不要な方向への信号を抑圧し干渉を減らすアンテナ技術
特定方向の信号を大幅に低減。通信の精度や強度を向上させるアンテナ技術
ヌルフォーミングとは、5G、LTEなどの無線通信の分野で使われるアダプティブアレーアンテナ技術(複数のアンテナ素子を制御するアンテナ技術)です。携帯電話の基地局は、広範囲に電波を送出して最大数kmの範囲をカバーしますが、基地局同士で信号がぶつかり電波が干渉してしまうことがあります。電波の干渉を防ぐために、特定方向への信号を抑圧するのがヌルフォーミングで、ヌルステアリングとも呼ばれます。無線信号は空間を波のように伝わる特性を持っています。複数のアンテナ素子を用いて特定方向に対して互いの信号を打ち消しあうように送信することで信号が「何もない」、つまりNULL(ヌル)の状態となり、不要な方向への信号を大幅に低減することができます。
NTNにおけるビームフォーミング補完技術としても活用
ヌルフォーミング技術は、私たちが普段利用しているモバイル通信の電波だけでなく、HAPSなどのNTN通信での活用も見込まれています。NTNによる通信では、上空の基地局から遠く離れた地上で移動するデバイスに合わせて正確な方向に信号を送ることが必要になります。そこで特定の方向に向けて信号を送る技術であるビームフォーミングと、特定の方向への信号を抑圧するヌルフォーミングを組み合わせることで、HAPS-HAPS間やHAPS-地上基地局間の不要な電波発射を抑えつつ、デバイスへの受信信号強度を高める研究が行われています。
ソフトバンクは、成層圏通信プラットフォーム(HAPS)を活用した高品質な通信ネットワークの提供に向けた研究開発の一環として、ヌルフォーミング技術の開発に取り組んでいます。2024年4月には、HAPSのビームフォーミング制御を行うシリンダーアンテナとヌルフォーミング技術による特定方向への信号抑制を行い、電波の干渉を防いでHAPSと地上基地局との周波数共用を実現する実証実験に成功しました。
ヌルフォーミングの関連情報
(掲載日:2024年8月21日)
文:ソフトバンクニュース編集部