ランニング中に音楽を聴いて気分を上げたり、通勤途中に英語教材を聴いて勉強したり、と、日常生活に欠かせないイヤホンですが、最近は「ワイヤレス」タイプの製品が主流になりつつあります。ですが、種類がたくさんあり過ぎてどの製品を購入したらいいのかわからない……という方も多いのではないでしょうか。
今回は、ワイヤレスイヤホンを選ぶときに押さえておきたいポイントや仕組みを解説します。基礎知識を知って、自分にぴったりの製品を選びましょう。
ワイヤレスイヤホンの3つの特長。有線とワイヤレスの違いも解説
ワイヤレスイヤホンの特徴は主に3つ。
- スマホやオーディオ機器に接続するコード部分(=ワイヤー)を持たない(=レス)。かわりに、「Bluetooth」という無線通信技術を使って機器と接続します。
- 接続できる距離に物理的制約がない。有線イヤホンでは、コードの長さ以上に機器から離れることはできませんが、ワイヤレスイヤホンは機器から多少離れていても通信できます。
- イヤホン本体にバッテリーを搭載。ワイヤレスイヤホンは無線で通信するため、イヤホン自体が電力を消費します。イヤホンのバッテリー残量がなくなると、接続が切れてしまうので、充電する必要があります。
有線のイヤホンとワイヤレスイヤホンはどう選べばいいの?
ワイヤレスイヤホン |
有線のイヤホン |
|
---|---|---|
充電 |
必要 |
不要 |
コード |
なし |
あり |
通信の安定性 |
周囲の電波の影響を受けることがある |
周囲の環境に左右されない |
対応機器 |
Bluetooth対応なら接続可能 |
イヤホンジャック搭載機器 |
- 満員電車やスポーツ中に音楽を聴きたい人
- とにかくコードの煩わしさから解放されたい人
- イヤホンジャックのない機器を使っている人
ワイヤレスイヤホンは、コードがないことが最大のメリット。満員電車や運動中など、コードが邪魔になりそうなときでも気にせず使えます。さらに、Bluetooth対応の機器なら接続できるので、ほとんどのスマホで使用可能。ただし、混雑した駅や街中など無線が飛び交っている場所では、他の電波の干渉を受けて、音が遅延したり途切れたりすることもまれにあります。
- こまめに充電するのが面倒な人
- イヤホンジャック搭載の機器を使っている人
有線のイヤホンは、充電不要なのがメリット。周囲の電波の影響も受けないので、安定した接続を維持できます。また、動画視聴やゲームをするときの音声遅延もありません。
そもそもなぜワイヤレスで音が聴こえるの?
ワイヤレスイヤホンは「Bluetooth(ブルートゥース)」という無線通信技術を使って再生機器と通信します。数メートル程度の短距離通信を得意とし、消費電力が少ないのが特徴。また、Bluetoothは通信範囲の拡大など、年々性能が向上しています。
大きく2種類あるワイヤレスイヤホン。用途に合わせた4つの形状タイプも押さえておきましょう
一口に「ワイヤレス」といっても、実は大きく2種類に分かれます。それぞれの特長や利用時のメリット/デメリットを見ていきましょう。
① 左右一体型ワイヤレスイヤホン
左右一体型は、左右のイヤホン同士がコードでつながっているタイプのこと。コード部分には、通話用のマイクや、音楽の再生/停止操作ができるコントローラーを搭載する製品もあります。さらに、マイクやコントローラー部にバッテリーを搭載できるため、完全独立型よりも長時間使用できる製品が多いのもポイント。また、使わないときは耳から外してそのまま首に掛けられるので、紛失の危険が低いというメリットもあります。価格帯は主に数千円~1万円台後半。
② 完全独立型ワイヤレスイヤホン
完全独立型は、左右のイヤホンが個々に独立しているものを指します。コードが一切ないことから「トゥルーワイヤレス」とも呼ばれます。コードを気にせず使えて、イヤホン自体も軽量。ほとんどの製品が充電可能なコンパクトケースに収納できるので、持ち運びに便利です。
価格帯は数千円のものから、数万円の高価格な製品まで幅広くあります。搭載できるバッテリーサイズにも限界があるため、使用可能時間は左右一体型よりも短め。また、イヤホンが小さいので、耳から外すときにうっかり落としてしまわないように気を付けたいですね。
左右のイヤホンで音が分かれる仕組みは?
