みんなと一緒に講義を受けたい! Pepperが代わりに出席する遠隔講義

近年、学校に通いたくても障がいや病気、距離の問題などで通うことが難しい子どもや学生の分身(アバター※1)として、ロボットを活用する取り組みが進んできているのだとか。

8月6日~10日に開催された、障がいや病気のある子どもたちの進学や就職を応援する「DO-IT Japan」の夏季プログラムでは、Pepperが参加した遠隔講義が行われたそうですよ。
近未来の可能性に、ちょっとワクワクするその模様をのぞいてみましょう!

  • ※1
    自分の分身となるキャラクターのこと。

相棒はPepper! 僕の代わりに授業に参加するよ!

「DO-IT Japan」プログラムに参加するのは、国内外から選抜された児童生徒・学生の皆さん。“スカラー”と呼ばれ、さまざまなプログラムに参加しています。

今回Pepperは、さまざまな事情により、東京の会場に来ることができない国内外のスカラーの皆さんの“アバター”として参加! 国内だけでなく、海外に住んでいるスカラーのみんなが、同じ時間に同じ講義を受けることができるってスゴイですね!

そこで、8月9日に開催された「アドボケイト※2になる」という講義にPepperをアバターとして自宅から参加した、2007年スカラーの國光さんに密着しました。NHKの「バリバラ」などに出演し、脳性麻痺で電動車いすを使用している玉木 幸則さんを講師に迎え、障がいのある人々の支援に関わるようになったきっかけや、「アドボケイトになるとはどんなことか」についての講義が、スカラーの皆さんとの意見交換を交えながら行われました。

  • ※2
    さまざまな理由により、必要な権利を行使できない状況にある方々のため、代弁や擁護などのサポートを行う人。

講義の内容は、自身のアバターとなるPepperの目(映像)と耳(音声)を通して遠方のスカラーに届きます※3。動きをプログラミングすることで、話している人の方向を向くなど自由自在に遠隔から操作できるほか、発言する際にはPepperの手を上げて、自分の声をPepperを通して届けたり、タイピングしてPepperに代わりに話してもらうこともできます。人型ロボットであるPepperを活用することで、存在感を発揮しながら、実際に会場にいるのと変わらない感覚で出席することが可能になりますね!

  • ※3
    今回の遠隔授業は、アスラテック株式会社とフューブライト・コミュニケーションズ株式会社の技術協力の下、実施されたものです。

会場にいるみんなは、自然と会場にいるアバターのPepperの目を見て会話をしたり、Pepperのほうを向いて話に耳を傾けるなど、コミュニケーションをよりスムーズに行うことができたようですよ。

実際にその場にいるような存在感! 講義に参加した感想を聞いてみました!

國光さん、そしてDO-IT Japanを主催する東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野 近藤 武夫准教授にPepperを活用した遠隔授業の感想を聞いてみました。

國光さん(2007年スカラー)

今までの経験だと、カメラが固定されていて向きを変えたりできなかったが、Pepperを操作することで、話している人の方を向くことができたので、実際にその場にいるような雰囲気を味わうことができました。今までは東京に行くことができる人しか「DO-IT Japan」に参加できなかったけど、新しい参加方法が増えたことで、参加できる人が増えるといいなと思います。

近藤 武夫准教授

固定の画面ではなく、Pepperを通して参加することで、「“そこにその人がいる”ということが伝わる存在感」という点で、これまでと大きく違うと感じました。また周りにいる人たちも、Pepperを使って授業に参加することに慣れ、当たり前だと感じる姿勢を育てることが、この取り組みの重要なポイントだと感じています。

東京大学先端科学技術研究センター
人間支援工学分野 近藤 武夫准教授

今後は、遠隔地に住んでいる人だけでなく、障がいや病気のためみんなと同じスケジュールで参加することが難しい人たちなど、いろんな背景がある人たちが時間や場所の制約を超えて参加できる選択肢の一つとして、この方法を広げていければと思っています。

離れていても授業に参加して、自らの意思をよりスムーズに伝達できる。行くのが難しいからと参加を諦めるのではなく、遠隔地でも教室にいるような感覚で参加できる。
そんな毎日が、Pepperを活用することで実現できるといいですね!

ソフトバンクでは多様性のある社会の実現を目指し、ロボット、AIやICT機器などを活用して障がいのある方の学習機会を広げる取り組みを続けてきました。
これからも、DO-IT Japanへの活動協力を通して、障がいのある方の中から次世代のリーダーを育成することをサポートしていきます。

ソフトバンクグループの障がい者支援の取り組み

DO-IT Japanとは?

