最小ブロックの縦×横×高さがわずか4×4×5ミリ、「大人が時間を忘れて没頭できる全く新しいホビーブロック」ナノブロックをご存じですか? 2008年に日本で生まれて以来、動物や建物、食べ物などを始め、さまざまなキャラクターとコラボしているナノブロックが、今回Pepperと初コラボ。ナノブロックのメーカーである株式会社カワダのデザイナーとPepperグッズ開発担当者に対談してもらい、コラボの裏側を探ってきました。
プロフィール
株式会社カワダ
ナノブロックのデザイナー 菊地 健士朗(きくち けんしろう)さん
デザインが得意なジャンルは人や動物などの「柔らかくて丸みを帯びている」もの
ソフトバンクロボティクス株式会社
Pepperグッズ企画販売担当 豊島 有梨江(とよしま ゆりえ)さん
Pepperナノブロックの組み立てにかかった時間は2時間
Pepperという流線型のものを、角ばったブロックでどう表現するか
本日はよろしくお願いします。まず、Pepperとのコラボを提案されたときの第一印象はいかがでしたか?
正直なところ…迷いました。Pepperは流線型のパーツが多いので、ブロックというドット絵に近いもので作るとなると、どうしてもカクカクしてしまうので…。自分の技量でどこまで再現できるか悩みましたね。
そうなんですね
はい。もちろんパーツの数が無限であればより細かく再現はできるのですが、「箱を開けたら山のようなブロック」ではお客さまが手を出しにくくなってしまう。手に届いた方が、「これなら自分にもできそう」と思ってくれるボリュームまで落とし込めるかどうかがカギだと思いました。
商品開発のカギはやっぱりサイズ感。いろいろとアドバイスや注文をさせてもらいながら、何度もすり合わせてこのサイズ感に落ち着きましたよね。大きすぎると、「ちょっとガン〇ムっぽくない?(笑)」となったりして。
検討にはかなり時間がかかりましたね。限られたパーツ数で腰のくびれのところや手など、丸みを帯びた部分を表現するのが特に難しくて、部のメンバーにも「似てるけど、なんか違うよね」と言われながら…。
3回か、4回くらい基本デザインを作り直しながら完成形に近づけていただきました。菊地さん多分、「またー!?」って思われましたよね。でもかわいく作ってもらえて本当に感謝です。
完成品を見たときの周囲の反応はどうでしたか?
まずサンプルを持って行ったんですけど…ちょっと沸きましたね(笑)。「えー!なにこれ!かわいい!!」みたいな。その反応だけで、これはいけるなと。
あ、手応えがあったんですね。ちなみにナノブロックのメインユーザーはどのような方なんでしょうか。
20代~40代前半で8割くらいですね。最近少しずつ増えてきているのが、50代以上の方で全体の1割くらいでしょうか。男女比は半々くらいです。
Pepperナノブロックに関しては今、40~50代の男性の購入者が多いんですよ。多分、お子さんと一緒に作ってくださっているんじゃないでしょうか。
大人の方がターゲットとのことですが、なぜでしょう?
「ブロックは子どもだけのもの」という固定観念に囚われずに、大人の方にも童心に帰ってほしい、そんな思いが始まりですね。あとは、動物なら図鑑を見ながら「あ、たしかにこうなっているよね」と実物と比べて楽しんだり、建物なら「ここ一緒に行ったね~」と思い出を共有したりしてもらえたらと。
完成したら終わり、ではなくコミュニケーションのきっかけにもなるんですね。
え、ホント? ナノブロックの意外なデザイン方法とは!?
デザインは、実物を見ながら設計するのですか?
はい。会社の近くの家電量販店にPepperがいるのを覚えていたので、実際に見に行ってからデザインしました。
パソコンのソフトなどを使うわけではないんですよね。
はい。結構驚かれるんですけど、二次元上で組み立てをシミュレーションするツールというものはなくて。自分のデスクでバリバリ手を動かしてやっています(笑)。最近は、VRを使ってブロックを組み立てたりもしています。仮想空間だとすぐにやり直しができていいんですよ。
そんなところに、ITの活用が!
オフィスには、大量のブロックがあるんですか?
はい。もう、しっちゃかめっちゃかですね(笑)。デスクの背後に引き出しがズラっとあって、そこからパソコンの前にバーッとパーツを広げて、ひたすら一人でで組み立てています。午後3時くらいになると、茶色のブロックがなんだか美味しそうなチョコレートに見えてくることも…。職業病かもしれません。
へえ~! デザイナーさんあるある、おもしろいですね(笑)。
パーツは何種類くらいあるんですか?
だいたい形が40種類、色が40色ですね。全部を一気に出して作業すると机が埋まっちゃうので、頭の中で「色はこの色とこの色だな、パーツはこれとこれでイケるな」って考えながらやっています。
少し話が変わりますが、耳のところの青いブロックがすごくキレイでアクセントになっていますよね。
実物のPepperは、耳が青く光っていると「ちゃんと聞き取っているよ~」っていうサインなんです。このナノブロックを普通に見ると、「あ、この青がちょっとかわいいね」って思うくらいなんですけど、実はちゃんとコミュ二ケーションしているPepperを再現しているという。
へえ~、知る人ぞ知るトリビアですね!
