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「被災地に早く“安心”を届けたい」。担当者が見た能登の現状と通信ネットワーク早期復旧への道

このたびの令和6年能登半島地震により被災された皆さまに、心からお見舞い申し上げます。

日本中の誰もがお正月気分の中を突如襲った大地震。震源となる能登半島を中心に、石川県、富山県、新潟県など広い範囲で多大な被害が出ました。ソフトバンクの通信ネットワークも例外ではなく、多くの基地局や伝送路が地震による影響を受け通信サービスに影響がでています。ソフトバンクは、当日中に災害対策本部を立ち上げ、現地の情報収集を行い、復旧体制を構築。翌朝には、技術部門の社員らが通信ネットワークの復旧への取り組みを開始。後方支援班や協力会社を含め日々500人以上が連日復旧作業にあたっています。

現地がどのような状況なのか、復旧作業のため被災地に直接足を踏み入れた社員に話を聞くことができました。

さまざまな困難が立ちはだかる能登の現状

読者の皆さんも、すでにテレビの報道やSNSなどで能登地方の被災状況については聞き及んでいることと思います。最も大きな揺れを観測した石川県内では多くの建物が倒壊。土砂崩れなどにより道路が寸断され、孤立集落が発生する事態となりました。こうした過酷な環境の中で、避難所の方々らへ一日も早く通信サービスを提供すべく、急ピッチで復旧作業を進めています。

目の前に基地局があるが、車両での到達は不可能…

しかしこの時期、特に日本海側では「雪」の問題が立ちはだかります。多いところでは数十センチの積雪があり、車両での通行が困難な地域も。また場所によっては、徒歩での移動を試みるも危険すぎるとのことで止められるケースもあり、復旧作業は困難を極めているのが実情です。

連日500人以上を動員。一刻も早く通信ネットワークを復旧したい

1月1日16時6分、能登半島を震源とする震度5強の地震が発生しました。この直後からソフトバンク社内では通信ネットワークの被害状況の確認や社員の安否確認など、災害対策マニュアルに沿った動きが始まります。そのさなかに発生した大地震。わずか数分後の16時10分に再び能登半島を震源とする震度7の激震が発生し、状況は一変しました。社内には災害対策本部が設置され、通信ネットワーク、店舗、社員への被害状況の確認、災害用伝言板の開設や通信障害に伴うウェブサイトやSNSでの情報発信など、さまざまな部門の社員が一斉に動き出しました。

地震による通信ネットワークへの被害は甚大なものでした。基地局自体の損壊や伝送路の寸断により、広範囲にわたり基地局が通信サービスを提供できない状況になってしまったのです。

復旧作業は難航します。前述のように、車両が道路を走ることが困難なだけでなく、ひどい交通渋滞のためになかなか思うように現地にたどり着けない状況だったのです。

「道路が波打っていたり、ところどころに陥没やひび割れがあったり、車を走らせるだけでも一苦労でしたが、災害発生後の積雪も復旧作業を妨げる大きな要因でした。除雪もままならない状況でしたので、雪で立ち往生してしまい自分たちで除雪作業を行うなど、復旧作業の現場に到着することだけでも至難でした」

基地局までたどり着くために除雪が必要な場合も…

道路の状況をホワイトボードで随時共有

機動性を重視。通信ネットワークのスピード復旧へ

ネットワークエンジニアや後方支援班など多くの社員が連日通信ネットワークの復旧作業に従事し、日が経つにつれて通信サービスを利用できるエリアが広がってきています。

最新の復旧状況はこちらでご確認いただけます。

最新の復旧状況はこちらでご確認いただけます。

「復旧作業の拠点として、石川県輪島市と石川県鳳珠郡能登町にベースキャンプを構築しています。復旧作業に必要な機材はいったんこのベースキャンプに運んで、そこから各基地局の復旧作業にあたっています。自助の取り組みとして開設した仮設給油所の燃料を、他の通信キャリアの方にも提供したり、垣根を超えて協力し合っています。今後もこのような形で通信キャリア同士が協力し合いながら復旧に取り組むようになっていくのではないかと思います」

基地局を復旧するには、電気と通信経路の確保が重要です。今回の地震では、電気ケーブルや通信ケーブルの断線により通信サービスを提供できなくなった基地局が数多くあり、以下の方法でスピード復旧を目指しています。

