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継続的な資金化と投資基準の厳格化で守りを徹底-ソフトバンクグループ株式会社 2023年3月期 第2四半期決算説明会レポート

2022年11月11日、ソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)の2023年3月期 第2四半期決算説明会が開催されました。冒頭、代表取締役 会長兼社長執行役員 孫正義が登壇した後、取締役 専務執行役員 CFO 後藤芳光が連結業績について説明しました。

目次

孫正義「Armの成長に集中することがソフトバンクグループへの最大の貢献」

決算説明会の冒頭、孫は「私が決算説明会の場に立って四半期ごとの説明をする、あるいは戦略の近況を報告するのは、今日のあいさつをもって当面の間は最後にしたい」と語り始め、Armの爆発的な成長に「没頭する」ことをその理由に挙げました。

コンピューティングの中心がパソコンからスマホ、さらにIoT、クラウドの世界へと移り変わる中、Armのアーキテクチャのポジションはますます強く揺るぎないものになるとして、「Armの技術革新、成長機会は、爆発的なものがあることを心の底から再発見した」「少なくともこれから数年間、Armの爆発的な次の成長に没頭する」との意思を表明。ソフトバンクグループのこれからの成長に最も貢献できるのは、Armとその周辺分野に集中することだと語りました。

マクロ経済の逆風に伴い世界の株式市場のボラティリティが高まる中、新規投資を徹底的に抑制し守りに徹する経営は「CFOの後藤が中心となりしっかりと守りを固め、決算説明を行うことがより適切」と説明しました。

孫「Armの成長に集中することがソフトバンクグループへの最大の貢献」

徹底的な守りの成果を報告

CFOの後藤は、「守りの環境の中で、私たちはしっかり自分たちのミッションを果たしてまいります。孫が攻めの仕事を続けていくことが、結果的にソフトバンクグループのステークホルダーの皆さんに最大の貢献ができる。今しばらくわれわれも頑張ってまいります」とあいさつしました。

続いて、第2四半期の動きとSBGやソフトバンクグループ全体の現状について「おさらいも含めてまとめてお話を申し上げたい」と前置きし、持株会社投資事業、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)事業、アーム事業、ソフトバンク事業などについて説明しました。

徹底的な守りの成果を報告

「守りを固めると言ったら徹底的に守るのがわれわれのやり方。守るということを実践した結果、私自身の感覚としても、ソフトバンクグループの歴史上、今の財務状態は、最も安全で安定した状態にあるだろう」と、SBGの重要指標であるNAVが16.7兆円、LTVが15.0%、手元流動性が4.3兆円であったと9月末時点の成果を総括。

上期の連結業績は、売上高は3兆1,825億円、投資損失は8,496億円、税引前利益は2,926億円弱、純損失は1,290億円。同じくセグメント別の税引前利益は、持株会社投資事業は3兆2,623億円の利益計上の一方でSVF事業については約3.3兆円の損失となりましたが、ソフトバンクやアーム事業の貢献があって、連結では2,926億円のプラスとなりました。

徹底的な守りの成果を報告

徹底的な守りの成果を報告

純利益の四半期での推移については、第1四半期が約3.2兆円の純損失に対し、第2四半期は約3兆円の純利益を計上。

徹底的な守りの成果を報告

また、連結業績において、アリババ株式を利用した先渡売買契約の一部を現物決済したことに伴う影響額が約4.3兆円あったと説明しました。

徹底的な守りの成果を報告

SBGが最も重要な経営指標とするNAV(時価純資産)については「マーケット環境から見ればむしろ違和感はない」とし、保有株式価値は2022年3月末の23.2兆円から19.7兆円に減少したが、負債も4.7兆円から約3兆円に減少しており、NAVの減少率は保有株式価値の減少率よりも緩やかで、16.7兆円の価値を維持できていると述べました。

為替のNAVへの影響について、円安方向に振れることはドル建てのアセットがほとんどであることからプラスの影響が出るが、為替の問題で一喜一憂することなく、本質的な価値の向上に努めるのが一番大事なことだとしました。

また、SBGの株式がNAVに比べてディスカウントされて取引されている状況にも言及。分析を多面的に行い、ディスカウントの解消に努めていきたいと述べました。

徹底的な守りの成果を報告

LTV(純負債/保有株式)は15.0%と低位を維持して運用を行っていること、また、手元流動性は4.3兆円と今後4年分の社債償還資金が4.1兆円を上回る極めて安定的で安全なレベルで守りに徹していると強調しました。

