ケーブルが邪魔にならず、使い勝手の良さと快適さが人気のワイヤレスイヤホン。しかし、ふとした拍子に耳から落ちてしまったり、そのコンパクトさ故にどこに置いたのか見つからなかったりと、落下や紛失が起こりやすいという面もあります。今回の記事では、オーディオ&ビジュアルライターの折原一也さんにお話をうかがい、ワイヤレスイヤホンの紛失を防ぐコツやおすすめの管理方法などを解説していきます。
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折原一也(おりはら・かずや)さん
オーディオ&ビジュアルライター・AV評論家。オーディオ・ビジュアル専門誌やウェブ、雑誌などで取材・執筆を担当。4Kテレビやワイヤレスイヤホンなど、映像・音を専門とする。2009年より全国の家電量販店や専門誌と共にオーディオ・ビジュアルの優れた製品を表彰するアワード「VGP(ビジュアルグランプリ)」の審査員を務める。自身のYouTubeチャンネル「オリチャンネル」では、話題のAV機器に関するレビュー動画を発信中。
ワイヤレスイヤホンって便利だけど、紛失しがち…
イヤホンは、通勤中に音楽を聴いたり、Web会議で会話を聞き取りやすくするために使用したりと、使うシーンもさまざまです。最近は、左右のイヤホンをつなぐケーブルがない「完全ワイヤレスイヤホン」(以下、ワイヤレスイヤホン)が主流になりつつありますが、便利な半面落下したり紛失したりするケースも少なくありません。2020年に東日本旅客鉄道が発表したデータによると、東京支社管内全78駅の線路へのワイヤレスイヤホンの落とし物は3カ月間(7~9月)で約950件も発生しているそうです。まずは、ワイヤレスイヤホンを失くす主な原因について折原さんに聞いてみました。
ワイヤレスイヤホンを失くす原因は?
ワイヤレスイヤホンを失くす主な原因としては、下記の3つが挙げられます。
- 使用中に耳から落ちてしまう
- イヤホンを取り出す際やしまう際に落としてしまう
- 管理場所を決めていない
折原さん 「使用中に耳から落ちてしまうのは、主にイヤホンの装着性が関係しています。耳の形や耳の穴の大きさは個人によって差があって、イヤホンの形状との相性はありますね。また、男性よりも女性の方が耳全体が小さい傾向があるので、大きいイヤホンをつけていると落ちてしまうケースが多いようです。
また、ワイヤレスイヤホンは軽くてサイズも小さいですので、耳から外す時やカバンから取り出す際、充電ケースから取り出す際にも落としがちですよね。あと、個人の性格にもよりますが、使用していないときの自宅での管理場所や外出時の収納場所か決まっていないと、どこに置いたか分からなくなってしまうことも多いようです」
ちなみに、ソフトバンクの社員にワイヤレスイヤホンの紛失原因についてのアンケートをとったところ、一番回答が多かったのが「外出先でカフェや飲食店などに置き忘れた」、次点で「耳から外した後に上着のポケットやバッグなど、どこにしまったのか忘れてしまった」でした。イヤホンを外した後の管理場所を決めていないと、このように外出先で失くすことが増えるのかもしれませんね。
ワイヤレスイヤホンが耳から落ちるのを防ぐ方法
ワイヤレスイヤホンが耳から落ちてしまうのは、イヤホンの種類や装着方法が要因になっている可能性があるそうです。ここでは、イヤホンを落とさないための対策をいくつか紹介します。
自分の耳に合う形のイヤホンを選ぶ
折原さん 「ワイヤレスイヤホンは、いくつかの形状に分類できます。現在主流の製品は左右をつなぐケーブルのない完全ワイヤレスイヤホンですが、まず耳の穴に引っ掛けるように装着するインナーイヤー型と、イヤーピースを耳に差し込むタイプのカナル型の2種類があります。あとは、耳に固定する方式にもバリエーションがあって、耳全体にかかるタイプ以外にも、AirPodsのようにアンテナ部分が耳から下に延びて、引っ掛けるタイプもあります。どの形状が合うかは人それぞれですが、イヤホンが耳から落ちないようにするには、装着時に耳にしっかりとフィットするタイプを選ぶのがポイントです。イヤホンによっては、スマホなどとつなぐと装着感をチェックできる機能があるので、ある程度の目安になりますよ」
イヤホンを正しく装着する
折原さん 「電車の中で、イヤホンを左右間違ってつけている人を見かけることがあります。ワイヤレスイヤホンは、正しく装着できていないケースが意外と多いんです。イヤホンは左右の耳の形状に合わせた形になっていることが多いので、左右逆につけているとフィットしません。鏡で見たり他の人が見るとすぐに気付くのですが、時間がなくて急いでイヤホンをつけたときなどは、自分では分からないうちに左右逆につけてしまうこともありえます。イヤホンには必ずL(左)とR(右)の文字が書かれているので、つける前に確認するようにしましょう」
