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手紙の達人に聞く、ニューノーマル時代のデジタル文章コミュニケーション上達術

手紙の達人に聞く、ニューノーマル時代のデジタル文章コミュニケーション上達術

新型コロナウイルスの影響で、大きく変わりつつある私たちの生活。オンライン化やテクノロジーの活用によって、仕事に求められるスキルやマインドにも大きな変化が、今求められています。

そこでソフトバンクニュースでは、さまざまな分野で活躍する達人たちに、ニューノーマル時代のビジネスパーソンのヒントとなるような話を毎回お聞きします。第3回は「手紙の達人」として、一般社団法人手紙文化振興協会・代表などを務める、むらかみかずこさんに、ニューノーマル時代の文章コミュニケーションの心得について教えてもらいました。

今回の達人は、手紙のプロフェッショナル

むらかみさん

むらかみ かずこ
一般社団法人手紙文化振興協会・代表理事。ビジネス手紙有限会社・代表取締役。「手紙名人」という肩書きも。企業研修・セミナー、講演、メディアなどを通して、心が通じる手紙の書き方や仕事の成果につながる文章術を広く社会に発信する。1年間に書く手紙の枚数は、約1,000枚。

良い手紙・文章は「主役」が違う! 伝わるコミュニケーションの「極意」とは?

取材はオンラインで行いました。

取材はオンラインで行いました。

手紙や文章の書き方に関する書籍の執筆や企業向け研修を行うなど、“手紙のプロ”であるむらかみさん。それらを極めようと思ったのは、どうしてなのでしょうか?

私は口下手な子どもだったんです。自分の思っていることをとっさに口に出して伝えることがすごく苦手で、「こうしたい」「こうしてほしくない」など、相手に分かってほしい気持ちを頑張って言葉にしようと思うのですが、どうしてもうまくいかない。それをストレスに感じていました。

でも、書くことならマイペースにできますし、じっくり言葉を選ぶこともできる。自分は相手に何を伝えようとしていたのか、思考を整理することで気付きも得られる。私にとって書くことは、“想いを伝えるためのベストな手段”であり、“コミュニケーションの手助けとなる武器”だったんです。

研修や指導などで、日々多くの人の手紙や文章を添削しているむらかみさんから見て、良い文章と、悪い文章は何が違うのでしょうか?

まず、良い文章の特徴は、“相手目線”で書かれていること。相手への気配りが表れているかどうかが、文章の良しあしを決めます。

  1. 分かりやすさ
    長過ぎたり、言葉足らずになったりして、主題が伝わらないということがないように。また、日時や場所などの連絡をする場合は、文章内に含めてしまうと認識しづらいので、別途箇条書きにすると親切。
  2. オーダーメード感
    定型文やサンプルから引っ張ってきた言葉ばかり使わない。「自分のために書いてくれている」と思うからこそ、うれしいもの。過去に相手と交わした会話や、共通の話題・思い出、相手を気遣う言葉などを添えよう。
  3. オリジナリティー
    普段は明るく親しみやすい性格なのに、硬い文章で書いてしまうとその人らしさが失われてしまう。目上の人に対して書く場合はその方が良い場合もあるが、そうでないなら、“自分らしさ”が出る文章を心掛けよう。

逆に、悪い文章には、どんな特徴がありますか?

“自分のために書かれた文章”になってしまっていることですね。例えば、自分をよく見せるために難しい言葉をわざと使うとか、ミスをしたくないから過剰に丁寧な言葉を使うとか。定型文や当たり障りのない文章を羅列して、まったく気持ちが伝わってこないのもNGですね。

良い文章は、主役が「相手」、悪い文章は、主役が「自分」ということですね。

そうです。手紙は、相手がもらってうれしい内容かどうかが大切です。送る相手の顔を思い浮かべながら書けば、自然に、相手に合った文章や言葉遣いになっていくと思います。また、通り一遍の内容にしないために、日頃から言葉や表現のバリエーションを増やしておくことも大切ですね。

どのようにすれば、言葉のバリエーションを増やすことができるでしょうか?

