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初心者でもスマホで撮れる幻想的な一枚。プロが教える水中撮影テクニック

水中写真はスマホが大正解! プロ写真家が教える撮影テクニックから防水対策まで

幻想的な光や色とりどりのサンゴにお魚。海や川などの水辺に行ったとき、綺麗な水中の風景を写真に収めたくても、ハードルが高いと思っていませんか? 持ち運びが簡単で、カメラ性能に優れたスマホは、水中写真と相性バッチリ。撮影方法や防水ケースなどポイントを押さえれば、誰でも気軽に撮れてしまうものなのです。写真家の横田裕市さんに、スマホを使った水中での撮影方法を教えてもらいました。

横田裕市(よこた・ゆういち)さん

教えてくれた人

横田裕市(よこた・ゆういち)さん

1985年、福島県郡山市生まれ。2009年よりプロの写真家として活動を開始。主に国内外の風景を撮影。観光誘致、地方創生関連の撮影の他、記事執筆やSNS発信をはじめとしたWebや書籍での案件を手掛ける。

本格的なカメラがなくても、スマホで美しい水中写真が撮れる

高価なカメラがなくても、スマホで美しい水中写真が撮れる

旅取材で撮影を担当することが多いという横田さん。海や川などの水辺に行くことがあれば、水の中の景色を写真に収めることもしばしば。そんな時に活用しているのが、ずばりスマホなのだそう!

横田さん 「カメラ性能が上がっている最近のスマホなら、十分なクオリティの水中写真が撮れるんじゃないかと気付いて、実際にGoogle Pixelを使い始めたらその通りでした。専用の機材をそろえるとかなり値が張りますし、水中撮影を仕事の専門領域にでもしなければ使用頻度も低い。スマホは気軽に撮影できますし、水中で動くには身軽なほうがいいので、水中撮影に最適なアイテムだと思います」

普段の生活では見ることがない水の中の景色。自然が作り出す幻想的な世界を写真を通してながめることができるのが、水中写真の大きな魅力です。

こちらは千葉県館山市の沖ノ島で撮影したサンゴ

千葉県館山市沖ノ島のサンゴ

ウミガメとキラキラした水面が印象的なショットもスマホで撮影!

ウミガメとキラキラした水面が印象的なショット

横田さんがハワイで撮影した魚の群れ

ハワイの海

横田さん 「山に行って川の水がとっても澄んでいると、その中を覗いてみたくてスマホのレンズを向けてみます。そのまま見ていてももちろん綺麗なんですが、透明な水中の世界に魚が泳いでいたり、光が差し込んだり反射していたり。そういう非日常の風景が写真に収められると、とてもうれしいですね」

国内外問わず、さまざまな場所で水中写真を撮影してきた横田さん。ロケーション選びで大事なことはあるのでしょうか?

横田さん 「シュノーケリングの場合は、『有名なスポット=ベストな撮影スポット』と考えて良いでしょう。水中撮影には海の透明度が高い方がいいです。魚が多かったり、サンゴがきれいだったり、それぞれの海域で特徴がありますが、関東近郊だと千葉県の沖ノ島や静岡県の伊豆付近が有名ですね。ちなみに初心者の方がシュノーケリングをする場合は、ツアーに参加するのがおススメ。インストラクターがいれば何かあった時も安心ですし、良い撮影スポットも教えてくれるはずです」

高価なカメラがなくても、スマホで美しい水中写真が撮れる

まずは防水ケースをゲット。ポイントはシャッターの押しやすさ

大切なスマホを守る防水ケースはマストアイテム。ECサイトなどで検索するとさまざまなタイプがヒットしますが、横田さんのおススメはストラップ付きのビニールケース。それもある重要なチェックポイントがあると言います。

横田さん 「基本的に水中ではスマホの画面操作ができないので、シャッターを押すのが側面のボタンになるんです。なので防水ケースを選ぶ際には、スマホを入れたときに側面のボタンが押せることが絶対条件になります」