自分の耳に合うイヤーピースサイズを選ぶ
折原さん 「カナル型のワイヤレスイヤホンには、シリコンなどの柔らかい素材のイヤーピースがついています。イヤーピースの最適なサイズは、できるだけ密着していて、耳が痛くならない範囲での最大サイズです。密閉密着することが最も重要なので、耳の穴よりも極端に小さいイヤーピースを使っていると、支えが効かず落ちてしまったり、音の聞こえが悪くなったりします。イヤーピースは、S・M・Lなどの3サイズが入っていることが多いので、面倒がらずに、必ず全種類試してフィット感を確認しておきましょう」
電車の乗降時はイヤホンの落下に注意する
折原さん 「イヤホンを落とす場所で最も多いのが、駅や電車内、線路などです。駅のホームから線路内にワイヤレスイヤホンを落とすケースは少なくありません。通勤・通学で電車を利用する場合は、特に注意しましょう。電車の乗降時に人や他人のバッグなどにぶつかってイヤホンが落ちるケースはよく起こります。特に、AirPodsなどはアンテナが伸びていて引っ掛けることがありますし、インナーイヤー型は振動で浮いてきてしまうこともあります
それと、電車に乗る直前や降りる直前にイヤホンをつけたり外したりするのは、避けたほうがいいでしょう。私自身も電車を降りる直前に慌てて外した際に、電車内で落としてしまって焦った経験があります。駅や電車内など時間が迫っているときにはイヤホンをつけたままにし、人が少ない落ち着いた場所などでイヤホンを着脱する方が安心です」
耳に負担の少ないワイヤレスイヤホンの使い方
折原さんによると、イヤホンは、耳にずっとつけたままにすると負担がかかってしまうそうです。聴覚保護のためにも、ずっとイヤホンをつけたりすることはせず、使用時間をある程度決めて休ませる時間を作るようにしましょう。また、聴覚だけでなく、耳にずっとつけることで違和感を持ったり、疲れてしまうこともあります。特にカナル型は耳に密着している分使い続けると疲れやすいので、長時間の使用にはあまり向いていません。イヤホンを使う際は下記のことに注意してみてくださいね。
- 大音量で音楽を聴かない
- 連続して使用せずに休憩をはさむ
- イヤホンの使用時間を制限する(1日1時間未満など)
どこに置いたっけ? を防ぐ、ワイヤレスイヤホンの管理方法
ワイヤレスイヤホンは耳から落ちるだけでなく、自宅でどこに置いたのか忘れてしまったり、バックの中を探すのに時間がかかったりするケースもあります。そのようなことを防ぐ、ワイヤレスイヤホンのおすすめの管理方法を折原さんに聞きました。
常にケースを持ち歩き、使用後はすぐケースにしまうよう習慣づける
折原さん 「左右をつなぐケーブルのない完全ワイヤレスイヤホンは、使用してないときは常にケースにしまっておくのが基本です。外出先でもケースは常に持ち歩く前提なので、イヤホンだけを持って外出するのは控えたほうがいいですね。イヤホンは左右セットで扱うようにし、片耳のみどこかに置くというようなことはしないようにしましょう。
また、イヤホンをケースにいれずにどこかへ置いてしまうと、置いた場所が分からなくなってしまいます。ワイヤレスイヤホンを使用した後は、必ず左右のイヤホンをすぐにケースにしまうように習慣づけることで、イヤホンの管理がしやすくなります。急にワイヤレスイヤホンを取り外して上着のポケットに入れる、なんてシチュエーションもよくある紛失パターンですね」
家に帰ったら充電器付近に置くようにする
折原さん 「ワイヤレスイヤホンの置き場所を決めておくと、室内での紛失を防ぐことができます。ワイヤレスイヤホンはケースも小さいので、ジャケットやズボンのポケットに入れたまま…ということも、ついついやりがちです。なので、まずは家に帰ってきたらどこに置くか、場所を決めておきましょう。一番おすすめの置き場所は、充電器付近です。ワイヤレスイヤホンは充電が必要なので充電器の近くにケースを置くようにすれば、置いた場所も忘れにくくなります」
使ってないワイヤレスイヤホンも、たまには電源を入れてあげて
折原さんいわく、ワイヤレスイヤホンはリチウムイオンバッテリーが使われているため、一般的には3年くらいでバッテリーが劣化していくそう。一方、全く使わないで放置することもバッテリーにはダメージがあり、1年以上の間、一度も電源をいれないままにすると、バッテリーの寿命がゼロになってしまうこともあるとのことです。
ワイヤレスイヤホンを購入した後は、適度に使い続けることが最も良く、使わずに放置するのは避けたほうがいいでしょう。また、充電は毎回しても問題ないですが、最大充電ではなく、8~9割くらいでストップさせると、バッテリーの寿命が長くなるようですよ。
それでも失くしてしまった場合はどうする?
