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5Gなしでは実現しなかったヤフオクドームでのマルチアングルVR観戦実験。ソフトバンクVR事業推進課 担当者インタビュー


2020年の商用サービス開始を控えた次世代のモバイル通信技術「5G」。
その取り組みとして、2019年3月に福岡 ヤフオク!ドーム(ヤフオクドーム)にて「マルチアングルVR観戦 実証実験」(VR試合観戦実験)を行いました。

5Gを活用した高精細な3Dパノラマ映像による、これまでにない臨場感あるVR映像をヤフオクドームで観客に楽しんでもらおうというイベント型の実験です。この実験にエンジニアとして企画、運営に携わった加藤 欽一に5GとVRに関する取り組みや、自身がソフトバンクで描くキャリアについて話を聞きました。

目次

可能性を持つVRを「技術」+「サービス」両面で深掘りする

ヤフオクドームでのVR試合観戦実験について聞く前に、まずご自身の業務内容について教えてください。

先進的な技術を利用した事業を開発する部門の中でも、私が所属するVR事業推進課はVRを利用した事業開発とその運営を実施するチームです。

VRは、その場に行かなくても現場にいるような臨場感が味わえるテクノロジー。例えば、コンサートチケットが手に入らなかった人、病気やケガ、その他の事情で移動ができない人でも、会場に行った場合と変わらない体験ができます。今後の可能性が非常に大きい技術だと思っています。

最新の技術を応用した事業開発を行う上で、社内ではどういった連携があるのでしょうか?

私の部署では、単にVRの技術開発や研究だけでなく、実際の事業化、その後の運営まで一緒に検討するため、コンシューマ部隊との連携が欠かせない組織体制になっています。このプロジェクトは、もともとコンシューマ部隊がメインで動いていましたが、プロダクトを考えると5Gの技術を取り入れればもっとよいものができるという判断で、技術部門との連携が強化された背景があります。

球場を超える!? リアルなVR空間内で3D映像視聴体験を5Gが実現

VR試合観戦実験の概要について教えてください。

5GとVR技術を組み合わせて今までにない臨場感のある野球観戦ができる環境を提供しました。実験の会場はヤフオクドーム内の「スーパーボックス」でしたが、VR空間では客席の最前列のほか、通常の観客席からは見られない視点からの映像を楽しめます。

他の球場でも既存技術のVR体験がありますが、それらの多くは360度カメラの録画映像をVR視聴できるというもので、リアルタイムで行われている試合をVR体験できるものではありません。

立体感のある映像が再現できる3Dにもこだわったので、球場内に設置した4カ所の撮影場所には、カメラを2台ずつ両目の視点で用意しました。

また、スポーツ観戦は一人より仲間と一緒にした方が盛り上がるもの。この実験では、同時にVR観戦をしている人がアバターで空間内に表示され、お互いにリアルタイムで会話やジェスチャーを楽しむこともできます。アバターを用いたコミュニケーション機能もこだわったポイントです。

5GとVRで新しいスポーツ観戦を! リニューアルしたヤフオクドームに行ってきた

5Gを活用したマルチアングルVR試合観戦の実証実験の様子は、こちらをチェック

5Gはどの部分で活用されたのでしょうか。

VR映像は、全天球のデータを扱うためデータ量が非常に多くなり、しかも今回の実験ではそれをライブ配信する必要がありました。ライブでのストリーミング配信となると、4Gでは画質を落とさなければなりませんが、5Gを使用することで、リアルタイムに行われている試合を大容量かつ高画質な映像で配信することができました。

さらに、視点切り替え機能も実装したのですが、これも伝送速度が遅いとストリーミングデータが再生バッファにたまるまでの遅延が生じます。バッターが打ったとき、すぐに外野やスタンドの視点に切り替えたいと思っても、従来の技術では画面の切り替えに数秒のタイムラグが生じます。今回の実験では、時間差はほとんどなくスムーズな視点の切り替えに成功しています。その結果、VR酔いも軽減できました。

VRの全天球映像は、通常の2D映像の約5倍のデータ容量で、今回の実験では、ビットレートを4Gの約10倍でストリーミングしました。4Gでは難しかった、臨場感のある映像をリアルタイムで配信できたのは、まさに5Gならではの特性です。

体験した人の反応はどうでしたか。

「選手に触れそう」「とてもリアルで、自分も野球をしたくなった」といった声をいただけるくらい、皆さまに喜んでいただけたと思います。VRを体験したことがある人からは、初めての距離感、臨場感であり「これまでのVRで一番よかった」と言ってくれました。

