
2025年10月、愛知県北西部の尾張地方に位置する一宮市は「防災LINE」の運用を開始しました。市民が普段使うLINEで、防災情報の受信や避難所チェックイン、安否連絡などを行える一宮市の防災サービスです。行政の “届けたい” と、市民の “使いやすい” をどのように両立させたのでしょうか。
使い慣れたLINEで、もしものときもスムーズに

一宮市は、防災DXの取り組みの一環として、市民向けに「防災LINE」を提供しています。市民が普段から使っているLINEアプリを活用し、防災情報の受信や避難所チェックイン、安否連絡などをまとめて行えるように設計されています。新しいアプリの使い方を覚える必要がなく、誰でも迷わず使える点が特長です。まずは、この防災サービスがどのように活用できるのかを聞きました。

話を聞いた人
ソフトバンク株式会社 次世代戦略本部 第4部 推進2課
関根 康博(せきね・やすひろ)
事業責任者として、プロジェクト全体を統括。

話を聞いた人
ソフトバンク株式会社 次世代戦略本部 第4部 推進2課
和田 年弘(わだ・としひろ)
一宮市向けのプロジェクトマネージャーとして、防災LINEの構築をリード。
メニューの中では、さまざまな防災機能が使えるようになっているのですね。
和田 「避難所や避難場所の位置や危険箇所を確認できる防災マップ、防災用品のチェック、マイ・タイムライン(防災行動計画)の作成など、平時から使える機能をまとめています。日常の延長で自然に防災を意識していただけるよう設計しています」


災害時には、どのように活用されるのでしょうか。
関根 「災害が発生すると、避難に必要な情報がLINEのメッセージとして届きます。普段使っているLINEトーク画面に表示されるので、状況が一目で把握できます」
和田 「例えば、避難時には避難所に掲示されたQRコードを読み取るだけで受付が完了します。防災LINEと一宮市ポータルサイト『イチ・デジ』を事前に連携しておくことで住所や氏名などの基本情報が自動で反映され、一から入力する必要がなくなり、ワンスオンリーを実現します」
一宮市ポータルサイト「イチ・デジ」とは
イチ・デジは、一宮市が提供するポータルサイトです。住所や氏名などの基本情報を登録しておくことで、市のさまざまなオンラインサービスを一つのIDで利用できる仕組みです。防災LINEとも連携しており、避難所での受付などに必要な情報を事前に登録しておけるため、災害時の手続きがスムーズになります。
災害の現場課題から始まった、一宮市の防災DX

約38万人の人口を抱える一宮市で防災LINEが導入された背景には、災害対応の現場で直面していた課題がありました。また、平時でも防災情報をいかに確実に届けるか、さらには一宮市ポータルサイト「イチ・デジ」を防災に活用することも課題として挙げられていました。そこで、防災LINEが導入されるまでの背景や課題について、一宮市の担当者と、自身も市内在住で、市民としての視点を生かしサービス改善にも関わっているソフトバンクの担当者に話を聞きました。

話を聞いた人
一宮市 危機管理課
下前 剣人(しもまえ・けんと)さん
防災LINEの市内普及・サポートを担当。現場で市民と向き合う立場から、使われやすい防災サービスづくりに携わる。

話を聞いた人
ソフトバンク株式会社 公共事業推進本部 第二事業統括部 中日本自治体DX推進室
安田 数英(やすだ・かずひで)
一宮市のサポート担当。自身も一宮市在住で、市民としての視点を生かし、サービスの改善提案にも関わる。
これまでの災害対応の中で、特に課題だった点を教えてください。
下前さん 「例えば、避難所では紙で受け付けした後、避難者の情報を職員が手作業で集計する運用を想定していました。受付は混雑で長い列ができ、市民にも職員にも大きな負担が予想されました」
防災情報の伝え方についても見直しが必要だったんですね。
下前さん 「そうなのです。災害情報をどう確実に届けるかも大きな課題でした。スマートフォンのように日常的に使う手段で情報を届けたいという思いがありました」
そうした課題に対して、ソフトバンクとはどのように検討が進んでいったのでしょうか。
安田 「私は一宮市の市民でもあるのですが、市民の安全につながる仕組みを、無理なく使える形で届けたいという思いがありました。その思いをデジタルでどう実現するかを一宮市さんと一緒に検討していきました。行政の “届けたい” と、市民の “使いやすい” を両立することが今回のテーマでした」
市民に使いやすい防災サービスを届けるための取り組み
防災LINEの導入に伴い、市民に広く知っていただくための取り組みも行われました。広報施策としてYahoo!広告(ヤフー広告)を活用したり、ケーブルテレビなどと連携して防災LINEキャンペーンを展開したりするなど、多様な手段で市民に情報を届けています。また、ソフトバンクショップと連携したスマホ教室では、操作に不安のある方にも丁寧にサポートを行っています。

市民の方への普及という点では、どのような取り組みが効果的でしたか。
下前さん 「スマホ教室で実際に操作していただく機会は大変好評でした。『平時から有事までオールインワンで使用できる』といった声も多く、ご高齢の方々にも防災LINEの良さを知っていただくきっかけになりました」
そうなんですね。実際に防災LINEを使っている市民の皆さんからは、どんな声が届いていますか。
下前さん 「『LINEなら分かりやすい』『QRコードで受付できると安心』という声が多くありました」
防災LINEを市民の方に届ける中で、どんな手ごたえを感じましたか。
安田 「私は一宮市で暮らしているので、市民として “こうだったら使いやすい” という視点で改善提案を行う場面もありました。実際に周囲から『これなら使ってみたい』という声も聞き、サービスが生活になじみ始めている手ごたえを感じています」
市民の声を受けて、一宮市として今後どのように進めていきたいと考えていますか。
下前さん 「市民の方々が日常的に活用できるよう、防災LINEを市の他のサービスとも連携させていきたいと考えています。例えば、防災だけでなく健康や子育てなどの分野ともつながれば、より利用シーンが増え、自然に使っていただける存在になると思います。今後も、市民のニーズを反映しながら、防災LINEを育てていきたいと考えています」
一宮市とソフトバンクが重ねた取り組みは、“日常で続けられる防災” を目指す新しいモデルとして広がりつつあります。
(掲載日:2026年1月8日)
文:ソフトバンクニュース編集部