何かを見たときって、安易に「すてき」「かわいい」とか、いつも同じ言葉で表現しがちですよね。でも、決まりきった言葉を使わずに、どう表現するか考える癖を付けるんです。具体的にどうすてきなのかとか、どこがどうかわいいのかなど。そうすることで、自分の中の表現の引き出しをどんどん増やすことができます。

言葉や表現のバリエーションを増やす、簡単トレーニング

何か1枚写真や絵はがきを用意してください。そして、そこに写っているもの、描かれているものについて、その良さをなるべく具体的に言葉にしてみましょう。

言葉や表現のバリエーションを増やす、簡単トレーニング

この写真なら、例えば…

  • 普段の嫌なことを忘れてしまいそうなくらい、キレイな風景
  • 日本らしい夏を感じさせてくれる風景
  • 目が覚めるような鮮やかなヒマワリの黄色がまぶしい など

その他、読んだ本や観た映画の感想を言語化する癖をつけることも、表現力を磨く方法としてオススメです!

リモートでの文章コミュニケーション。誤解を生まないコツは「考えるステップ」

リモートでの文章コミュニケーション。誤解を生まないコツは「考えるステップ」

最近は、リモートワークによって対面でのコミュニケーションが減り、メールやチャットなどで連絡を取り合う機会が増えています。手紙のプロであるむらかみさんから見て、そのような状況で気を付けなくてはいけないことはありますか?

メールやチャットは即座に連絡をすることができて、効率的だし、とても便利ですよね。しかし、それと同時に、誤解を生みやすいものでもあると思います。選ぶ言葉によっては、ぶっきらぼうな印象を与えてしまったり、やたらと他人行儀に感じさせてしまったり……。そういうことが積み重なると、仕事にも支障が出るだけでなく、人付き合いが怖くなったり、精神的にまいったりしてしまいますね。

大切なのは、送信する前に少し“考えるステップ”を入れることです。

例えば……

  • 冷たすぎる文章になっていないか?
  • 分かりにくい文章になっていないか?
  • 相手が求めている回答になっているか?
  • 失礼な文章になっていないか?

ビジネスシーンにおいても、“相手が受け取ってうれしいメッセージになっているか”を確認してから送るようにしましょう。

相手が受け取ってうれしいメッセージのポイント&例文

  1. お礼をするとき
    何に対する感謝の気持ちなのかを、具体的に書く。相手にそれをしてもらってどう感じたのか、感謝の理由を伝える。そうすることで、相手は「自分を理解してくれているんだな」と思うことができる。
    後輩に仕事を手伝ってもらったときに送るチャット例

    昨日は急なお願いだったのに、資料の整理を手伝ってくれてありがとう!
    間に合うかどうか焦っていたから、引き受けてくれてすごくありがたかったよ。
    〇〇さんは仕事が丁寧だから、資料がキレイにまとまって、とっても助かりました!

    むらかみ「どんなところが良かったのかを具体的に挙げて誉めることで、相手は『よく見てくれているんだ』と感じ、うれしくなります。『!』など感嘆符を効果的に使えば、言葉に勢いが生まれて、気持ちがぐっと伝わりやすいです」

  2. お願いをするとき
    何をどうしてほしいのか、分かりやすく伝えること。目上の人にお願いする場合は、恐縮し過ぎてまわりくどくならないように注意。また、どうしてそれをその人にお願いするのか理由を添えると、「頼りにされているんだな」と感じて、相手はうれしくなる。
    上司にプロジェクトの進め方について教えてほしいときに送るチャット例

    来月から始まる新規のプロジェクトについて、
    ひと通り進め方を相談させていただけますか。
    〇〇部長は、同様のプロジェクトをたくさん率いてきて、経験が豊富なので、
    ぜひスムーズな運営のコツをうかがいたいです!