今回の実験で苦労した点はありましたか。

実験当日までは本当に大変でした。アンテナの設置、機器のテスト、カメラ位置の調整、何日も福岡に滞在し、帰れないことも何度かありました。しかし、球場スタッフの協力もあり、なんとか成功させることができました。「これまでにないVR体験を作るんだ」「5Gの可能性とすばらしさを伝えるんだ」という思いをチーム全員が共有できたことが大きかったと思います。

苦労は多かったのですが、ファンの方が本当に喜んでくれていたのがうれしかったですね。実験当日の皆さまの反応や声を聞いて、成功したんだという実感を得ることができました。

世界レベルの技術的インプットが可能な環境で働ける!

ヤフオクドームでの成功を受け、今後はどのようなことに取り組みたいですか。

来年の5G商用サービス開始後は、もっと高画質なVR体験を届けたいと思っています。特にアバターのコミュニケーション機能の強化は注力すべきだと考えています。今回のVR試合観戦実験では、同時観戦する仲間と会話することはできるものの、VR空間内の物に触ることなどできませんでした。これを、VR空間のグッズや広告に触ったり、ショッピングできたりとさまざまなことができるようにしたいですね。

コンテンツも球場から広げて、音楽のライブ、他のスポーツ観戦、リモート会議やプレゼンテーション研修での応用も考えています。VRヘッドセットも今のヘッドセットタイプよりも、はるかに手軽なメガネタイプの開発が進んでいます。これらを利用して、通常のスマホやメッセンジャーによるコミュニケーションもVR化してくるかもしれません。

移動が困難な人にVRを活用するというお話がありましたが、これについての取り組みはありますか。

VRの可能性は、距離を超えて何かを楽しむというもの。いろんな課題、例えば時間やお金、もしくは身体的なハンディキャップ、入院時や病気・障がいがあることで実際にその場所に行けないといった方も、VRを利用することで疑似体験できる可能性を追求していきたいと思っています。

この夏、障がいや病気のある若者のための進学・就労支援プログラム「DO-IT Japan」では、今回実施したヤフオクドームでのVRを体験していただきました。

DO-IT Japan(提供:青木遥香)

実際に体験に参加した子どもたちからは、「病院にいる子でも授業に参加できる」「動くことが難しい人でも普段行けない場所に行ける」「見えない人はどう楽しめるか?」など障がいを切り口とした、さまざまな意見を聞くことができました。

「DO-IT Japan」とは

障がいや病気のある子どもたちや若者が「社会で活躍するリーダーとなること」を応援する東京大学先端科学技術研究センター主催のプログラム。厚生労働省、文部科学省の後援を受け、ソフトバンクおよび日本マイクロソフト株式会社の2社が共催し、ソフトバンクではiPad の貸し出しや、Pepperを使った取り組みなどICT(情報通信技術)を生かした支援を行っています。

最後に、ソフトバンクでの仕事のやりがい、自身の目標について教えてください。

VR試合観戦実験当日メディア対応の様子

ソフトバンクは、VRやそのほかの最新テクノロジーに触れられる環境が整備されていると思います。また、外部からも通信技術や最新技術に関する実験や事業のオファーもいただくので、技術的なインプットが常に得られる会社だと思います。

私は20年以上、テクノロジーの分野でキャリアを積んできましたが、VR、XRの分野でさらなるスキルを身につけていきたいと思っています。

世界トップレベルの技術情報が集まる環境で、新しいことに挑戦し続けたい

VRの新規事業を立ち上げ、その責任者として活躍する加藤は、常に新しい領域に挑み続けていると言います。

専門分野でなくても、勉強したいという意欲があれば挑戦するチャンスは無限にあるという、ソフトバンクで働く魅力を聞いてみました!

ソフトバンクで働く魅力とは?

(更新日:2019年8月30日、掲載日:2019年8月9日)
文:中尾真二(フリーライター)
写真:栗原大輔(Roaster)
編集:大崎安芸路(Roaster)、尾畑舞(Roaster)

先端技術で日常生活が劇的に変わる時代へ

次世代通信技術「5G」の導入によって、人と人だけでなく、あらゆるモノとモノがつながるIoT時代が本格的に到来します。

先端技術を用いた新たなサービス・ソリューションの実現に向け、さらなる技術開発に取り組んでいます。

ソフトバンクの事業を支える先端技術