
ソフトバンクの社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」から誕生したumamill(ウマミル)株式会社が、12月15日に事業戦略に関する説明会を開催しました。日本の人口減少に伴う食品市場の縮小という深刻な課題に対するumamillの事業概要や戦略が紹介されました。
海外進出に挑む日本食メーカーと世界のマーケットをマッチング
説明会では、umamill 代表取締役 CEOの松原壮一朗氏より、日本の食を取り巻くさまざまな課題と、海外バイヤーと日本メーカーをつなぐ日本食輸出B2Bプラットフォーム「umamill」の事業概要を紹介。

「日本の人口の減少に伴い、食の消費の縮小が避けられない状況の中、アジアを中心に世界の人口は増加しています。自由貿易圏の拡大によって輸出のチャンスは広がる一方、輸入が増え、国内市場に海外食品がますます流入しています」と現状を示しました。海外の日本食レストラン数は17年間で約7.8倍に増加。外国人が好きな食事のカテゴリでも日本食は1位に選ばれ、検索キーワードでは「ramen」「warabimochi」など、多様な日本食ワードの検索数が右肩上がりで増えていることを挙げました。

一方、日本の農林水産物・食品の輸出額は、政府が掲げる「2030年に目標5兆円」に対してまだ道半ばであり、「世界で急拡大する日本食需要に、日本はまだ乗り切れていない。世界のマーケットに挑戦することが非常に重要」とコメント。
日本食の輸出の伸びには3つの壁が立ちはだかっています。1つ目は国ごとに異なる複雑な輸入規制。2つ目に、膨大な貿易書類の作成負担。そして、3つ目は小口輸送では物流費が割高になり、商品の単価に対して価格が合わなくなるという点です。特に単価の低い食品においては、「販売価格に対して物流費の占める割合が高く、コンテナを効率よく埋めなければ、海外での販売価格を押し上げてしまう」と問題点を指摘しました。
国内取引と同じ環境のまま海外市場へ進出
こうした状況に対し、umamillが提供しているのが日本の食品を輸出するB2Bオンラインモールと、エクスポーター(輸出商社)機能を組み合わせたサービスです。

日本の食品メーカーは、umamillのウェブサイトから日本語で自社商品の情報や画像、国内の卸価格、基本情報を登録するだけ。登録された情報が翻訳され、そのまま海外バイヤー向けの商品データベースとなり、海外のインポーターはプラットフォーム上から商品サンプルを依頼することができます。
成約後は、umamillが日本国内で商品を円建てで買い取り、貿易条件の調整やインボイス作成、物流手配など専門性の高い業務を一貫して代行します。メーカー側は国内取引とほぼ変わらないフローで輸出が完了する点が大きな特長です。
現在、umamillのプラットフォームには約1,900社が出展し、取り扱い商品は6,800SKU(Stock Keeping Unit:在庫管理上の最小単位)にまで拡大。2028年には、取り扱い商品が1万SKUを超える、日本の食品の輸出において取り扱い商品数がNo.1の供給ベンダーを目指しています。初期費用・月額基本料・輸出成約手数料は全て無料。費用が発生するのは、海外バイヤーからサンプル依頼があった場合の「サンプル輸出料」1万円のみという、食品メーカーが挑戦しやすい設計です。

松原氏は、世界の流通構造も紹介しました。海外には「日系マーケット」「アジアンマーケット」「現地メインストリーム」の3つの主要なマーケットが存在し、特に現地メインストリームでは非日系インポーターが強い影響力を持っています。近年はSNSの拡散効果により、日本食を扱う非日系インポーターが増えており、これが輸出拡大の新たなチャンスになっていると語りました。

松原氏は、「非日系インポーターに取り扱ってもらうことが、今後の日本食輸出にとって大きなチャンス」とした上で、「非日系インポーターは、既存の日系マーケットと競合しない商品を求めますが、日本のメーカーにとっては与信やブランド毀損リスクへの懸念から、直接の口座開設が難しいのが実情。そこで、ソフトバンクのグループ会社として信用力とIT基盤を背景に、umamillが間に入って両者をつなぐ役割を担います。双方にとって納得度の高い商流を設計を行い、販路を広げています」と説明しました。
韓国のファッション企業のプライベートブランドで、日本のクロワッサンラスクが採用

説明会では、韓国を代表するファッション企業MUSINSA(ムシンサ)が展開するライフスタイル・プライベートブランド「MUSINSA STANDARD HOME」で、日本のクロワッサンラスクが採用された事例も紹介されました。 岡山県のメーカーが製造するクロワッサンラスクは、層の食感を生かした独自製法が特長です。umamillのオンラインモールに出展されていた商品に、韓国のインポーターが関心を示したことをきっかけにプロジェクトが始動しました。

海外営業を担当するumamill 海外営業部 古川量一氏からは、プライベートブランド化を実現するまでに取り組んだ3つのポイントが紹介されました。
「競争力ある価格を実現するため輸送ルートの最適化を図り、MUSINSAのブランドに合わせたマット調の専用パッケージを共同開発。さらに、日本から韓国の店頭に並ぶまで1〜1.5カ月かかる実情を踏まえ、メーカーと協力して輸出向けの賞味期限の延長にも取り組みました。こうした商品・物流・デザインの最適化によって、現地での販売が実現しました」
最後に松原氏は、「アジアの国々が食品のグローバル戦略を加速させる中で、日本の食品も “質が良い” だけでは競争力を発揮できません。海外向けにコスト構造から設計された商品づくりを支え、商流をシステムというエンジンで回していくことが、私たちの使命だと考えています」と述べ、プライベートブランドやOEMのプロジェクトをさらに広げていく方針を示しました。
関連プレスリリース
- 日本食輸出プラットフォーム「umamill」の取り扱い商品が、韓国大手ファッション企業のプライベートブランド「MUSINSA STANDARD HOME」で採用)(2025年12月15日 umamill株式会社
日本食輸出B2Bプラットフォーム

海外バイヤーが利用する日本食に特化したB2B輸出プラットフォーム。商談や輸出可否の判断、通関などの貿易実務はumamill株式会社が行うため、日本の食品メーカーは国内バイヤーとの取引と同様の手続きで、商品を海外に輸出することが可能です。
(掲載日:2025年12月22日)
文:ソフトバンクニュース編集部




