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松本春野さんが描いた “まさよしくん” の魅力。絵本 『いっちゃんになるとがすいとーと 孫正義ものがたり』の誕生まで

松本春野さんが描いた “まさよしくん” の魅力。『いっちゃんになるとがすいとーと 孫正義ものがたり』が生まれるまで

ソフトバンクグループ代表 孫正義の幼少期から青年期のエピソードをもとにして描いた物語『いっちゃんになるとがすいとーと 孫正義ものがたり』。

文章を手がけたのは、長年にわたり孫正義を取材してきた作家・井上篤夫さん。そして絵を担当したのは、『バスが来ましたよ』などで知られる絵本作家・松本春野さんです。

なぜ絵本で描こうと考えたのか。制作の舞台裏を聞くと、そこには一人の子どもとしての “まさよしくん” の姿があったそうです。

お話を聞いた人

松本 春野(まつもと・はるの)さん

絵本作家。1984年、東京都生まれ。主な著書は、ボローニャ・ラガッツィ賞 The BRAW Amazing Bookshelf SUSTAINABILITY選出の『トットちゃんの 15つぶの だいず』(原案/黒柳徹子 文/柏葉幸子 講談社)、第4回親子で読んでほしい絵本大賞2位、他三つの賞を受賞した『バスが来ましたよ』(文/由美村嬉々 アリス館)、けんぶち絵本の里大賞アルパカ賞受賞の『おばあさんのしんぶん』(原作/岩國哲人 講談社)、『Lifeライフ』(文/くすのきしげのり 瑞雲舎)など。祖母はいわさきちひろ。

井上 篤夫(いのうえ・あつお)さん

作家。1987年にソフトバンクグループ代表 孫正義に初インタビュー、以来39年余にわたって密着取材を続けている。著書『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社・同文庫)はベストセラーとなり英語・韓国語に翻訳された。『志高く 孫正義正伝 完全版』(実業之日本社文庫)は2010年オーディオブックアワード ビジネス書部門大賞受賞。『フルベッキ伝』(国書刊行会)は2023年日本英学史学会・豊田實賞受賞、ほか著書多数。近著に『一・五代目 孫正義』(実業之日本社)。

「あ、孫さんって、人だったんだ」—絵本作家が感じた驚き

井上さんはこれまで長年にわたり孫さんを取材していらっしゃいました。今回、この絵本で伝えたいと考えたのはどのようなことだったのでしょうか。

井上さん 「ビジネス界で孫社長を知らない方はいませんが、『名前は聞いたことあるけど、どんな人かはあんまり知らない』という人がいるかもしれないなとも感じていました。そういう人たちのために、野山を駆け回っていた一人の少年としての『まさよしくん』の物語を伝えたかったんです。

ビジネスパーソン向けの孫さんの本はたくさんあるけれど、それとは全く違う孫さんの魅力を、子どもたちに届けたいという思いが特にありました。以前、児童書は書かせていただきましたが、より小さな子どもたちに届けるために絵本という形にしたいなと」

絵を担当した松本さんにとって、孫さんはどのような存在でしたか。

松本さん 「お話をいただいたときは、びっくりしました。孫さんは誰もが知る有名人ですが、正直、"記号" のように感じていました。『孫正義さん』として、メディアなどでしか認識していなかったので、実業家、有名人、すごい人というイメージしかなかったんです。

井上先生のご著書をいただいて、『まずこれを読んでみてください』と言われて。読んでみて、初めて一人の人間として感じることができた気がして、『あ、孫さんって、人だったんだ!』って。『幼少期って、そりゃそうだよね、孫さんにもあるよね』と思ったんですね。

当たり前なのですが、家族がいて、友達がいて、夢中になって遊び、悩みながら成長していった一人の少年なんだなと。同時に、私自身がまだまだ何にも知らないんだな、ということにも気付かされました」

人とつながる子どもだった「まさよしくん」

人とつながる子どもだった「まさよしくん」

原作を読み進める中で、松本さんが特に惹かれたのはどのような点でしたか。

松本さん 「制作にあたり、いろいろな実業家を描いた作品も読んだのですが、ほとんどがちょっと “孤高の人” で、何かに突出してるタイプの人、として描かれているんですよね。

けれど、孫さんについて読んだときに『孫さんって他の人とすごく違う』と思ったんです。確かに突出したものがあるんだけれども、『人とつながる力』があるというか。

子ども時代に本当にたくさんのお友だちと手を取り合いながら成長していった。その『人とつながれる』という部分が、もう一つの突出した才能なんじゃないかと思いました」

井上さん 「孫さんっていうと『ナンバーワン』とか『一番』っていうイメージが強いんだけれど、孫さんは『みんなそれぞれ一番になろうよ』という考え方なんです。

僕が特に好きなのは、かけっこのエピソード。走るのが苦手な子に『一緒に走ろうよ』と声をかける。それが孫さんの本質なんだと、僕は取材していてずっと思っていたんです。

そんな『孫社長』ではなくて『まさよしくん』を、言葉で説明するのではなくて伝えるのにも、絵本という形がふさわしかったのです」

松本さん 「絵本は、読む子どもたちが『自分のこと』としてとらえることができないと、伝えることが難しいという面もあります。すごい人、天才少年、ではなく、友達と一緒に走り、笑い、手を取り合いながら成長していく『まさよしくん』なら、子どもたちに『自分と一緒だ』『あの子みたい』って理解してもらえる、と思いました」

