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海岸線におけるドローン航路整備を見据え、物流・巡視・災害などマルチユースを想定した飛行実証を実施

海岸線のドローン航路整備に必要な技術や管理項目を福島県南相馬で検証

物流や災害対策などさまざまな分野でドローンの社会実装に向けた取り組みが進んでいます。2025年3月、公益社団法人 福島相双復興推進機構(以下「相双機構」)などとソフトバンクは、福島県南相馬市で、海岸線におけるドローン航路の整備を想定した実証を行いました。

整備が進められる「ドローン航路」

政府は人口減少が進むなか、デジタルによる恩恵を全国津々浦々に行き渡らせるため、約10カ年にわたる「デジタルライフライン全国総合整備計画」を2024年6月に策定し、「アーリーハーベストプロジェクト」の一環として「ドローン航路」の全国整備を進めています。また、政府が実施する産官学が連携してドローンの商用利用拡大を目指すドローン航路普及戦略ワーキンググループでは、ドローン航路を政府が推進する全国線航路と、地方自治体・民間事業者などが協調的に環境整備を実施する地方線航路という2つの考え方を示しており、相双機構は福島県における地方線航路の実現に向けて取り組んでいます。

物流から巡視まで多岐にわたる飛行実証で課題を洗い出し

実証が行われた南相馬市が位置する福島県は、レベル4飛行による市街地でのオンデマンド配送などの早期実装を目指す「新技術実装連携“絆”特区」に指定されています。積極的にドローン活用に取り組んでいる背景を受け、1カ所の離着陸場を拠点として、ドローンをさまざまな用途に活用する “マルチユースケース” を見据えた拠点運用の有用性の確認を目的として、相双機構などとソフトバンクが共同で今回の飛行実証を行いました。

福島県南相馬市沿岸部でのドローン飛行による実証項目

福島県南相馬市沿岸部でのドローン飛行による実証項目

実証を担当したソフトバンクの担当者に話を聞きました。

松田 憲史郎(まつだ・けんしろう)

ソフトバンク株式会社
IoT&プラットフォーム本部 プラットフォームビジネス企画部 1課 課長

松田 憲史郎(まつだ・けんしろう)

ソフトバンクはどのような狙いで飛行実証を実施したのでしょうか?

海岸線におけるドローン航路が実際に開通した場合、ソフトバンクはそのユーザーとしての観点と運航管理者としての立場から、どのような管理ツールや運航ルールの策定が必要なのか、また技術面でクリアしなければならない点を明らかにするために、さまざまなパターンで飛行実証を行いました。

具体的にはどのような飛行実証をしたのですか?

目視外の自動飛行による風力発電所、太陽光パネル、海岸、河川巡視や、海洋監視、物資配送のユースケースを想定して実施しました。

物流から巡視まで多岐にわたる実証飛行で課題を洗い出し
物流から巡視まで多岐にわたる実証飛行で課題を洗い出し

現地で実際に飛行実証を行って、どんな気づきや課題がありましたか?

飛行実証では、海岸線を運航する際に求められるドローンの機体要件や環境要件、拠点運用における飛行前準備に必要な要件の把握や、ユースケースを想定した拠点における機体運用(離着陸にかかる時間、メンテナンスの効率化、運用スケジュールの最適化)にかかわる安定性の確認および課題項目の洗い出し、撮影に適した飛行方法(高度・速度)に関する実証も行いました。

まず、一定時間内に飛行できるドローンの本数をより増やす工夫が必要だと感じました。また、安全性は確保しつつ、飛行にかかる人的負荷を減らすために、より少ない管理者で運航を可能にするツールや技術も必要になることが分かりました。

実は、実証の当日、ドローンの運航ルートの近くをヘリコプターが飛ぶ計画があることを偶然知りました。影響を受けないようドローンの運航ルートを調整することができたのですが、現在の制度では、事前にヘリコプターの飛行計画を知ることはできません。海岸線におけるドローン航路の運用が実際に開始された場合、ヘリコプターとドローンが互いの運航の支障にならないように、どう情報を連携していくのかなどの課題発見につながりました。

物流から巡視まで多岐にわたる実証飛行で課題を洗い出し

海岸線におけるドローン航路にどんなことを期待していますか?

海岸線におけるドローン航路が開通し、運航管理の方法が整備され、飛行ごとの許可・承認手続きの簡素化の可能性が検討されることで、ドローン活用のハードルが下がります。生活必需品だけでなく災害時の救援物資の運搬や、風力発電や太陽光パネル、インフラ設備の点検など、ドローンを活用した事業の可能性が大きく広がることが期待されています。

物流から巡視まで多岐にわたる実証飛行で課題を洗い出し

海岸線におけるドローン航路の開通までには、技術面や運用面、制度などさまざまな観点で整理が必要な項目があります。将来的に運航管理の立場を目指す立場として、今後はこうした課題にも向き合っていきたいと思います。

福島県の海岸線におけるドローン航路の整備を想定した拠点配備型ドローンによるマルチユースケースの飛行実証を実施~1カ所の離着陸場を拠点として、さまざまな用途でのドローン運用を確認~(2025年4月3日 ソフトバンク株式会社 プレスリリース)

(掲載日:2025年4月25日)
文:ソフトバンクニュース編集部