普段から気を付けていても、それでもうっかりワイヤレスイヤホンを失くしてしまうこともあります。その場合はどうすればいいのかを聞きました。
アプリを使って探す
折原さん 「ワイヤレスイヤホンが見当たらなくなったら、まずはアプリを使って自分で探してみましょう。Apple製品の場合はiPhoneの『探す』というアプリを使うと、位置情報を確認できます。また、Apple製品以外の場合は、Bluetoothを使ってワイヤレスイヤホンを探すことができるアプリをダウンロードしてみてください。ただし、このアプリが使えるのは自宅や学校、職場など狭い範囲で見当たらなくなった場合のみですね。iPhoneの『探す』ほど広範囲では使えないので、そこは注意してください」
iPhoneの「探す」アプリを使ったワイヤレスイヤホンの探し方
Apple製品の「AirPods」は、iPhoneの「探す」アプリを使って位置情報を確認することができます。
①まず、iPhoneの「探す」アプリを開き、「デバイスを探す」タブの下にあるデバイス名を確認します。各デバイスの下には所在地が表示されるか、「位置情報が見つかりません」と表示されます。
②AirPodsのデバイス名をタップすると、「サウンドを再生」の表示がありますので、タップすると音が鳴り、徐々に大きくなります。室内で失くしてしまった場合はこの音を頼りに探してみましょう。
AirPodsが圏外にある場合や、充電が切れている場合は、「位置情報が見つかりません」または「オフライン」と表示されます。この場合は音を鳴らすことができませんが、最後に使った場所を確認できますので、アプリから場所を特定しやすくなります。
警察や鉄道会社に連絡する
折原さん 「アプリを使っても見つからなかった場合は、すぐに最寄りの交番に遺失届を出しましょう。もし、電車内や駅などで紛失した可能性がある場合は、最寄り駅に問い合わせをしてみるのもいいでしょう。自分のものだと分かるように、できる範囲でケースやイヤホンに目印をつけておきましょう。ワイヤレスイヤホンはシールを貼るには小さすぎるので、ペンでマークをつけるなどがオススメです」
メーカー保証を使う
折原さん 「メーカーにもよりますが、紛失した場合は無償で交換などのメーカー保証が含まれている製品もあります。ただし、基本保証の内容に『紛失』が含まれていない場合や、片耳の紛失のみが対象となっているケースもあるので、保証内容をしっかりと確認するようにしましょう」
片方だけ購入する
折原さん 「片方だけ紛失した場合は、機種によっては片方のみを購入できることもあります。フリマサイトなどで中古で購入することもできるようですが、その場合は左右のペアリング(ワイヤレスイヤホンは左右のペアリングが済んだ状態で出荷されているため、左右を別々に購入する際には通常と異なる手順が必要になります)ができないケースもあるため、注意が必要です。ワイヤレスイヤホンの製品寿命は、約3年といわれています。もし、イヤホンを片方のみ失くしてしまった場合は、買い替えも考慮しつつ検討するようにしましょう」
もう失くさないために。イヤホン選びと管理方法を見直そう
ワイヤレスイヤホンを「もう失くしたくない!」と思っている人は、自分の耳に合った形かどうかや正しく装着できているかを見直しつつ、外出時や自宅でも常にケースとセットで保管するように意識するだけで、かなり改善できるのではないでしょうか。違った角度からのアプローチになりますが、思い切って高価な商品を購入してみると丁寧に扱うようになって、失くさないようになるかもしれませんね。今回の記事を参考に自分なりの紛失防止策を考えてみてください。
(掲載日:2023年6月14日)
文:川添祥子
編集:エクスライト