新しい生活様式の中で、犬や猫を家族に迎えた方や、自宅で愛犬と過ごす時間が増えた方も多いのではないでしょうか。ペットの成長を写真や動画に残し、それを家族や友人とシェアする方も増えているはず。せっかく動画を撮るなら、構図や編集にもこだわりたいですよね。
今回は、ペットのかわいい姿を動画で記録するテクニックについて、ペトグラファー=ペットフォトグラファーとして活躍する湯沢祐介さんにお聞きしました。さらに、後編では、湯沢さんに撮影いただいた動画を使って、スマホ動画クリエイターのpitacoさんが、動画編集のコツを伝授してくれます。プロフェッショナルのスキルを学んで、ペットの魅力を最大限に引き出しましょう!
スマホでできるペット動画撮影テクニックの目次
ペトグラファー 湯沢 祐介(ゆざわ・ゆうすけ)さん
月に500匹以上のペット撮影を手がけるペトグラファー=ペットフォトグラファー。七色の声を使い分けて犬の気を引ける他、猫じゃらしでネコを自在に誘導することから「猫じゃらしの魔術師」の異名を持つ。
ペットの愛くるしい表情や動きを捉えるには? プロが教える愛犬撮影の5つのテクニック
活発なペットの動きを捉えるのは難しいもの。愛犬や愛猫のベストな姿をスマホで撮りたいと思いながら、苦戦している人も多いかもしれません。ペトグラファーとして活躍する湯沢さんに、ペットを上手に撮影するテクニックとコミュニケーション法を、5つのポイントに分けて教えていただきました。
撮影テク① 目線の位置をペットと合わせる
「ペットを撮影するときの基本は、撮影対象である犬や猫とアイレベル(目線の位置)を合わせること。ペットの目線が低ければ、自分も地面に寝そべるなどして、低く構えるようにしましょう。また、カメラの向きによっても、画の雰囲気が変わります。スマホは上部にカメラがついていますが、通常は、カメラが上部にある向きで撮影します。空など背景を入れたい場合は、レンズが下部にくるように持ち替えて撮影するといいでしょう」
よくやりがちなNG撮影①:カメラを動かしてませんか?
撮影中は基本的に「カメラを動かさないこと」を意識してください。カメラを固定して、ペットに動いてもらうだけでも、素人っぽさがなくなり、映像のクオリティーが上がります。
撮影テク② 毛の色に合わせて明るさを調整する
「自動露出機能(AE)が搭載されているスマホのカメラでは、周囲の光を検知し、適正露出で撮れるように調整してくれます。ただし、万能ではありません。毛色が白や黒の子を撮る時は露出補正が必要になります。被写体をタップすると自動露出してくれるので、明るすぎるときは明るさを下げ、暗すぎるときは明るさを上げましょう。また強い光のもとで撮ると白とびや黒つぶれになることもあるので注意しましょう」
ペットの毛の色 |
注意点 |
改善方法 |
---|---|---|
白 |
白=明るいと判断し、暗めに映る |
被写体をタップし明るさを上げる |
黒 |
黒=暗いと判断し明るく映る |
被写体をタップし明るさを下げる |
全般(逆光時など黒つぶれの場合) |
顔に影がかかり、顔まわりが暗くなります |
白い紙をレフ板替わりに使い、顔の明るさを上げる |
撮影テク③ おやつやおもちゃを使って目線を誘導する
「『カメラのほうを向いて』と言っても、なかなか目線をくれないのが、ペット撮影の難しいところ。目線がほしいときは、おやつやお気に入りのおもちゃを取り付けられる、スマホ用のクリップを使用することをオススメします」
撮影テク④ 足や尻尾など体のパーツを撮っておく
「ペットは、『あっちに行きたい』と足をバタバタさせたり、『おやつが欲しい』と尻尾を振ったりするなど、全身で感情を表現します。顔だけでなく、その子の特徴的な体のパーツを撮っておくことで、より動物たちの感情が“伝わる”動画に仕上がります」
撮影テク⑤ 手ブレ補正アイテム(ジンバル)を活用
「手ブレの多い映像は、酔ったり気持ち悪くなったりするなど、見る人に不快感を与えてしまいます。手ブレを防ぐためにも、ペットの活発な動きを追うときは、ジンバルを使用しましょう。スマホ用のジンバルは、家電量販店などで、2万〜3万円程度で購入できます。ワンタッチでスマホを取り外しできる、最新式のものがオススメです」
よくやりがちなNG撮影②:使える素材が足りなくなっていませんか?