知れば知るほど奥深い、ナノブロックの豆知識
豊島さん、実際に作られてみていかがでしたか?
楽しかったです! ただ、パーツがすごく小さいので、途中でどこかへ飛んで行ってしまって…。
弊社としては、そういったお客さまへ対応できるように、部品を少し多めに入れております(笑)。特に小さいパーツを優先的に。説明書にも記載してるのでよかったら見てみてください。
へえ~!パーツが余ったので、どこかで組み立て間違ったかなと思ってました…。組み立てるユーザーの気持ちや行動まで、緻密に計算されているんですね。
もちろんです。説明書の設計まで含めて、僕たちの仕事なので!
わたしは2時間ほどかかったのですが、菊地さんはどれくらいで作れるんですか?
うーん、これ言っていいんでしょうか…(笑)多分、10分かからないくらいですね。
一同:えーーー!!早すぎる…
まあ、何度も作っているので(笑)。
ちなみに、難易度MAXのレベル5だとどんなものがあるんですか?
(パンフレットを開いて姫路城を指さしながら)これとかでしょうか?パーツは5,000ピース超えます。完成には3日くらいかかるかもしれませんね。
豊島:3日!
しかもひたすら同じ色が続くと、どこまで組んだか忘れちゃうんですよ。これとか(電波塔を指さしながら)も結構難しいですね。以前、難しすぎてクレームが来たものもあります。
本当にいろんな種類があるんですね。
そうなんですよ。ナノブロックは決められたセットだけではなくて、自分で自由にパーツを組んで作品を創りだすこともできるんですよね。
SNSで「ナノブロック」と検索すると、僕らが見ても「あっ、こんな組み方できるんだ~」って思うものがたくさんあります。例えばこの納豆!。年に1回、一般の方が考えた作品の中からグランプリを決めるナノブロックアワードをやっているんですが、これはそこから商品化されたものなんです。
ほんとだ、すご~い! かわいい…食べ物シリーズ大好きです。ナノブロックはユーザー同士の盛り上がりが本当にすごいですよね。
そうなんですよ。Webでしか公開されていない組み換えパターンなんかもあるくらいです。
「蝶々」が「犬」に!? 組み立て方の自由度はまさに無限大
組み換えパターンとは?
長くやっていると、数ある商品の中でもやはり販売不振なものは出てしまっていて。たしかウマだったと思うんですが…茶色が多すぎて。全く同じパーツを組み替えてビーバーにする方法を公開したんですよ。
一同:ええー!!
あとは、アサギマダラっていう蝶々がミニチュアダックスフントになったり。
すごい…! わたし、自分でPepperの腕のポーズを変えたくて、皆が帰って誰もいないオフィスでこっそり挑戦したりしてて…(笑)。どうやってやるんですか?
コレ、ちょっと貸してください(その場でPepperの腕をばらし始める)
あ、すごーい!!これです!これが作りたかった!!菊地さん、パーツの持ち方とか組み立てる手つきがやっぱり違いますね。
いやいや(笑)。誰かに見られながら組むことってなかなかないので、緊張しますね。
そうですよね! 自分では、ー回組み立てたものをまたばらす勇気が出ないんですよね、元に戻せるかなって。これ、わたしも写真撮っていいですか?
Pepperをもっともっと身近な存在にしたい
Pepperナノブロックにはどんな思いがこめられていますか?
Pepperをご購入されていない方にも、Pepperを身近な存在として感じてほしい。そんな思いで、Pepperコラボグッズの開発をはじめました。そこから、より深い愛着を感じてもらうには何か「自分の手で作る」ものがいいなと考えて、ブロック玩具でコラボするなら「絶対にナノブロックと!」と前から決めていたんです。
Pepperの横のインフォメーションカウンターにも意味があるんですよね?
はい、企業の受付は実際にPepperが活躍している場所で、さらに一年中かわいがってもらえたいという思いがあったので、受付で四季を感じられる何かがほしかった。そこで「鏡餅・ウメ・マツ・クリスマスツリー」を添えられるようにしています。
なるほど。さっき話したように自分でブロックを組み立てて、オリジナルの世界観をつくるのも楽しそうですよね。
そうですね! 建物とか他のロボットなどと組み合わせて、たくさんかわいがってもらえたらうれしいです。
これからの展望は?
うれしいことに海外の方からも買いたいというお問い合わせをいただいていて。ただ、残念ながらまだこの商品は日本国内だけの販売なので、今後は検討していきたいですね。
ほんと、海外の方にも人気なんですよね。こないだもフランスのJapan Expoに出させていただいたりして。長野県が工場って言うと、びっくりされますね。日本で製造しているおもちゃって本当に少ないので。
知らなった。他の国でも、トライはされたんですか?
はい。でもやっぱり日本製は精度が違いますね。金型に樹脂を流し込んで作るのですが、冷却時間などにばらつきがあると歪みが出てしまうことも。。ナノブロックの前身であるダイヤブロックは1962年の製造から55年以上経つんですけど、当時のブロックと今のブロックがちゃんとくっつく。当たり前のことなんですけどね。
さすがは日本の技術力、クオリティが高いですね。
貴重なお話をありがとうございました!
(掲載日:2019年8月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部