2024年6月、ソフトバンクの通信ネットワークを保守・運用管理する部門ならびに協力会社メンバーによる、防災訓練が関東地区で実施されました。2024年1月の能登半島地震における復旧対応の経験を受け、より安全で迅速に復旧させるために、防災対策の内容も日々改善されています。訓練の様子を取材してきました。
目次
防災力をさらに強化。新ソリューションを導入した大規模訓練
ソフトバンクは大規模災害に備え、総合防災訓練や地域ごとの防災訓練を毎年実施しています。指定公共機関として、国・地方自治体・自衛隊などとの合同防災演習にも参加し、2023年度に全国各地で行った訓練は合計142回にも及びます。半年前に発生した能登半島地震を受けて防災力をさらに強化するため、今回の訓練には新しいソリューションや手順の確認も追加。復旧作業に関わる社員および関係会社らが一堂に会し、約170人が参加する大規模訓練となりました。
訓練場は「既存基地局の復旧」「臨時基地局などによる通信エリアの確保」「前線の対応を支えるベースキャンプ設置」の主に3つのエリアが設けられ、設置された機材を囲んでレクチャーが行われました。
停電した地域の基地局復旧に欠かせない発電機
大規模災害が起きると、災害対策マニュアルに従って速やかに安否確認や通信ネットワークの状況確認などが行われます。同時に、通信障害が発生しているエリアをいち早く復旧するため、各地に配備されている機材を現地に運搬する準備が進められます。


被害を受けた基地局は、被害状況に応じて発電機や移動電源車、衛星アンテナなどを用いて復旧します。能登半島地震で課題になったことのひとつは、発電機の稼働時間。停電が発生した場合に基地局に直接つなげる発電機は、従来型の場合、5~6時間の稼働のためガソリンの補充サイクルが短く、悪路を通って発電機を設置している各基地局を回るのが非常に困難でした。こうした課題に対し、従来の発電機に比べて稼働時間が約6倍のインテリジェントタンクや、約12倍になるLPガスのハイブリッドタイプの発電機を追加配備する予定です。

タンクが2つ備わっているインテリジェントタンク

LPガスのハイブリットタイプ
訓練では発電機の始動や基地局の電源ユニットへのつなぎ込みなどを確認していきました。


発電機のエンジンがなかなかかからず、参加者からは「実際にやってみると意外と難しい」という声が
一刻も早い通信の復旧を目指し、人が運ぶ衛星アンテナ
能登半島では山間部など車が立ち入れない場所にある基地局も多く、人が背負って運ぶ可搬型衛星アンテナも導入されました。また、積雪がある時期でアンテナに雪が積もり、通信断が発生したことから、防雪カバーが手配され、実例を踏まえてレクチャーを実施。


キャリーバッグに収納されている可搬型衛星アンテナの取り出しから組み立て、設置、解体、収納までの一連の動きなどを確認していきました。

キャリーバッグから取り出して衛星アンテナを組み立て

通信状況の確認はスマホでチェック
被災対応の拠点、役所や避難所を優先的に通信エリアを確保
基地局の早期復旧が難しい場合、被災対応の拠点となる機関や避難所など、人が集まる場所で通信が使えるよう、移動基地局車や可搬型基地局により、優先的にエリア復旧を行います。

移動基地局車

小型・軽量化された可搬型基地局
通常の車両ではアクセスが難しい場所にも運び込めるよう、可搬型基地局はさらなる改良が行われました。262kgから100kgへ小型・軽量化し、軽自動車で運搬可能なものが今後導入される予定で、従来車両での走行が困難な場所での稼働が期待されます。
長期化する復旧現場では後方支援が重要に
大規模災害は復旧まで長期間にわたるため、防災テントや、用途に合わせてレイアウトを組み替えられるMONETの「マルチタスク車両」など、ベースキャンプの機材も迅速に配備されます。ベースキャンプは物資の中間貯蔵庫や復旧対策の拠点、作業員の休息スペースとしての役割を担います。復旧作業の進み具合とともに変化する作業エリアに合わせ、柔軟にベースキャンプの移動が可能です。

防災テント

パソコン作業などができるテーブルと椅子が設定されたマルチタスク車両の内部
能登半島地震ではベースキャンプでの通信確保、ならびに教育・医療施設でのWi-Fi環境の構築にStarlinkを導入。軽量で、地上の電波が全くない場所でも通信可能なため、被災地でも多く活用されました。

また、現場から寄せられた運搬面の課題に対応するため、独自のキャリーバッグを開発。バックパックタイプなので、悪路でも1人で運ぶことが可能です。

日本BCP社による仮設給油所の展示

WOTA BOXは100L(リットル)の水で約100回のシャワーが可能
ドローンやNTNの活用で、災害時でも途切れない通信の実現へ
能登半島地震の被災地では、目的地までが細い一本道であることも多く、道路が寸断され、復旧させたい場所へたどり着けないケースも。その対策として、離れた場所から通信エリアを構築することができる有線給電ドローン無線中継システムを石川県の2カ所で稼働しました。被災地でその有効性が確認できたため、今後さらに活躍することを想定し訓練にも一層力が入ります。

また、NTN(非地上系ネットワーク)のソリューションのひとつであるOneWeb(低軌道衛星通信)もサービス開始に向け検証が進められています。可搬性に優れた折り畳み式アンテナもラインナップしており、防じん・防水機能を備え、電源があればすぐに閉域ネットワークの構築が可能。セキュリティを確保したいシーンでの活用が期待されています。
人の手が不可欠。実践的な経験によるスキル継承の場に
訓練当日に開催された報道関係者向けの説明会では、ソフトバンクの現在および今後の災害対策の概要や、訓練の内容について説明がありました。エリア建設本部 執行役員本部長の小笠原篤司は、能登半島地震の被災地の現状を伝えると同時に、復旧対応のスピードを上げるために導入された災害支援システムを始めとするソリューションを紹介。エリアの見える化による優先度の決定や人員・部材の管理、移動ルートの計測などを支援するシステムにより、復旧スピードが飛躍的に向上したと評価しました。
また、今後の備えを強化していくにあたって「技術が進歩していっても、突発的な大災害では最終的に人の手が不可欠。これまでの経験やノウハウに加え、ちょっとした気づきをしっかり継承していくことが非常に大切」と、大規模訓練の重要性を説明しました。
(掲載日:2024年7月8日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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