一般的なワイヤレスイヤホンは、左右で「親機」と「子機」が割り当てられ、有線イヤホンと同様に、左右のステレオ再生ができるようになっています。まず、再生機器から親機に左右の音のデータを一緒に送信。次に親機から子機へ左右どちらかのデータを送っています。左右一体型は、イヤホン間での通信を有線で行います。最近では、左右のイヤホンが再生機器と個別に通信する完全ワイヤレスイヤホンも増えています。
イヤホンの形状も大事なポイント
ワイヤレスイヤホンを使ううえで、着け心地は重要なポイント。主な4つのタイプを覚えておきましょう。
タイプ |
特徴 |
---|---|
カナル型 |
シリコンなど柔らかい素材のイヤーピースを耳に差し込むタイプ。耳栓のような装着感が特徴。密閉状態で音を聴くため、音漏れしにくく、遮音性も高い。 |
インナーイヤー型 |
耳の穴に引っ掛けるように装着。カナル型のように密着せず、開放感があるのが特徴。そのぶん音漏れしやすいが、周囲の音が聞き取りやすい。 |
耳かけ型 |
フックを耳の上側にかけて装着。簡単には外れない安定性が魅力。フックがあるぶん重量が増すため、耳の形状に合わないと痛みを感じることも。 |
骨伝導型 |
左右一体型でこめかみの後ろに装着するタイプや、完全独立型で耳を挟み込むように装着するものがあり、骨に伝わる振動で音を聴く。耳を塞がない開放感が特徴で、周囲の音もじゅうぶんに聞こえる。 |
ノイズキャンセリング、音質が変わるドライバー、プロファイル。ワイヤレスイヤホンの5つの選び方
ワイヤレスイヤホンの特徴を理解したうえで、イヤホン選びで重要な5つの注目ポイントと仕組みを紹介します。
① 周囲の騒音や環境音を軽減する「ノイズキャンセリング」
音楽や通話に集中したいなら、「ノイズキャンセリング」機能は外せません。電車の走行音や他人の会話など、イヤホンの外部から入ってくる環境音を低減するので、音量を無理に上げなくても音が聞き取りやすくなります。リスニングを快適にしたい、音楽に没頭したいという人にオススメ。
ノイズキャンセリングの仕組み
音は空気を振動させる「音波」として耳に届きます。波には位相(山や谷の部分)があり、同じ位相を合わせると波どうしが強め合い、逆の位相を合わせると打ち消される、という性質があります。ノイズキャンセリングもこの性質を利用していて、周囲の環境音をマイクで拾い、それと逆位相の音波を作り出すことで、騒音や環境音を小さくしているんです。
② 好きな音質を選ぶ「ドライバー&コーデック」
イヤホンの音質にこだわりたいなら、ドライバー(データを音に変えるスピーカー部分)とコーデック(音声データを圧縮する方式)の仕様をチェック。どの音域をしっかり聴きたいかによって、選ぶべきドライバーの種類が違ってきます。また、再生するデバイスに合ったコーデックを選ぶことで、さらに高音質で聴くことができます。
音楽の好みに合わせてドライバーを選びましょう
主に3種類のタイプに分かれていて、得意な音域がそれぞれ異なります。音楽の好みやどの音を聴きたいかなどに合わせて選びましょう。
タイプ |
特徴 |
---|---|
ダイナミックタイプ |
多くのイヤホンに採用されている主流のタイプ。パワフルな重低音を出せるのが特徴。比較的安価なイヤホンに搭載されている。 |
バランスドアーマチュアタイプ |
主にカナル型に採用されることが多いタイプ。ダイナミック型に比べて小型化しやすいのが特徴。中高音域の表現を得意とするが、低音はやや苦手。 |
ハイブリッドタイプ |
上記2つのドライバーを最低でも1基ずつ搭載するタイプ。低音から高音まで、パワフルかつ解像度の高い音を表現できる。そのぶん価格は高め。 |
音質が変化するコーデック
対応コーデックの種類が異なるスマホとイヤホンの場合、接続できないということはありませんが、スマホに対応しているものを選ぶとよりベストな音質で聴くことができます。iPhoneとAndroidでも種類が異なるので要注意。
