スマホの製品情報には、電池(バッテリー)の項目に「〇〇mAh」と必ず書いてあります。バッテリーに関する何かを示す単位であることは確かですが、実際にどのような意味があるのか、知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「mAh」が何を表しているのか、電圧や電流といった電気の基本から解説します。さらに、スマホを安全に効率よく使えるように、充電の仕組みやモバイルバッテリーを選ぶ際の注意点も併せてご紹介します。
「mAh」は何を表しているの?
「mAh」は「ミリ・アンペア・アワー」と読みます。バッテリーの容量を示す単位で、「放電容量」とも呼ばれています。バッテリーの容量とは、バッテリーが100%の状態から0%になるまでに放出される電気量のこと。放出するということは、それだけの電気量を「蓄えられる」とも言い換えられますね。
単位を1つずつ見ていきましょう。「A(アンペア)」は電流を表す単位ですが、スマホなどに使われるバッテリーは容量が小さいため、1000分の1の単位「m(ミリ)」が付いて「mA(ミリアンペア)」と表すのが一般的。「h(アワー)」は単位時間で、この場合は1時間を意味します。
つまり、mAhは「1時間に流せる電流」を表します。たとえば100mAhは、100mAの電流を1時間流せる容量であることを示しています。このバッテリーの仕組みをわかりやすく図にしました。
ペットボトルの中の水量がバッテリー容量(mAh)、そしてストローを流れる水が電流(A)を表しています。2500mAhの容量を持つバッテリーの場合、2500mAの電流を流すと、1時間でペットボトル(=バッテリー)は空になります。半分の1250mAの電流を流すと2時間バッテリーが持ちますが、2倍の5000mAの電流を流せば30分で空になります。
2500mA × 1時間 = 2500mAh
1250mA × 2時間 = 2500mAh
5000mA × 0.5時間 = 2500mAh
このようにmAhは、ある大きさの電流を流したときにバッテリーがどれだけ持続するかを表す単位です。mAhの数値が大きいほど、バッテリーの容量が大きく、1時間あたりに流れる電流も大きいということを示しています。
最新のスマホのバッテリー容量はどれくらい?
では最新のスマホはどれくらいのバッテリー容量なのでしょうか。現在販売されているスマホは、3000mAh以上のバッテリーを搭載している機種がほとんどです。2~3万円台で購入できる一部のエントリーモデルや、小型・軽量のコンパクトさが特徴のモデルなど容量が3000mAh未満の機種もあります。10万円前後のハイエンドモデルでは4000mAh以上の容量も珍しくありませんが、価格に限らず3000mAh~3500mAhがスマホの平均的なバッテリー容量と言えるでしょう。
しかし、容量が大きいからといって電池が長持ちするとは限りません。なぜなら電池の消費量は、ディスプレイの大きさや搭載するCPUなどのスマホの性能、そしてユーザーの使い方によって大きく左右されるからです。
たとえば、大型ディスプレイを搭載するスマホの場合、表示領域が広いため、ウェブサイトや写真の表示にかかる電力は大きくなります。また、直射日光下の屋外などでは画面の明るさレベルも高くなり、さらに電池を消費します。
ディスプレイの解像度によっても消費電力は変わってきます。解像度が高ければ高いほど、それだけ高精細な映像を描写しようとしますし、ゲームはタッチ操作に応じてスムーズに動作する必要があるので、高い画像処理能力が求められます。この画像処理にも大きな電力が必要になります。
また、スマホはスリープ状態でも電力を消費しています。電話やメッセージが着信すると通知が届きますが、それはスマホが定期的にWi-Fiアクセスポイントやキャリアの基地局と通信しているから。そうしたバックグラウンド(見えないところ)での通信や処理にも電力を消費しています。
ペットボトルの図でいえば、屋外で頻繁に調べものをしたり、大画面のスマホで動画やゲームを楽しんだりしていると、水(電流)をどんどん流す必要があるので、バッテリーの減りが速くなるんです。電池持ちはスマホのスペック、そして日々の使い方によって大きく変わることを覚えておきましょう。
なぜ速い? 急速充電のしくみ
スマホの充電器を買い替えたら、充電スピードが遅くなってしまった。そういった経験はありませんか? 実は充電速度の差には、充電器が対応できる電力(W)の大きさが関係しています。
そもそも「充電」とは、バッテリーに電力(W=ワット)を蓄えること。この電力(W)は、電圧(V)×電流(A)で計算できます。先ほどのペットボトルの図で説明すると、ペットボトルの高さが電圧に当たります。高いところから水を流すと勢いが増し、同じ時間でより多くの水が流れ出ますよね。
つまり、対応するW数が大きい(=電圧と電流が大きい)充電器ほど、充電スピードは速くなります。これが、急速充電のしくみです。
ただし、注意したいのが、スマホには安全に充電できる最大W数が定められていること。18W(まで)に対応するスマホの場合、同じ18Wの充電器を使用すれば上限いっぱいの速度で充電できます。スマホの最大値を超えるW数の充電器で充電しても、対応W数以上の速度にはなりません。
モバイルバッテリーは電池のロスが起きる?