2007年より東京大学先端科学技術研究センターが主催する、障がいや病気のある若者の中から将来の社会のリーダーとなる人材を育成することを目的としたプログラム。ソフトバンク株式会社と株式会社EDUASはこの取り組みに賛同し、初年度から一部プログラムの共催などのサポートと、学生が実際にPepperのプログラミングを行うプログラミング教室や、遠隔地からPepperを介して授業に参加するなど、Pepperを派遣したサポートも行っています。

DO-IT Japanの詳細はこちら

(掲載日:2017年8月28日)
文:ソフトバンクニュース編集部

少年たちと世界一に挑んだ夏、侍ジャパンU-12代表コーチはITサービスの営業マン!

©Gettyimages/SAMURAI JAPAN

7月28日(金)から8月6日(日)に台湾・台南市で、「第4回 U-12 ベースボール・ワールドカップ」が開催されました。日本からは仁志 敏久監督が率いる侍ジャパンU-12代表が参戦。18名のリトル侍たちが野球世界一の座をかけて、強豪国の代表と熱戦を繰り広げました。
そのU-12代表で投手コーチを務めたのが、かつて福岡ソフトバンクホークスなどでプロ野球選手として活躍し、現在はソフトバンク コマース&サービス株式会社(以下「ソフトバンク C&S」)で働く江尻 慎太郎さん。法人向けのデジタルマーケティングツールなどの営業担当として働きながら、少年たちと世界一に挑戦した経験から得たものとは――。

“プロ野球選手代表”の思いを胸に、ビジネスの世界へ

2014年、ソフトバンクホークスで13年間にわたるプロ野球選手としてのキャリアを終えた江尻さんは、その翌年にソフトバンク C&Sに就職します。球団に残ってスカウトとして働く道も選択肢として提示されたそうですが、「せっかくならゼロから新しいことに挑戦したい」と思い、セカンドキャリアとしてビジネスの世界で生きていくことを決めました。

入社後に配属されたのは、さまざまな企業のデジタルマーケティングを支援するチーム。マーケティングオートメーションやソーシャルメディア解析ツールなども提案するためITの知識も求められます。「最初はとにかくIT用語やマーケティング用語、ビジネス用語も全く分からなくて戸惑いましたね(笑)。知らない用語を耳にしたら全部メモを取って、後で調べていました」と江尻さん。入社当初こそ苦労しましたが、プロ野球選手代表としてビジネスの世界でも負けられないという強い決意を持って仕事に取り組むうちに、少しずつ新しい環境に適応していくことができたそうです。

期待と不安を感じながらの投手コーチ就任

入社から約2年。仕事にも慣れ、多数のプロジェクトに携わっていた江尻さんに予想外の出来事が起こります。それは侍ジャパンU-12代表からのコーチ就任オファー。「監督を務めていた仁志 敏久さんとは大学の先輩後輩の関係ですが、野球教室などで2、3回顔を合わせたことがある程度。突然のオファーに正直驚きました」と言いつつも、コーチとして日の丸を背負って戦うことには大きな魅力を感じたそうです。一方で「それまでの侍ジャパンU-12には投手コーチが存在しませんでした。つまり投手コーチを増員するからには明確な結果が求められます。そういった意味でプレッシャーもありました」と就任に当たっては不安も感じていたようです。

また、会社員とコーチ活動を両立できるのか、という心配もありました。「人事部に相談したら『そんな素晴らしい話を断ってもらいたくない』と了承いただけましたし、一緒に働く同僚たちも快く送り出してくれました。こんなに柔軟に働かせてもらっていいのかなと私が面食らってしまったくらい。本当に恵まれた環境で働かせてもらっているな、と実感しました」

伝えたかったのは、学び続ける姿勢の大切さ

侍ジャパンU-12は2017年4月に代表選手18名を選考するためのトライアウトを実施。その後、7月に2日間の合同合宿、そして大会直前の合同合宿を経て8月の本大会に臨みます。実は、メンバーが全員で集まって練習できる時間はかなり限られているのです。

「基本的に細かい技術指導を行うつもりはありませんでした。時間が限られている状況で細かい指摘をすると、部分的な言葉だけが子どもたちの中に呪縛のように残ってしまうかもしれない」と江尻さん。その中で子どもたちに伝え続けたのは、学び続ける姿勢の大切さでした。「例えばピッチング練習では、キャッチャーを座らせた1球目に腕を振ってベストボールを投げなさいと教えていました。数を投げていくうちに良くなってくるのは当たり前。1球目にベストボールを投げ込もうとチャレンジすることが最高の練習なんだと。試合では、相手はピッチャーの調子が良くなることを待ってくれません。難しいのは承知の上で、1球目にベストボールを投げるにはどんな準備をすれば良いか、子どもたちに考えてほしかったんです。準備の段階から常に考え続ける、そんな学び続ける姿勢を維持することの大切さを伝えたいと思っていました」