コーデック名 |
特徴 |
---|---|
SBC |
標準的なコーデックでBluetooth機器は必ず対応している。他のコーデックと比べると音質が劣化し、通信速度も遅いため動画視聴時など遅延が発生しやすい。 |
AAC |
主にiPhoneやiPadに使われている。SBCより高音質で遅延も少ない。 |
aptX |
主にAndroidに使われている。SBCやAACよりも高音質といわれるが、2つと比べるとまだ対応製品が少ない。 |
aptX HD |
aptXよりもさらに高音質で「ハイレゾ」音源の再生にも対応。ただし、音質に優れるぶんaptXよりも遅延は増えている。 |
③ 「プロファイル」が違うと通話ができなくなる
プロファイルとは、イヤホンが送受信するデータの内容や通信方式を定めたもの。たとえば、音楽を聴くときと通話をするときでは、データの中身も通信方式も異なります。例えば、ワイヤレスイヤホンで通話をしようとしても、必要なプロファイルに対応していないイヤホンでは通話ができません。
どんなデータの種類がある?
Bluetooth通信においては、送受信するデータごとに通信方法(順番やタイミングなど)が決められていて、イヤホンやPCマウス、プリンターなど製品ごとに対応するプロファイルが異なります。
プロファイル名 |
機能・内容 |
---|---|
A2DP(Advanced Audio Distribution Profile) |
イヤホンやヘッドホンに音声データを伝送、再生する |
AVRCP(Audio/Video Remote Control Profile) |
再生や停止、曲送りなど再生機器のコントロールができる |
HSP(Headset Profile) |
音声の受信だけでなく、イヤホンと機器の双方向の通信が可能 |
HFP(Hands-Free Profile) |
HSPの機能に加えて、イヤホン側で電話の発信や応答といった操作が可能(ハンズフリー通話) |
連続再生時間や防水レベル。ワイヤレスイヤホンの5つの選び方
④ 急な音切れを防ぐ「連続再生時間」の確認
イヤホン選びでとりわけ重要なのが、バッテリーの持ち時間。特に完全独立型の場合はイヤホン本体の持続時間だけでなく、充電ケースと併用で最大何時間使えるのかを確認しましょう。
バッテリーや充電の仕様はどうチェックする?
ワイヤレスイヤホンの製品情報には、画像のようにバッテリーに関する項目が必ず設けられています。項目の意味は以下。なるべく充電切れを避けたい人は、急速充電に対応している製品もオススメです。
- 本体:最大約5時間:満充電のイヤホンを単体で最大約5時間使える
- ケース併用:最大約24時間:満充電のケースに収納して充電しながら使えば最大約24時間使える
⑤ 雨の日や運動中の汗を防ぐ「防水性能」
最新のワイヤレスイヤホンは防水性能を備えたものも登場しています。特にスポーツをしながら音楽を聴くなら、運動中の汗に耐えられる程度の防水性能は必須。外出時に急な雨に降られたときでも安心。製品が対応する防水性能のレベルをきちんと確認することが大事です。
防水性能にはレベルがある?
防水性能は「IPコード」と呼ばれる国際規格で表記されます。中には、プールでも使える高い防水性能を備えた製品もあります。自分の使用シーンを考慮して、最適な製品を選びましょう。
あなたに合ったワイヤレスイヤホンを探してみましょう
いかがでしょうか? ソフトバンクセレクションでは、幅広いラインナップのワイヤレスイヤホンを取り揃えています。本記事で紹介した選び方を参考に、お気に入りのイヤホンを探してみてください。
編集部がオススメするのは、「Google Pixel Buds」
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(掲載日:2020年9月9日)
文・編集:友納一樹(TEKIKAKU)