
11月15日に東京で開幕する「東京2025デフリンピック」の自転車競技(ロード)に、ソフトバンクの田中航太が日本代表として出場します。競技を始めたきっかけや、仕事との両立、本番への意気込みについて、話を聞きました。
目次

ソフトバンク株式会社 コンシューマ事業推進統括 プロダクト本部 プロダクトマーケティング部
田中 航太(たなか・こうた)
「一般社団法人日本ろう自転車競技協会」に所属。東京2025デフリンピックでは、「1000mスプリント」「30kmポイントレース」「100km個人ロードレース」の3つの種目に出場予定。
トライアスロンから自転車競技へ。憧れのデフリンピック出場を目指してきた5年間
学生時代はトライアスロンに打ち込んでいた田中さん。水泳・自転車・マラソンと、複数のスポーツをこなすアスリートから自転車競技(ロード)に専念するようになったのは、社会人になった頃に知った、デフリンピックが日本開催されるというニュースがきっかけだったそうです。
自転車競技を始めたきっかけを教えてください。
田中 「大学でアスリートとして活動していたので、いつかデフリンピックに出たいと思っていました。その後、2025年にデフリンピックが日本で開催されると知り、明確な目標に変わりました。トライアスロンはデフリンピックの競技種目にないので、水泳・自転車・長距離走の中でいちばん得意だった自転車に集中することにしたんです。ちょうど社会人になりたての頃でした」
そこから、自転車競技でのデフリンピック出場に向けて、本格的に取り組むようになったんですね。
田中 「はい、日本開催のニュースを知ったとき、自分にとっても特別な大会になると感じ、本気で挑戦したいと思いました。自転車競技に専念し始めてからもう5年目、選手歴としては長い方ですが、今の代表チームにはもっとベテランの方も多く、まだまだ学ぶこともたくさんあります」

代表に選ばれたときは、どんな気持ちでしたか?
田中 「今年の2月に日本ろう自転車競技協会から内定をいただき、正式に決まったのは9月でした。2月の時点で『メダルを取りたい』という目標を定め、そこから一歩ずつ積み上げていこう、と覚悟を決めて練習してきました」
その覚悟の裏には、国際大会での経験もあったそうですね。
田中 「昨年ポーランドで開催された世界選手権に出場しました。スプリントで8位入賞、ポイントレースは11位、ロードは13位という結果でしたが、上位との差はそれほど大きくないと感じました。世界を相手に戦えたという実感と、『1年頑張れば、追いつける』という手ごたえを支えに、デフリンピックに向けて打ち込んできました」
瞬発力と戦略の勝負。一瞬の駆け引きが見逃せない自転車競技(ロード)
東京2025デフリンピックにおける自転車競技(ロード)は、「1000mスプリント」「30kmポイントレース」「100kmロードレース」「25kmタイムトライアル」の4種目。田中さんは「1000mスプリント」「30kmポイントレース」「100kmロードレース」の3種目に出場します。それぞれに異なる戦略と見どころがあるそうです。
- スプリント
トーナメント形式で、1,000mを1対1で競う。トーナメントの組み合わせは予選で走る200mのタイムを元に決定 - ポイントレース
1周500mのコースを60周走り、4周ごとに設定されたポイントラインを通過した順位により得点が入り(1位5ポイント、2位3ポイント、3位2ポイント、4位1ポイント)、最終的な総得点で順位が確定 - ロードレース
アップダウンがある5kmサーキットを20周、合計100kmを走り、着順を競う - タイムトライアル(田中さんは出場しません)
時間差でスタートし、個人のタイムで順位が確定