一試合ごとに成長し、首位タイの成績でスーパーラウンド進出

©Gettyimages/SAMURAI JAPAN

U-12 ベースボール・ワールドカップは、最初に12カ国の参加チームが2グループに分かれてオープニングラウンドと呼ばれるリーグ戦を行います。侍ジャパンU-12代表はチャイニーズ・タイペイ、メキシコ、チェコ、ブラジル、南アフリカと共にAグループ。ここで4勝1敗と首位タイの高成績を収め、6チームのみが進出できるスーパーラウンドへと駒を進めます。

江尻さんにとって最も印象的だったのは強豪チャイニーズ・タイペイとの第4戦。「U-12 ベースボール・ワールドカップではピッチャーの球数制限が細かく設定されており、投手のローテーションが勝敗の鍵を握ります。私も毎日、エクセルで作成したローテーションリストとにらめっこしていました(笑)。この試合では計画していたローテーションをギリギリ守った上で試合に勝つことができたのでうれしかったですね。侍ジャパンU-12のベンチワークは抜群に良かったですし、子どもたちも1試合ごとに急激に成長していたので、スーパーラウンドが楽しみでした」

エクセルで作成した投手のローテーションリスト

プロ野球以上の感動、かけがえのない経験

©Gettyimages/SAMURAI JAPAN

満を持して臨んだスーパーラウンド。侍ジャパンU-12代表はニカラグア、韓国に勝利しましたが強豪アメリカに破れ2勝1敗。オープニングラウンドの成績を持ち越した分と合わせて3勝2敗と6チーム中3位となり、4位メキシコとの3位決定戦に臨みました。試合は両チームともなかなか点が入らない投手戦となりましたが、終盤に1点を奪ったメキシコが勝利。侍ジャパンU-12代表は総合4位の成績で大会を終えました。子どもたちと一緒に世界一を目指した日々の中で、江尻さんはどんなことを感じたのでしょうか。

「心の底から感動しました。実はプロ野球選手を引退したとき、いろいろな人から『この世界で味わったような興奮はもうないよ』と言われました。でも、今回の経験はもしかするとそれを超えていたのではないかと…。子どもたちと日の丸を背負って一緒に戦った経験は本当に、本当に素晴らしかったです。また、自分自身がプレーするよりも、指導して結果が出る方がうれしいと感じたことも新鮮でしたね。コーチという立場なのに私自身に多くの学びがあって、何だか申し訳ないような気分になったほど。だから、子どもたちが今回の経験を通じて“自分自身で考え野球をする楽しさ”を感じてくれていたらうれしいですね」 とU-12 ベースボール・ワールドカップの印象を語りました。

現在、ソフトバンク C&Sでの仕事に加え、スポナビライブで解説者を務めるなどマルチな活躍を続ける江尻さん。「会社員という立場にもかかわらず、いろいろなことに挑戦させてもらっているので感謝の念しかありません。これからも新しいことに挑戦する姿勢を忘れず、既存の概念にとらわれない新しい働き方を体現していきたいと思っています」

ソフトバンク コマース&サービス株式会社 人事部コメント

ソフトバンク C&Sは、社員一人一人が「チャレンジ」する気持ちを常に持ち続けることを大切にしています。今回のコーチ就任のお話も、一緒に働く社員がそのような大役に挑戦できることは大変素晴らしく、会社を挙げてサポートすることにしました。デジタルマーケティングという新しいビジネス分野をさらに広げていくとともに、私たちソフトバンクグループの社員にも改めて“自分自身で考え仕事をする楽しさ”を広めてもらえることを期待しています。

世界に挑戦する社員を応援!

ソフトバンクグループでは世界で活躍する人材を応援したいという思いから、世界に挑戦する社員の活動に対するさまざまな支援を実施しています。ソフトバンク株式会社には「日本代表社員支援制度」があり、日本代表として世界大会に出場する社員を対象として特別有給休暇の付与や活動補助金を支給。仕事と両立しながら複数名の社員がこの制度を利用して世界への挑戦を続けています。

(掲載日:2017年8月28日)
文:ソフトバンクニュース 編集部