2025年2月12日、ソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)の2025年3月期 第3四半期 決算説明会が開催され、取締役 専務執行役員 CFOの後藤芳光が連結業績を発表。2025年1月に発表した「Stargate Project」および2025年2月初めに発表した「クリスタル・インテリジェンス」についても説明しました。
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「ASIの実現」がソフトバンクグループの進むべき道
冒頭、後藤は、CEOである孫の「AIに関するソフトバンクグループの行く道だけを真剣に考えて取り組みたい」との強い意志を受け、自身が決算を説明するようになって2年半になると振り返りました。そして、「ようやく、その彼が進むべき方向についてメッセージを具体的に出したと思います」と、直近の2つの発表に言及し、ASI実現をグループの総力を挙げて推進していると語り始めました。
ASI実現に向けた大きなテーマは、「あえて絞れば4つ」といい、「全ての心臓部にあたるAIチップ。ここにグループの最大の強みがある」と、アームが培ってきたAIチップの設計能力がAIの発展のために不可欠なピースであると強調。チップ面でのさらなる強化と大規模データセンターを支える電力の確保だと述べました。
AIの発展スピードを早める「Stargate Project」
今年1月22日(ワシントンD.C. 1月21日)に、OpenAIとともに発表した「Stargate Project」について説明。新たなAIインフラストラクチャを米国内で構築するため、今後4年間で5,000億ドルを投資することを計画で、初期出資者は、SBG、OpenAI、Oracle、MGX、リードパートナーであるSBGが財務管理を、OpenAIが運営をそれぞれ担います。
「Stargate Project」の資金調達は、いくつかのトランシェを分けて、リスクに応じたリターンを商品設計しながら、全体のプロジェクトの調達、資金を確保するプロジェクトファイナンスが中心になると説明。初期出資者が負担することになるエクイティ部分の出資割合は限定的なものになると話しました。
初期の主要テクノロジーパートナーには、Arm、Microsoft、NVIDIA、Oracle、OpenAIといった世界のリーダー企業が参画すると紹介し、「Stargate ProjectでAIの発展のスピードをさらに速めていきたい。そして、OpenAIがさらに素晴らしいサービスを提供できるように、そのためのインフラの整備を1日も早くしていきたい」と意気込みを語りました。
企業ごとにカスタマイズした最先端のAI「クリスタル・インテリジェンス」
続いて、2月3日に発表した、企業ごとにカスタマイズした最先端のAI「クリスタル・インテリジェンス」についても改めて紹介。日本企業向けの展開を加速するために設立する合弁会社「SB OpenAI Japan」のストラクチャーを示し、「このプロジェクトを通じて、個々の企業の全てのシステムやデータを安全に統合していく。そして、企業ごとにカスタマイズされた最先端のAIを提供していきたい。これを行うことで、企業経営の高度化やスピードアップに大きく貢献できると考えている」と、取り組みの意義を強調しました。
また、「クリスタル・インテリジェンス」の発表会の場でOpenAIのサム・アルトマンCEOが「ソフトバンクとのパートナーシップを、日本を皮切りに、世界で最も影響力のある企業に対して革新的なAIを提供していきたい」と語ったことを紹介し、「その言葉通り良いサービスを一日も早く提供したい」と抱負を語りました。
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重要指標は安定推移
第3四半期の業績については、重要指標(2024年12月末時点)は、NAV(時価純資産)が29.3兆円、手元流動性が5兆円、LTV(純負債/保有株式価値)が12.9%と、いずれも極めて安定して安全なレベルで推移していると報告。
連結業績(第1四半期〜第3四半期)についても、売上高が5兆3,026億円、投資損益が2兆1,700億円、税引前利益が1兆2,709億円、純利益が6,362億円となり、極めて順調であったと述べました。
四半期ベースでは、投資損失は4,810億円、純損失は3,692億円を計上。円安に伴い5,400億円の為替差損を計上したことも影響したと説明しました。
また、円安は純利益にはマイナスの影響があった一方で、NAVと資本にはプラスの影響があったと補足しました。
NAVの推移について、後藤は、右肩上がりのトレンドが実現できているとして、「本格的に取り組んでいきたいAIのステージはまだ始まったばかり。ここから大事なのはトレンドをしっかり維持していくこと。良いときも悪いときも、3カ月の株価の動きで一喜一憂する必要は全くないと思っている」とコメントしました。
SVF2がOpenAIへ追加投資
SVF事業は、四半期ベースでは23億3,100万ドルの損失となりました。SVF1については「グラブのように公正価値が上がったものもあればクーパンのように下落したものもある」と韓国の情勢の影響もあったと説明。また、SVF2については「未上場のポートフォリオが多いこともあり、この期に関しては業績要因など、公正価値の減少が大きく影響した」とコメントした他、円やウォンに対するドル高がマイナスに影響したと分析。
SVF2が出資するOpenAIについては、第2四半期での5億米ドルの出資に続き、今年1月に15億ドルの追加出資を行い、総投資額は20億ドルだとしました。
アーム事業は過去最高を更新
また、アーム事業の第3四半期の四半期売上高は、9億8,300万ドルと過去最高を更新、四半期調整後営業利益もアナリストコンセンサスを上回る4億4,200万ドルの業績であったと報告しました。
ロイヤルティー収入の成長ドライバーとして、Armv9の普及とコンピュート・サブシステム(CSS)の2つをあげ、Arm9のロイヤルティー収入はCPU世代別ロイヤルティー収入内訳で約25%を占めており、スマートフォンなどのモバイル分野やクラウド分野で採用され、今後も普及拡大していくとの見方を示しました。また、CSSについては、複数のIPライセンスなどのアームのテクノロジーを組み合わせたパッケージ商品として、顧客の製品開発時間の短縮や開発費用の削減につながり、チップそのものの性能向上につながると説明しました。
アームテクノロジーの浸透はさらに加速しているといい、アームベースのチップを使ったサービスの例として、AWSのGraviton、MicrosoftのAzure Cobalt、GoogleのAxionをあげました。
将来的なNAV拡大に向けて、成長投資を最優先
後藤は、財務方針を変わらず堅持していく姿勢を強調しつつ、今年度の財務戦略について「将来的なNAVを拡大していくための成長投資を今やるタイミングであり、それは全く変わらない。その展開の仕方がOpenAIでもあるし、Stargateでもあるし、クリスタル・インテリジェンスでもあるということ」と述べ、財務方針を堅持しながら、成長投資を最優先とする方針を改めて強調しました。
最後に「ASIの実現という大きなビジョンを絶対に実現したい。実現するトップグループの一員として、さまざまな取り組みをこれからも展開していきたいと思っている。しっかりと山を登っていきたい」と決算発表を締めくくりました。
2025年3月期 第3四半期 決算説明会
- プレゼンテーション資料(PDF形式:11.6MB/77ページ)
- 短信、データシートなど決算説明会関連資料

(掲載日:2025年2月10日、最終更新日:2025年2月21日)
文:ソフトバンクニュース編集部