ビジネスのさまざまな場面で適用される法分野の総称である「ビジネスロー」。ビジネスローの高度な法的知識や能力だけでなく、産官学をリードする人材を養成しているのが、東京⼤学⼤学院法学政治学研究科の先端ビジネスロー国際卓越大学院プログラムです。その趣旨に基づき、ソフトバンク株式会社の法務部⾨が担うべき役割や実務的課題と対応について紹介する講演会が開催されました。
ビジネス上の課題を解決に導くため、法学主導で「知のプロフェッショナル」を育成
「卓越大学院プログラム」は、文部科学省が2018年から推進している大学院改革プログラムで、各大学が強みを生かし、国内外の大学や企業と連携して5年一貫の博士課程を構築し、世界水準の教育・研究を通じて、各分野をけん引する卓越した博士人材を育成することを掲げています。また、人材育成・交流および新たな共同研究の創出が持続的に展開される卓越した拠点を形成する取り組みを推進することで、日本の大学院教育全体の質的向上と国際競争力の強化が期待されています。
卓越大学院プログラムにおいて、文系から唯一選定されているのが、東京大学大学院法学政治学研究科の「先端ビジネスロー国際卓越大学院プログラム」です。ビジネスローが必要とされる分野が急速に変化・拡大し続ける現状を背景に、企業や他の研究機関との異業種交流を通じた理論的考究と実務知識の獲得、法学主導による分野を超えた学際的融合の実現に取り組んでいます。

AIを積極的に活用しリスクコントロールする、ソフトバンク法務の対策
その教育プログラムの一環となる公開講演会として、10月24日に「ソフトバンク法務の実務的課題と対応 〜AIの積極活⽤に資する法的リスクコントロール〜」を開催。ソフトバンクのコーポレート統括 法務・リスク管理本部の佐藤英幸(さとう・ひでゆき)、山口薫(やまぐち・かおる)、佐保優一(さほ・ゆういち)が講演を行い、東京大学の研究者・学生に加え、官公庁、法律事務所、民間企業などからの学外聴講者も含め、約60名が参加しました。
講演は3パートで構成され、初めにソフトバンクの会社概要や法務部門の役割について説明。最近のトピックスとしてコーポレートガバナンス(企業統治)やAIガバナンスに関する取り組みを紹介し、企業の法務部門に求められる「攻め」と「守り」の観点や役割についても考えを述べました。
続いて「近時のソフトバンク法実務における諸問題」では、営業秘密を含む情報資産の保護について、訴訟対応を通じた気づきや対策を紹介。競争力の源泉となる情報資産をビジネスに活用する際に考えられる課題やその対応について、実際の事例を交えて解説し、不正競争防止法やソフトバンクの情報管理の取り組みについても説明しました。

最後に「AIビジネス推進に資する知的財産実務の視点と対応策」では社内外のルール形成に関する実務を通じて企業のAIガバナンス形成への法的考察を紹介しました。実務での検討例を題材にAIと著作権に関するリスクコントロールや欧州AI法への対応についての議論ポイントを示し、責任あるAI実装・活用の実現に向けた知財ガバナンス体制のあり方について考えを述べました。
AI・ビッグデータなどの新しいビジネスが生まれ、競争環境が複雑化するなか、法務部⾨に求められる役割や実務的課題への対応も変化・拡大しています。参加者からは、AI開発者の社会的責任や考え方、全社ガバナンス体制構築における法務部門の役割、退職時の秘密保持契約の法的な効力範囲などに関する多くの質問があり、関心の高さが伺えました。
「先端ビジネスロー国際卓越大学院プログラム」の今後の開催予定はこちらをご覧ください。
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(掲載日:2024年11月19日)
文:ソフトバンクニュース編集部