徹底的な守りの成果を報告

徹底的な守りの成果を報告

続いて、株主還元について、2021年11月に発表した1兆円の自己株式の取得と、2022年8月に発表した4,000億円の自己株式の取得は、どちらも全額取得完了したことを報告。過去5年間の累計取得額は、約5兆円と大規模な取得を継続しており、このような株主還元の取り組みは、歴史的に見てもおそらく日本企業ではダントツに多い金額で、グローバルに見ても世界の上場企業の中で10位にランクされると述べました。

徹底的な守りの成果を報告

投資を縮小。しっかり足元を固め長い冬を乗り越える

SVFの投資損益は、四半期ベースでは少しずつ反転の兆しも見られるものの、依然厳しい環境が続き、「短期的な損益に惑わされずに、しっかり足元を固めてビジョンを追求していくということが何より重要だ。この長い冬を乗り越え、最終的にしっかり投資家の皆さんにお返しできるように、運用、管理を行う」と述べました。

投資を縮小。しっかり足元を固め長い冬を乗り越える

第2四半期の投資額は、わずか3億ドルであったと、守りを徹底していることを強調。また、472社の投資先の中の上場予備軍が、この環境で慌てて上場するのは得策ではないとの考えを示しました。

その上で、ファンドが投資を厳選するという当面の運営方針に合わせた組織の効率化を実施していること、ファンドの新しいリーダーシップについても紹介。 また、注目のセクターとして、「デジタルコマース」「グローバル・サプライチェーン」「金融サービス」「人材市場のニュー・フロンティア」「データの管理・分析・保護」の5つを挙げ、「われわれが目指すAIの時代でのビジネス展開に期待値を持っている」と語りました。

Arm、PayPayは堅調に進展。さらなる成長に期待

アーム事業は堅調に進展し、ロイヤルティー収入は半期ベースで同社史上最高、ライセンスに対する需要は好調に推移しており、直近3年間の上期売上高の平均成長率は21%と紹介。「上場も視野に入れて頑張っていこうという、グループの一体化のいい成果だろうと思っている」とコメントしました。

Arm、PayPayは堅調に進展。さらなる成長に期待

さらに、「彼らの活躍するマーケットはまだまだ伸び盛り」だとして、Armが新たに発表したArm史上最高のパフォーマンスを実現する「Arm Neoverse V2」のローンチへ期待を寄せました。

Arm、PayPayは堅調に進展。さらなる成長に期待

続いて、登録ユーザー数が5,100万人を突破し、決済取扱高は1.8兆円と着実に拡大しているPayPayについて、「今後は決済取扱高という面を広げる作業を徹底的に行いながら、利幅を上げていくというのが次のテーマ」であるとし、キャッシュレス決済市場のTAM(Total Addressabel Market)は約250兆円、PayPayの取引総額、GMV(Gross Merchandise Value)はまだわずか4.9兆円で「ほとんどフロンティア」。この分野に技術面からもビジネスモデル面からも、経験値のあるわれわれのグループに大いに期待したいとしました。

Arm、PayPayは堅調に進展。さらなる成長に期待

3つ目の投資先の事例として、2013年にSBGが米国・スプリント社を買収した際の4,000億円の株式部分の売却実績と保有時価の合計が2022年9月末時点で3兆円となったと紹介。スプリントは大失敗だとの批判を受けたこともあったが、スプリントとT-Mobile US, Inc.の合併後、米国通信事業者の支配構成が大きく変わり、T-Mobileは米国第一位の事業者に成長、結果的にはすばらしい成果を生み出すことができたと語りました。

Arm、PayPayは堅調に進展。さらなる成長に期待

財務方針は引き続き堅持

最後に、財務戦略に変更はないことを改めて示し「守りを固めるが、必ず明けない夜はない。新規投資のタイミングは、多くの投資会社が時期を見守っている。そのときを楽しみに、しっかりと守っていきたい」と述べ、プレゼンテーションを締めくくりました。

2023年3月期 第2四半期決算説明会

免責事項

(掲載日:2022年11月10日、更新日:2022年11月15日)
文:ソフトバンクニュース編集部