大人も子どもも一緒に知っていく、新しい読書体験に

大人も子どもも一緒に知っていく、新しい読書体験に

絵本という形にすることによって、どのような体験を届けたいとお考えですか。

松本さん 「絵本って、やっぱり誰かと一緒に読む、本当に特別なメディアなんです。

普通の本は、一人で読むことが多いものです。しかし絵本は、親子や家族、先生と子どもたちが、同じページを見ながら読むことができます。絵本は、肩が触れ合うくらいの距離で一緒に読むことができて、そこで感情を共有できる。

だからこそ、私はいつも絵本は『コミュニケーションツール』だと思っているんです。ページをめくりながら、『ここはどうしてこうなんだろう』『自分だったらどうするかな』と話すことができる。難しい説明をしなくても、絵を見ながら感じたことを言葉にできる。それが絵本の力です。

これまで、ほとんどは『親は知っていることを子どもに教える』という読書体験だったと思うんです。でもこの絵本は、親も知らない孫さんの物語がある。一緒に知らないことを知っていける絵本でもあるんですよね。

大人が子どもに教えるのではなく、大人も子どもも一緒に驚き、一緒に知っていく。そんな時間が生まれることも、この絵本の魅力の一つだと思います」

そんな絵本だからこそ、井上さんは絵を描く人にも強いこだわりがあったとお聞きしました。

井上さん 「松本さんの絵本『バスが来ましたよ』もそうだけど、あの雰囲気を伝えるのは文章ではなかなかいかない。絵本でいこう、となった時に、担当編集者から松本さんを推薦いただいて、松本さんの絵ならいける、ぜひご一緒したい、と思いました。

この絵本を孫さんのご親戚の方にも読んでいただいたんですが、『あの頃のことが思い出されて、泣きそうになりました』と言ってもらえました。実際に当時を知っている方の記憶にアクセスできるだけじゃない。松本さんの絵には、読む人それぞれの中にある子ども時代の記憶や感情にも触れる力があるんです。その人の中で思い出が鮮やかによみがえる。これは絵の力だと思います。

孫さんの物語でありながら、読む人それぞれの記憶や体験とも重なっていく。それもまた、この絵本ならではの魅力ではないでしょうか」

「いっちゃん」に込めた願い

本書のタイトルにも使われている「いっちゃん」は、九州の方言で「一番」という意味ですね。

井上さん 「子どもには、自分の『一番好き』を探してほしい。好きなものを見つけたら、それが『いっちゃん』になれるということだから。みんなそれぞれ好きなものがあります。それを見つけたとき、人は自然に笑顔になります」

松本さん 「私はいつも子どもたちに『誰かに評価してもらう100点じゃなくて、自分で自分に100点をあげられるものを見つけてね』という話をしています。

絵本の最後の絵で、物語の最初に出てくる『桜のシール』をまさよしくんが持っているんですけれど、この桜のシールは、孫さんが孫さん自身にあげている『はなまる』なんです。

誰かに評価されるためではなく、自分自身が納得できること。自分らしくあったかどうかを、自分で確かめる。最後にジャッジできるのは自分だけなんだよ、ということを伝えていきたいです」

「いっちゃん」とは、誰かと比べて勝つことではなく、自分自身の「好き」や「夢中」に正直に生きること。

お二人の言葉には、子どもたちへ、そしてかつて子どもだったすべての人への静かで強い願いが込められていました。

『いっちゃんになるとがすいとーと 孫正義ものがたり』

文:井上篤夫
絵:松本春野
出版社:実業之日本社

「好き」はこころの力。――孫正義の原点から届く、自分を信じ抜くための物語。
世界が注目する事業家、孫正義。しかし、その輝かしい成功の陰には、幾多の壁がありました。
『いっちゃんになるとがすいとーと 孫正義ものがたり』は、誰よりも「一番(いっちゃん)」になることが大好きな少年が、人生の幾多の「壁」を、いかにして情熱の炎で溶かしていったかを描く物語です。

九州の温かな方言のリズム、そして水彩画が描く圧倒的な光の色彩。
これは、特別な誰かの物語ではなく、あなたと、あなたの子供が、未来を切り拓くための「はじまりの物語」です。

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(掲載日:2026年7月8日)
文:株式会社実業之日本社 森谷令
写真:株式会社実業之日本社 中込雅哉
編集:ソフトバンクニュース編集部