    むらかみ「学ばせてくださいという謙虚な姿勢でお願いすることが大切です。その際、『相談させていただきたいのですが、ご了承いただけますでしょうか』などと二重に尋ねると、まわりくどい感じがして伝わりにくくなります」

  3. 謝罪をするとき
    謝罪の文面は潔さと具体的さが肝心。言い訳をせずしっかり謝って誠意を見せ、起こったトラブルをどう解決するのか、その手段や方法を提示すること。そうすることで、信頼につなげることができる。状況によっては、電話できちんと話した方が良い場合も。
    発注ミスで、先方の希望の期日までに商品が届かなかったときに送るメール例

    この度は私の確認ミスにより、多大なご迷惑をおかけしてしまい、
    申し訳ございません。

    取り急ぎ、なるべく早いタイミングで納品ができるよう、
    発送元に交渉をいたしました。

    〇月〇日〇時には、お手元に届く予定です。

    今後、発注時には担当者以外のスタッフとの書類のダブルチェックを徹底し、
    このようなことが二度と起きないよう、誠心誠意努めて参ります。

    今回は本当に申し訳ございませんでした。

    むらかみ「謝罪は気が重いものですが、謝罪すること自体は未来につながる前向きなアクションです。逃げずに堂々と誠意を見せれば、今後の良好な関係につながるはずです」

  4. 申し出を断るとき
    人から何かを依頼された場合は、なるべくお受けするのが好ましいが、安請け合いすることで迷惑をかけてしまうようなことがあるならば、丁重にお断りを。その場合、代替案を出すのがベスト。大切なのは、次につながるような断り方をすること。
    上司から急ぎで書類をつくってほしいと頼まれたときの返信チャット例

    あいにく、現在〇〇の案件で手がふさがっています。
    来週以降とりかかれますが、問題ありませんか。
    急ぎの場合は、△△さんに引き受けてもらうほうが確実だと思います。
    ご確認のほど、よろしくお願いします。

    むらかみ「相手からの依頼を断る際には、断らなければならない理由をやわらかく伝え、代替案を出すこと。具体的な代替案を示すことが、次回にまたお願いしようという信用につながります」

ビジネスパーソンが陥りやすいNGチャット例4選を、達人が直接添削!

ビジネスパーソンが陥りやすいNGチャット例4選を、達人が直接添削!

次に、「上司からの仕事の依頼を断る」という難しいシチュエーションで、ビジネスパーソンが送りがちなチャット文のNG例4つを用意。むらかみさんに実際に添削してもらいました。

NGチャット例 ①

ビジネスパーソンが陥りやすいNGチャット例4選を、達人が直接添削!

NGポイント:冷たすぎる。

むらかみ「beforeの文章は、一方的に自分の都合を押し付けているかのような冷たさを感じます。『どうやったら成果につながるか』『問題を解決できるか』を考え具体的に提案すると、『仕事ができる人』という印象につながります」

NGチャット例 ②

ビジネスパーソンが陥りやすいNGチャット例4選を、達人が直接添削!

NGポイント:まわりくどすぎる。

むらかみ「beforeの文章は、一文が長く、言いたいことがよく分かりません。頼りない人、自分の意見をしっかり言えない人など甘く見られないためにも、引き受けられない理由をしっかり伝えた上で、代替案を出しましょう」

NGチャット例 ③

ビジネスパーソンが陥りやすいNGチャット例4選を、達人が直接添削!

NGポイント:丁寧すぎる。

むらかみ「beforeの文章は、『大変恐縮ではございますが』『お手数をおかけしますが』、『お願い申し上げます』『どうぞよろしくお願いいたします』などと、同じ意味の言葉が繰り返されているほか、敬語が重複しているため、まわりくどさを感じます。上司に対して恐縮し過ぎると、かえって不自然な印象を与えることもあるため、謝罪や丁重な言葉は控えめにして、まずは言いたいことがしっかり伝わるよう心がけましょう」

NGチャット例 ④

ビジネスパーソンが陥りやすいNGチャット例4選を、達人が直接添削!