いくら速く充電できても、外出先ではなかなか充電できませんよね。外出中に電池切れにならないためにも持っておきたいのが、モバイルバッテリー。持ち運びできて、いつでもどこでも充電できるのでとても便利です。
スマホのバッテリーと同じように、モバイルバッテリーの容量も「mAh」で表されます。容量が大きいほど充電できる回数が増え、たとえば10000mAhのモバイルバッテリーなら、2500mAhのスマホを4回充電できる計算になります。
2500mA × 4回 = 10000mAh?
ところが、モバイルバッテリーから充電すると容量の一部が失われてしまい、記載されている数値よりも低い容量しか充電できないことがあります。この「電力のロス」が起きる理由は、モバイルバッテリーとUSBケーブルの電圧のちがいにあります。
ほとんどのモバイルバッテリーは、機器を安全に使用できる最大電圧を示す「定格電圧」が約3.7Vのリチウムイオン電池が採用されています。この電圧の値はスマホのバッテリーも同じです。
しかし、スマホとモバイルバッテリーを接続するUSBケーブルの定格電圧は5V。つまり、モバイルバッテリーからUSBに出力するには電圧が足りません。
電力を供給するには、同じ電圧に変換する必要があります。実はモバイルバッテリー(3.7V)➡USB(5V)と昇圧する際に、電力が失われているんです。また、電圧変換はモバイルバッテリー内の電子回路で行いますが、そもそもこの回路を動かす電力としてモバイルバッテリーの容量が使われています。
さらに、電力の一部は熱として放出されます。充電中にバッテリーが熱くなるときがあるのはこのためです。
このように、電圧を変換したり熱として放出されたりして失われる容量はおよそ40%と言われており、実際に充電できるのは表示容量の約60%です。10000mAhのモバイルバッテリーなら、実容量は6000mAhほど。2500mAhのスマホを2.4回充電できる計算になります。ただし、実際にはモバイルバッテリーの出力電流(A)の大きさや、電圧変換を行う回路の性能、使用するUSBケーブルの長さなど、さまざまな要因によってこの割合は変わってきます。
モバイルバッテリーを購入するときは、電圧変換によるロスを見越して、必要な容量を搭載する製品を選びましょう。
容量・機能別におすすめのモバイルバッテリーを紹介
バッテリー容量の仕組みが分かると、モバイルバッテリー選びにも役立ちそうですね。こちらでは容量や機能別にモバイルバッテリーをご紹介します。用途に合った1台を探してみてください。
コンパクトで持ち運びに便利!
RAVPower 5200mAh モバイルバッテリー PSE対応
過充電やショート、バッテリーの過剰放電などを防ぐ保護機能を搭載しており、PSE(電気用品安全法)対応。普段からバックに入れて持ち歩きたい1台ですね。
大容量で出張や旅行でも安心!
RAVPower 10400mAh モバイルバッテリー PSE対応
こちらもPSE対応の大容量バッテリー。2.4A(2ポート同時最大3.4A)の出力でスマホだけでなくタブレットへの充電もできます。出張や旅行だけでなく、停電など、いざというときにも役立ちそうです。
大容量で急速充電にも対応!
RAVPower 10000mAh PD対応モバイルバッテリー
出力が18Wで急速充電ができるバッテリーです。10000mAhと大容量なので、スマホのヘビーユーザーにぴったり! こちらはソフトバンクショップで取り扱っています。
普段は高音質なスピーカー、いざというときはバッテリーに!
ESQUIRE MINI 2
モバイルバッテリー機能を備えた、Harman KardonのスリムなポータブルプレミアムBluetooth®スピーカー。2200mAhバッテリー内蔵で、いざという時にスマートフォンを充電することができます。
(掲載日:2019年12月26日)
文・編集:ゴーズ