横田さんが水中写真の撮影で愛用しているスマホの防水ケース

横田さんが水中写真の撮影で愛用しているスマホの防水ケース

横田さんが愛用している防水ケースは、側面が柔らかく、ボタンがすんなり押せる仕様。さらに、ケース下部の青い部分を押すことで袋の中が真空になり、レンズの部分にもケースがぴったり密着してよりクリアな画面で撮れるのも重宝しているポイントだそう。

さまざまなタイプの防水ケース

さまざまなタイプの防水ケース

また、防水ケースを入手したら、海で使う前にお風呂などで必ずテストしましょう。ストラップは水中で外れてしまうこともあるので、1箇所だけでなく複数箇所に付けておいたほうが安心です。

横田さん 「僕の失敗談として、いきなり海で使って破れたこともあるし、一箇所しか付けていなかったストラップが外れて、スマホが海の底へ沈んでしまったことも……。ちなみに最近のスマホは防水機能も上がっているので、川では裸のままレンズ部分だけ沈ませて撮ることもありますよ」

とにかく枚数で勝負! 試してみたいシーン別撮影テクニック

とにかく枚数で勝負! 試してみたいシーン別撮影テクニック

では実際に撮影のコツを聞いていきましょう! まずは基本の設定や撮り方を教えてもらいます。

撮影はオートで連写&RAW形式で

設定はあらかじめ側面のボタンでシャッターが切れるようにしておきましょう。また機種にもよりますが、画像形式をRAWにすると、カメラのセンサー情報をそのまま記録するため、画質劣化を抑えながら、撮影後の明るさや色味の調整を行えます。

  • iPhone はiPhone12以降のPro、Pro Maxシリーズで対応。RAW形式での撮影は、画像に関するより多くの情報を保持するため、ファイルサイズが大きくなる
RAW形式の設定画面 ※Google Pixelの場合

RAW形式の設定画面 ※ Google Pixel の場合

そして撮影方法の基本はずばり「オート設定で連写する」こと! 水中では画面操作ができないため、フォーカスも明るさもオートにお任せ。生き物や波や光など、被写体が動くものばかりなので、連写でたくさんのカットを撮影することで奇跡のワンショットを狙います。

小さく素早く動く魚にピントを合わせるには、ひたすら連写!

小さく素早く動く魚にピントを合わせるには、ひたすら連写!

横田さん 「海の中にいるのは基本的には日中の明るい時間だと思うので、明るさの心配はありません。また水中ではフォーカスもいじれないので、被写体を見つけたら自動認識頼り。プランクトンや水の泡にピントが合ってしまうこともあるので、水の透明度は大切ですね。地上での撮影のようにじっくりとアングルを練るのは難しいですから、両手でしっかりスマホを構えてとにかく連写でシャッターを切りまくりましょう」

水中では両手でしっかりスマホを構えて

水中では両手でしっかりスマホを構えて

Google Pixel には水中での撮影に適した機能も

Google Pixel を使って水中で撮影する際、カメラの詳細設定で「水中での写真 / 動画撮影」をオンにすれば、色合いを適正に補正してくれます。水中では、撮影した写真や動画が青や緑がかる傾向がありますが、この機能によって、水中でも正確で豊かに色彩表現された写真や動画を撮影できます。

また、Google レンズを使えば、水中の生物の名前や特徴がすぐ分かるので便利です。

  • 水中モードの対応機種は Google Pixel 9Google Pixel 9 ProGoogle Pixel 9 Pro XL

サンゴやお魚、鏡面ショットなど…シーン別水中撮影テクニック

ここからは横田さんの作品を見ながら、いくつか細かい撮影テクニックを紹介します。

①サンゴ礁の多彩な表情を捉える
サンゴ礁の多彩な表情を捉える
サンゴ礁の多彩な表情を捉える

同じサンゴでも撮り方を工夫すると、印象が全く変わってきます。上のカットは被写体にぐっと寄ってズームで撮影したもの。下のカットは超広角で撮影し、海の中の奥行きある景色を表現しました。

横田さん 「接写のほうはサンゴの独特な表情に着目しました。超広角は海中庭園のようなイメージで、画面の上半分が海、下半分がサンゴ礁という構図もポイントです。ちなみにサンゴ礁は動かないので、水中写真初心者さんに特におススメ。周りに魚がいることも多いので、絶好の被写体ですよ」

