プロ野球が開幕して3週間。
前年日本一の福岡ソフトバンクホークスは、工藤公康監督が自ら発案した「もう1頂!(もういっちょ)」のスローガンを掲げて、再び頂点を目指し戦っている。特にシーズン序盤の注目プレイヤーは内川聖一キャプテンだ。プロ通算2,000本安打の偉業まで残りわずか。どの瞬間に、どのような形で決めるのか。
また、球団としても今年は特別な1年だ。ホークスは球団創設80周年を迎えた。
「今のホークスがあるのは、OBの方々や、以前からずっと応援してくださったファンの皆さまのお力があったからです。僕らはリスペクトするとともに、現在のホークスファンの皆さまにもこれまでのホークスのことを知っていただきたいと思い、この80周年事業に取り組んでいく所存です。」
前編に引き続きホークス球団の取締役やマーケティング本部長などを兼任する吉武隆氏に話を聞いてみた。
前編:“日本一愛されるチームを作る” 球場をエンターテインメント化させた福岡ソフトバンクホークス式マーケティング戦略
長い間ホークスを応援し続けるファンにとってはたまらないイベントが今年は実施される。年間5試合を「レジェンドデー」と銘打ち、ホークスのレジェンドOBをヤフオクドームに招く。第1回は3月31日に行われ、野村克也氏と江本孟紀氏がゲストで登場した。第2回は5月5日。不屈の男として人気を博し「カズ山本」の愛称でも親しまれた山本和範氏が来場する。
また、選手たちは「レジェンドデー」専用の特別ユニフォームを着用して試合に臨む。ホークスの過去の歴代ユニフォームのデザインを一部ずつ採用し、現在のものと重ね合わせて80年続いたホークスの歴史と伝統に敬意を表したユニフォームとなっている。
ライト層にもコア層にも楽しんでもらうためのイベント50本ノック
吉武「毎年ヤフオクドームでは試合開催日に多数のイベントを行っていますが、今年は80周年を記念して過去最大級に。今季のヤフオクドームでの主催公式戦は64試合が予定されていますが、うち50試合以上でイベントを開催します。『レジェンドデー』はもちろんのこと、例えば、来場者全員にレプリカユニフォームを配布する『鷹の祭典』は過去最多の10試合(ヤフオクドーム開催は6試合)。人気の『タカガール♥デー』も初めて2試合行いますし、ゴールデンウイークには昨年好評いただいた恐竜ショー『ジュラシックドームⅡ』を開催します。」
ホークス戦におけるイベントは多種多彩だ。過去には本格的な「お化け屋敷」を登場させたこともあったし、縁日やビアガーデンなど、野球観戦とは別形態の来場者サービスを数多く提供している。
吉武「他球団ではあくまで野球ファンに特化したイベントを行うことが多いですが、われわれは野球もコアなファンの皆さまもリスペクトした上で、ライト層に向けたイベントを多く仕掛けています。あまり野球に詳しくない人でも『楽しそうだな』と感じていただきたいし、野球ファンの人が友人や知人を誘いやすくなると思います。」
この地道な底上げが観客動員数25年連続パ・リーグ1位の礎の一つとなっている。球場に足を運ぶことでライト層からコア層へと切り替わる例は多いのだとか。
データでファンの声を聞く「ソフトバンクホークス式データドリブンマーケティング」
吉武「いつも球場へ足を運んでくださる方々もまた、本当に大事なお客さまです。昨年から『タカポイント』を導入しました。」
タカポイントとは、チケットやグッズ、飲食の購入でマイレージのようにポイントが貯まる仕組みで、チケットやグッズ、イベント参加権などに交換することができる。ファンにとってはお得感たっぷりのうれしい仕組みだ。一方で、球団側のメリットも大きい。
吉武「データ管理がしやすくなりました。性別や年齢、どんな層のお客さまがどの席に多く座られているのか、どのような飲食やグッズが好まれているのか。それに基づきニーズに応えてアプローチをしています。
昨年は、公式ファンクラブ『クラブホークス』会員さま(=タカポイントの会員)の1人当たりの年間売上が約4割増となり、1試合当たりの来場者数や年間来場回数も約3割増となりました。タカポイントを通じて購入されたお客さまには試合前日と試合後にメール配信も行っていて、その効果もあったのではと感じています。」
また、売上でいえば「鷹の祭典」や「タカガール♥デー」など人気イベント試合では飲食やグッズの売上が通常の3.5倍にもなるという。ホークスではその試合だけのために限定の飲食メニューを開発したり、グッズを製作したりしている。ファンの購買意欲を刺激する新商品をきっちり提供できるのも、タカポイント会員向けに日頃からアンケートを実施するなど「ファンの声」と向き合っているからだ。
「全国の明太子になれ」
吉武「ユニフォームを着て戦う選手たちが日本一を目指すように、われわれはファンの皆さまから日本一愛されるホークスを目指して日々精進しなければなりません。」
そのように力を込めた吉武氏が、少し照れくさそうに言葉を継ぐ。
吉武「後藤(芳光)球団社長からは『明太子になれ』と言われていますから。」
ホークスが、明太子に??
吉武「明太子って福岡名物ですけど、今や全国的な食べ物じゃないですか。福岡に限らず全国どこの食卓にも並ぶくらいお馴染みですよね。ホークスもそうなりたいんです。全国どこでも、日常生活の当たり前の会話の中でホークスのことが話題に出てくるような。ただ、軸足は福岡にしっかり置いておかないと。まずは福岡、そして九州で愛されないと、全国区となることは出来ないですから。」
常に魅力ある球団であり、「前進」という名の変化を続けるホークス。近い将来には「最大限の増席」(吉武氏)なども視野にまた魅力あふれる球場へと生まれ変わる可能性も模索中だ。
何度でも足を運びたくなる最初の一歩を、ぜひ今シーズン中にまず踏み出してみてはいかがだろうか。
2018年はホークス球団創設80周年
福岡ソフトバンクホークスは、今年で「球団創設80周年」、また来年2019年シーズンには、「ホークス福岡移転30周年」を迎えます。そこでホークスでは、メモリアルイヤーとなる2018年~2019年の2年間にわたって、さまざまな企画やイベントなどを展開する予定です。詳しくは「ホークス球団創設80周年サイト」をご覧ください。
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(掲載日:2018年4月20日)
文:田尻耕太郎(フリーライター)