撮影後に動画を見返して、「使える素材がない」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか? 5秒の動画を作るには、使いたいシーンの前後に3〜5秒の動画素材があると編集しやすいです。良いシーンが撮れたからとすぐに収録を終えずに心の中で5秒数えてから収録を止めましょう。
ペットの撮影で一番大切なのは、テクニックではなく、動物とのコミュニケーション
これまで撮影テクニックを紹介しましたが、やはりいちばん大切なのは、愛するペットとの信頼関係だそう。最後は、湯沢さんに、動物と心を通わせるためのメンタル面でのテクニックを話してもらいました。
「ペトグラファー」という職業を、今回初めて知りました。湯沢さんは普段、ペトグラファーとして、どのようなお仕事をされているのでしょうか?
「テレビや雑誌など媒体での撮影や、ペット番組の制作、ペットイベントの企画・運営などを主にに行っています。そのほか、子犬や子猫をブリーダーさんからお借りして撮影し、ストックフォトとしてメーカーに貸し出すような仕事もしていますね」
撮影時に初めて会う犬や猫と、どのようにコミュニケーションを取っていますか?
「やんちゃな子の場合は、走ったりボールを投げたりするなど、一緒に遊んで仲良くなります。こわがりな子の場合は、手の匂いをかがせたり、優しく声をかけたりして、安心させてあげることが第一です。それぞれの性格に合わせてコミュニケーションを取り、信頼してもらうことが、撮影成功の近道です」
被写体である犬や猫が、思ったように動いてくれないときはどうするのでしょう?
「撮りたい画があったとしても、無理強いをしてしまうと、いい動きや表情は押さえられません。なので、思ったように動いてくれないときは、潔く諦めて『いまは走りたがっていないから、毛布の上で寝ているシーンを撮ろう』など、代案を考えます。犬や猫にも感情があるので、状況を見ながら対応することを心掛けています」
どのようなときに、仕事が楽しいと感じますか?
「飼い主さんやブリーダーさんの協力を含め、皆で試行錯誤しながら撮影を進めていく中で、想定していなかった動きや表情を撮れることがあります。そういうときは、非常にテンションが上がりますね。ペトグラファーとして10年以上活動してきましたが、いまだに『こんな表情、撮ったことがない』と新鮮な驚きを感じることがあります」
ペットの撮影、これだけは大切に! プロからのアドバイス
「『いい写真、いい動画を撮りたい』といった気持ちは誰にでもあると思いますが、撮影の際は、愛犬や愛猫に負担をかけないように気を付けましょう。無理やりポーズを取らせたり、撮影のためにあちこち連れ回したりすると、ペットはカメラやスマホを見るだけで逃げ出すようになってしまいます。
あらかじめ撮影する場所や構図を決めておき、できるだけ短時間でサッと撮る。撮影が終わったら『よくできたね』とたっぷり褒めて、ご褒美をあげてください。撮影時間=飼い主さんとのふれ合いの時間にすることで、ペットたちもカメラやスマホに抵抗がなくなり、いい表情をしてくれます」
後編では、湯沢さんに撮影してもらったペット動画素材を動画クリエイターのpitacoさんに編集してもらい、編集のテクニックも教えてもらいました。どんな動画が完成したかはこちらをご覧ください!
(掲載日:2020年11月11日)
文:佐藤由衣
編集:エクスライト
撮影:山野一真