②太陽が出たらキラキラ水面チャンス
太陽が出たらキラキラ水面チャンス

太陽の光が降り注いだ瞬間、水中の世界はより幻想的になります。うっとりするほどキラキラ輝く美しい水の表情を写真に収めましょう。

横田さん 「これは小笠原諸島の南島にある扇浜という場所で、太陽が出た瞬間にスマホのレンズだけを海に沈めて撮影したものです。浅い場所なので水面と海底が近く、砂の白い色に太陽光が反射してとってもきれいな光景でした」

③水面が鏡になる反射ショット
水面が鏡になる反射ショット

水面近くでシャッターを切ると、魚や人間が水面に写って鏡面反射しているおもしろい構図に。

横田さん 「ハワイのモロキニ島というところで、偶然広いスペースに一匹だけ魚が泳いでいたので、これは良い!と必死に連写して撮れたショット。水の透明度が高い場所だと撮りやすいです。画角に水面がちょっと入るように、カメラを少し手前に傾けて撮ると、このような写真が撮れます」

④地上と水中のスプリットショット
地上と水中のスプリットショット

画面の上半分は地上、下半分は水中という摩訶不思議な景色が押さえられるのは写真ならでは。レンズが小さいスマホでは難易度が高いものの一度は挑戦してみたい構図です。

横田さん 「これも連写の賜物です。レンズの半分だけを水の中に浸けて撮るのですが、スマホのレンズは小さい上に、波は常に動いているので、ちょうど半分になる奇跡的なタイミングを狙います。ただ撮れるとすごく面白いので、ぜひチャレンジしてみてください」

ちなみに、連写の代わりに Google Pixel なら「トップショット」、iPhone なら「Live Photos」という、シャッターを切った前後の数秒の映像を保存してくれるモードで撮ったり、動画として撮影したりしてその中から画像として切り出すのもおススメだそうです。

画像編集でリアルな水中世界に近づけよう

本来の色味と違う風に撮れてしまったり、ぼんやりとした印象になってしまったりしたら、画像編集で美しく仕上げましょう。最近のスマホならパソコン顔負けの編集ができます。横田さんがよく使うのは次の2つだそう。

①色温度の調整

青みが強すぎるとサンゴ礁や魚の鮮やかな色彩がなくなってしまいます。そんな時に使うのが色温度です。

(左から)色温度の調整前と調整後の水中写真
(左から)色温度の調整前と調整後の水中写真

(左から)色温度の調整前と調整後の水中写真

横田さん 「水中写真では必ず調整します。この写真の場合は海底まで青っぽくなってしまっているので、青みを下げることでピンクっぽいサンゴの色など、自然に近い色味を出しています」

②明瞭度の調整

被写体の姿をよりクリアにしてくれるのが明瞭度。Google Pixelだと「ポップ」、iPhoneだと「シャープネス」という項目です。

横田さん 「僕は魚の柄など、被写体の細かい部分までを見せたいので、明瞭度を上げてくっきりとした印象にすることが多いです。ただ、やりすぎると不自然になるので注意しましょう」

横田さんの素敵な作品を見て、皆さんも水中写真を撮ってみたくなってきたのではないでしょうか。ただ、良い写真を撮ることも大切ですが、何よりも安全が一番大事。撮影に夢中になりすぎて沖に流されてしまったり、怪我をしたりすることのないように気を付けましょう。

横田さん 「シュノーケリングに自信がない場合は、ツアーに参加するか慣れた人と行くのがいいと思います。沖に流されると本当に危ないので、常に自分の位置を確認するようにしましょう。浜から海に入る時は、干潮時のほうが水深が浅くておすすめ。最近はGoogleのGeminiに、干潮で天候も良いタイミングを相談することもありますよ」

海に入るときは、体調を整えるのも忘れずに。今回紹介した事前準備やテクニックを参考に、スマホを片手に水中世界を撮影してみましょう。

(掲載日:2025年7月23日)
文:井上麻子
編集:エクスライト