NGポイント:他の人のせい(他責)にしている。

むらかみ「beforeの文章では、できない理由を他の人のせいにしている上、解決策も書かれていません。これでは問題解決にならず、業務に支障が生じてしまいます。『来週以降、着手できると思います』と具体的な解決策を示し、上司の指示を仰ぐことで信頼が得られます」

ちょっとした言葉の使い方、伝える内容で、相手が受ける印象が大きく変わるのだなと実感しました。

いきなり100点満点の文章をつくることを目指さなくて良いですから、日々、多くの人とのやりとりに気を配って、勉強していきましょう。相手のことを考えたコミュニケーションの経験を重ねることで、少しずつ自分なりの型ができてきますよ。

伝えたい気持ちを整理し、ぬくもりを添える。達人が語る手紙のチカラ

むらかみさんから、文章でのコミュニケーションに苦手意識を持つビジネスパーソンに向けて、一筆箋でメッセージをいただきました!

むらかみさんから、文章でのコミュニケーションに苦手意識を持つビジネスパーソンに向けて、一筆箋でメッセージをいただきました!

最後に、むらかみさんの思う手書きの手紙の魅力について教えてください。

大きくは2つありますね。

  1. 気持ちがきちんと伝わる
    同じ「ありがとう」「おめでとう」「うれしい」などの気持ちでも、短くていいので手書きにして伝えると、相手の感じ方は大きく変わります。「手書きの文字にぬくもりを感じる」「丁寧に接してくれた」など、言葉以上のものをくみ取ってくれるんです。
  2. 記憶に残りやすい
    「LINEやメールで交わした内容はすぐに忘れてしまいがちだけど、もらった手紙は半年前のものでもすぐに思い出せる」「手紙を読むと、当時のことを鮮明に思い出す」という人は、実は大勢います。五感が刺激されるから、相手の心を揺さぶりやすいんですよね。
    豆知識:手紙にぬくもりを添えるひと工夫
    • 季節にまつわるはがきや便箋を選ぶ(春なら桜、秋なら紅葉、など)
    • 相手が好きなモチーフやデザインのはがき・便箋を選ぶ(猫好きの人には猫のイラスト入りのものを選ぶ、など)
    • 普通の切手ではなく、記念切手、デザイン切手を使う(季節限定の切手、キャラクターものの切手、 など)
    • 相手に合わせてペンを変える(男性には力強い筆跡のもの、女性には上品な筆跡のもの、など)
    • 季節にまつわるはがきや便箋を選ぶ(春なら桜、秋なら紅葉、など)
    • 相手が好きなモチーフやデザインのはがき・便箋を選ぶ(猫好きの人には猫のイラスト入りのものを選ぶ、など)
    • 普通の切手ではなく、記念切手、デザイン切手を使う(季節限定の切手、キャラクターものの切手、 など)
    • 相手に合わせてペンを変える(男性には力強い筆跡のもの、女性には上品な筆跡のもの、など)

確かに、オンラインや対面でのコミュニケーションにはない価値が、手紙にはある気がしますね。

はい。「自分は本当は何を伝えたいんだろう?」「相手にどんなことを感じてもらいたいんだろう?」といったことを考えて、書き出して、気付く。手書きすることで、そうした自分の気持ちの整理、考えるステップが自然にできるんです。このような利点をビジネスやオンラインでもうまく応用して、相手とのコミュニケーションはもちろん、自分自身も良い方向へ導いていってほしいですね。

手紙の達人が教えるニューノーマルの心得四箇条

(掲載日:2021年2月19日)
文:佐藤葉月
編集:エクスライト

ビジネスコミュニケーションでも安心して利用できる「+メッセージ(プラスメッセージ)」

+メッセージ(プラスメッセージ)

ソフトバンク、ドコモ、auが提供する、電話番号だけでメッセージを送受信できるメッセージングサービス。テキストと絵文字に加え、写真、動画、500点以上のオリジナルスタンプなどを使ってコミュニケーションを楽しめます。また、電話番号で登録するため、なりすましや乗っ取りの心配もありません。仕事の付き合いや目上の人とのコミュニケーションにも、安心してご利用ください!