにカーブする大型テレビや、円柱に設置するデジタルサイネージ広告に使われる湾曲したディスプレーは、有機ELが得意としています。

③色彩の描写力に優れている

また有機ELは、画素ごとに電圧の大きさを変えて明るさを調整できることもポイント。たとえば、夜空のような黒い部分を表現するとき、液晶ディスプレーは液晶素子の透明度を下げて光が通らないようにして「黒」を作ります。とはいえ、完全に光を遮断できるわけではありません。黒い部分でもわずかにバックライトの光が漏れて、明るくなってしまいます。

その一方、有機ELディスプレーは、“発光しないこと”で黒を表現します。つまり、光のない完全な黒を出せます。そして、色を作る必要のある画素だけが発光すればよいため、明暗のメリハリがはっきりし、映像の描写力に優れるといわれています。

④応答速度が早い

液晶ディスプレーは光をあててから量を調節して色を作りますが、有機ELは画素が自ら発光するため、表示にかかる時間が短くなります。高い応答性を持つディスプレーは、画面の切り替わりが速く、物体が動いたときに現れる残像感(物体の周囲がぼんやりとすること)を低減できます。

一方でこんなデメリットも

同じ画面を長時間表示した場合にその画面が定着してしまう「焼き付き」が起こる可能性があること。その他にも、製品化の難易度から価格が高くなりがちな点、屋外などではバックライトを当てる液晶ディスプレーのほうが明るく見やすい点などが挙げられます。

有機ELディスプレーのスマホを活用するポイント

最近では、ディスプレーに有機ELを採用するスマホが増え、液晶ディスプレーを搭載する機種よりも多くラインアップに並ぶようになりました。その理由は、省電力化・軽量化というメリットの恩恵をとりわけ大きく受けられるのがスマホだからです。

いまやスマホは通話に限らず、さまざまなシーンで活躍し、生活必需品になりつつあります。そんなスマホだからこそ、なるべく電池切れにならないように使いたいですよね。

たとえば、あまりスマホを操作しない仕事中などは、黒を基調とした画面表示に切り替える「ダークモード」を適用しておくと、省電力化につながります。軽量化できるのも、常に持ち歩くスマホにぴったりの特長です。

有機ELディスプレイのスマホを活用するポイント

スマホで動画やゲームを楽しんだりする機会が増え、さらにきれいな映像を見られるディスプレーが求められるようになりました。このことも有機ELの採用が広がった理由の1つです。「黒」の表現に優れる有機ELなら、映画やゲームをさらにきれいな映像で楽しめます。

また、有機ELディスプレーは応答性も優れているため、めまぐるしく画面が動くスポーツの中継映像やゲームに向いているんです。

スマホを進化させ、スマホの楽しみ方を広げてくれる有機ELディスプレー。新しくスマホを買うときは、ディスプレーの性能もしっかり吟味して選ぶとよいかもしれませんね。

ソフトバンクの最新スマホをチェックする

(掲載日:2020年3月18日)
文:友納一樹(ゴーズ) 撮影:高原マサキ