「移動基地局車や移動電源車が基地局まで到達できればいいのですが、今回の被災地では車両での移動が困難な地域が多いことから、作業員が1人でも運搬できる機動性の高い小型機材による復旧が有効と判断しました。主に可搬型衛星アンテナや可搬型発電機などを活用しながら復旧作業を行っています。可搬型衛星アンテナを使って衛星通信による暫定的な伝送路を確保することで、既存の基地局が本来カバーしているエリアを早期に復旧させることができています」

LPガス発電機の接続作業

可搬型衛星アンテナの設置作業

また石川県輪島市門前町の一部エリアでは、ドローンを使って通信エリアを確保する取り組みも。「有線給電ドローン無線中継システム」と呼ばれるもので、ドローンを上空に停留飛行させることで、半径数kmのサービスエリアを確保できるのが特徴です。このドローン基地局は、短時間で稼働開始できるだけでなく、ドローン給電用ケーブルを接続した状態で飛行するため長時間稼働できるのです。

有線給電ドローン無線中継システム

同時に100班を超える多くの人員、さらに広範囲にわたる基地局の復旧作業では、全体の動きの統制が重要になります。

「ソフトバンクが独自に開発した、災害対策用の社内情報連携システムがとても役に立っています。支障が生じた基地局の管理に加え、現地作業班や機材、支援物資を可視化、位置管理ができます。現地作業班とのコミュニケーションツールとしても使えて、常に最新の状況を全員が把握できるので、みんなで一つになって復旧に向けて取り組めています」

災害対策用の社内情報連携システム

これら以外にも、自治体や総務省や自衛隊などの各関係省庁との連携を強化するために、石川県災害対策本部に “リエゾン” を派遣。インフラ事業者との情報共有や復旧優先エリアの情報確認などを行うほか、自衛隊や他の通信キャリアとも密に連携をしながら復旧作業を進めています。

「被災者の皆さんは相当不安な思いをされていることと思います。いまだに立ち入ることができない地域もあり歯がゆい思いもありますが、被災者の皆さんに “安心” を届けられるよう、一刻も早く通信ネットワークの完全復旧を目指していきたいです」

通信ネットワークの復旧活動の状況

ソフトバンクだからできる支援を被災地へ

被災地ではソフトバンク以外の方も利用できるサービスとして、営業中のソフトバンクショップおよびワイモバイルショップなどで、無料充電サービスを実施。また、石川県と連携し、避難所で無料Wi-Fi、充電サービスを提供しています。

災害救助法が適用された地域の方へは、データ追加購入料金の無償化や料金支払期限の延長、故障・修理費用の減免といった、ソフトバンクが提供する各サービスの利用者への支援など、ソフトバンクは被災地・被災者へのさまざまな支援措置を実施しています。

令和6年能登半島地震の影響に伴う支援について

「StarLink Business」の機材・設置サポートを無償提供

珠洲市役所や能登町役場、輪島市役所などで、衛星ブロードバンドインターネットサービス「Starlink Business」の機材の無償提供および設置サポートを実施しています。「Starlink Business」は、アンテナが小型・軽量で運びやすく、また短時間でWi-Fi環境を構築できることから、避難所などでのインターネット環境構築に便利なサービスです。
さらに総務省と石川県からの要請と協力にもとづき、今後、石川県内の行政機関や公共施設などに「Starlink Business」の機材100台と設置サポートを無償提供する予定です。

「WOTA BOX」で避難所などでの入浴を支援

七尾市などの断水しているエリアを中心に、複数の避難所などで「WOTA BOX」を活用した入浴支援を行っています。「WOTA BOX」は、ソフトバンクが資本業務提携しているWOTA株式会社が提供する断水時でも利用可能な自律分散型水循環システムです。WOTA株式会社独自のAI・IoT技術を使った水処理自律制御技術により、排水の約98%を再生循環し、公衆浴場基準をクリアした水として供給でき、100L(リットル)の水で約100回のシャワー入浴が可能。

配管工事が不要で、電源さえ確保できれば短時間で設置できるほか、センサー・アルゴリズム による水質監視・管理により、せっけんやシャンプーを利用した水でも再利用でき、災害時などでの活用が期待されています。

(掲載日:2024年1月12日)
文:ソフトバンクニュース編集部