プレスリリース 2024年

HAPSと地上基地局との周波数共用を実現する
ヌルフォーミング技術の実証実験に成功

~商用化に向けて、電波の有効利用に関する研究開発を加速~

2024年6月26日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮川潤一、以下「ソフトバンク」)は、成層圏から通信サービスを提供するプラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下「HAPS」)向けのシリンダーアンテナ※1を用いて、2024年4月に北海道の大樹町多目的航空公園で実証実験(以下「本実証実験」)を行い、HAPSと地上基地局との間で周波数共用を実現するヌルフォーミング技術※2の実証に成功しました。ソフトバンクは現在、HAPSで安定的かつ高品質な通信ネットワークを提供することを目指して要素技術の研究開発を進めており、本実証実験はHAPSで利用する通信技術を向上させる研究開発の一環となります。なお、本実証実験で活用したヌルフォーミング技術の一部は、特許を出願中です。

本実証実験で実施した内容の一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))の「Beyond 5G 研究開発促進事業」の委託研究課題として、2022年に採択された「上空プラットフォームにおけるCPSを活用した動的エリア最適化技術」(JPJ012368C05701)※3に基づくものです。

ソフトバンクは、HAPSと地上基地局が同一の周波数帯の電波※4を利用して通信サービスの展開を可能にする、周波数共用に係る研究開発を進めています。HAPSと地上基地局のそれぞれに専用の周波数を割り当てると、電波の干渉が発生せずに高品質な通信ネットワークを提供できる一方で、有限な資源である複数の周波数帯の電波を利用することになります。そこでソフトバンクは、HAPSと通信デバイスとの間でデータの送受信を担う「サービスリンク」向けのアンテナとして、シリンダーアンテナの活用を検討し、特定の方向に対する電波の放射を大幅に抑制して電波の干渉を防ぐ、ヌルフォーミング技術の開発に取り組んでいます。電波の干渉を防ぐことで、HAPSと地上基地局間での周波数共用技術を実現して、電波の有効利用を図ります。

図1:ヌルフォーミング技術によるHAPSと地上基地局間の周波数共用
図1:ヌルフォーミング技術によるHAPSと地上基地局間の周波数共用

本実証実験では、シリンダーアンテナを搭載した高高度係留気球基地局※5(以下「上空基地局」)の通信エリア内に地上基地局を設置して、上空基地局の通信エリア内にある携帯端末Aと、地上基地局の通信エリア内にある携帯端末Bを、地理的に近い場所に配置しました。上空基地局と地上基地局で同一の周波数帯の電波を利用し、ヌルフォーミング技術の適用有無による、携帯端末AとBの通信速度を評価しました。また、ヌルフォーミング技術の適用有無による通信速度の比較に当たっては、上空基地局からの電波を停止し、地上基地局と電波の干渉が発生しない環境下で、携帯端末Bの通信速度を評価しました。

本実証実験の結果、ヌルフォーミング技術を適用することで、携帯端末Aの通信速度を大幅に低下させることなく、携帯端末Bの通信速度が改善しました。さらに、ヌルフォーミング技術の適用により、両基地局間の電波の干渉を低減し、また、携帯端末Bにおいて、上空基地局の電波を停止して電波の干渉が発生しない環境下と同等の通信速度であることを確認できました。実際の屋外環境で、ヌルフォーミング技術による上空基地局と地上基地局間の周波数共用の実現性および有効性を確認できたことは、HAPSにおいて、既存基地局と電波の有効利用を実現する上で非常に大きな成果です。

ソフトバンクは今後、本実証実験を通して得たノウハウやデータを基に、HAPSの実用化や電波の有効利用に向けた取り組みを進めていきます。

図2:本実証実験で使用した高高度係留気球基地局とシリンダーアンテナ
図2:本実証実験で使用した高高度係留気球基地局とシリンダーアンテナ
ヌルフォーミング技術なし
ヌルフォーミング技術なし
ヌルフォーミング技術あり
ヌルフォーミング技術あり
図3:本実証実験の結果の一例

参考

成層圏通信プラットフォーム(HAPS)の特設ページ

[注]
  1. ※1
  2. ※2
    特定の方向に対する電波の放射を大幅に抑制して電波の干渉を防ぐ技術。
  3. ※3
    この研究課題は、上空のプラットフォームから広域のエリアカバーを実現する非地上系ネットワーク(NTN)の実現に向けて、上空プラットフォームの高度化と実運用に向けたカバーエリア内の最適化に関する研究開発を行うものです。詳細はこちらをご覧ください。
  4. ※4
    詳細は2023年12月28日付のソフトバンクのプレスリリース「2023年世界無線通信会議(WRC-23)においてHAPSの携帯電話基地局向け周波数帯の追加が正式決定」をご覧ください。
  5. ※5
    詳細は2022年6月22日付のソフトバンクのプレスリリース「フットプリント固定技術を活用した高高度係留気球基地局の実証に成功」をご覧ください。
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