それぞれの種目の特徴や戦略のポイントを教えてください。
田中 「スプリントは短い距離で先にゴールした方が勝つ競技で、瞬発力が問われます。一方で、ポイントレースやロードレースは個人戦ではあるものの、国ごとのチーム戦という側面もあります。エースとアシストする人の役割があり、レース中に前に出る人を入れ替えるなど、戦略的な動きが大事になってきます」
駆け引きや連携の面白さがあるんですね。デフリンピック特有のルールはありますか?
田中 「スタートやポイント周回、ゴールなどの合図は旗で視覚的に知らせますが、通常のレースでも行われています。大きな違いは補聴器を外して走ることです。最初は怖かったんですが、練習で補聴器を外してみて、徐々に慣れていきました」
ポイントレースやロードレース中のコミュニケーションはどうしているのですか?
田中 「レース中はハンドルからあまり手を離せないので、アイコンタクトがメインで、あとは片手で簡単な手話をするくらいです。表情や首の動きなどからチームメイトが何を伝えたいか、一緒に練習を重ねる中で理解し合う力を養っていきます」
デフスポーツならではのコミュニケーションにも注目ですね。他に、観戦の見どころを教えてください。
田中 「どの選手がいつアタック(前に出る瞬間)するか、という駆け引きです。集団から一気に抜け出す展開があるので、特定の選手の動き出しのタイミングや、位置取りに注目してもらえたらと思います。一瞬のことなので、見逃さないように注目してくださいね」
楽しいからこそ続けられる。瞬発力を生かした走りで自転車競技の魅力を伝えたい

日々はどのようなトレーニングをしているのですか?
田中 「平日は仕事前の朝4時半に起きて5時から、自宅近くのサイクリングロードなど、自転車トレーニングに適したコースを選んで1~2時間走っています。週末はレースに出場したり、山のある場所まで少し遠出して長時間走ったりしています。週2回の筋トレや、食事のコントロールも行い、今年の2月にデフリンピック日本代表の内定をいただいたときから、体重を10kgも落としました」
自転車とトレーニング漬けの毎日ですね。続けられているのは、自転車そのものの魅力があるからですか?
田中 「自転車は想像以上にいろいろなところに行けるんです。もともときれいな景色を見るのが好きで、自転車でそうした場所に行き、走りながら楽しめるのが魅力ですね。あちこちを走っているうちに体力がついて、徐々にレースに出るようになりました」
自身の活躍を通じて、自転車競技人口の増加にもつなげたいと考えているそうですね。
田中 「そうなんです。コロナ禍ではロードバイクに乗る人が増えましたが、最近は自転車の価格上昇などの影響なのか、競技人口が減っている印象です。『まずは楽しんで乗ってみてほしい』と思い、レースやさまざまな機会を通して伝えていきたいです」

本番に向け、今の気持ちを教えてください。
田中 「実は先日、合宿中にけがをしてしまうアクシデントがありました。それでも逆境をはねのけ、積み重ねてきたことを出し切れるよう、これまで以上に力を入れて準備を進めています。私の持ち味は瞬発力を生かした走りなので、特にスプリントとポイントレースに注目してもらえたらうれしいです。アタックや、そのタイミングでの駆け引きなど、後方から一気に追い抜く展開にもぜひ注目してください」
応援してくれる方へメッセージをお願いします!
田中 「デフリンピックが日本で開催されるのは初めてで、私にとっても特別な大会です。たくさんの方々から応援していただけることへの感謝を胸に、メダルを目指して全力でがんばります!」

田中航太選手 出場スケジュール
以下の日程で出場します。デフリンピックの競技は、事前申し込みなく、どなたでも無料で観戦できます。
| 日付 | 競技名 | 場所 |
|---|---|---|
| 11月17日(月) 9:00〜15:30 |
1000mスプリント | 日本サイクルスポーツセンター (静岡県) |
| 11月18日(火) 14:00〜15:00 |
30kmポイントレース | 日本サイクルスポーツセンター (静岡県) |
| 11月22日(土) 9:00〜12:30 |
100kmロードレース | 日本サイクルスポーツセンター (静岡県) |
(掲載日:2025年11月7日)
文:ソフトバンクニュース編集部





