12月17日・18日の2日間、東京・日本橋でムーンショット国際シンポジウムが開催されました。17日に実施されたソフトバンクグループ代表取締役会長 兼 社長の孫正義による基調講演の内容をご紹介します。
ムーンショット国際シンポジウム
2018年に総合科学技術・イノベーション会議が中心となり、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を掲げて、世界中の研究者の英知を結集しながら、困難な社会課題の解決を目指す「ムーンショット型研究開発制度」が創設されました。「ムーンショット国際シンポジウム」は社会課題等の解決に資する目標設定のあり方、目標達成に向けた研究開発の進め方などについて、国内外の有識者が集い議論するシンポジウムです。
日本におけるムーンショット実現のカギは「超高齢化社会」
海外からも多数の有識者が参加した基調講演で、孫はインターネットの普及が本格化した1995年以降、GDPがほぼ横ばいで推移している日本の現況を紹介。成長を続ける米国や中国のGDPを超えることが日本にとってのムーンショットであり、追いかけるべき最も重要な「月」だと述べました。
そして、ムーンショット実現のポイントとして挙げたのが、世界で最も進行している高齢化社会とそれに付随する2つの課題の解決です。
1つ目の課題は、高齢者ドライバーによる交通事故の増加。課題解決のためには、AIによる自動運転が不可欠であり、将来的に安全性は人間の運転を超えるだろうという見解を示しました。課題の2つ目は医療費の増大です。これに対してはDNAを中心に据えたメディカル・サイエンスが、抜本的な解決策になると解説しました。
そして自動運転とDNAベースの医療には「データバンク」と「AIエンジン」が必要であると述べました。
AI学習の義務化、入試科目への追加を提言
また、孫は人工知能分野における世界の大学ランキングを示し、日本の大学が上位10校に含まれていないことを指摘。入試科目への「AI」追加と、AI学習の義務化を提言しました。
最後に、限られたリソースの中でムーンショットを実現するためには、すでに日本が世界的な市場を持っている自動車産業、そして高齢化社会でカギとなる医療産業への集中が必須であると再度強調。これらの分野でAIプラットフォームを有していないアジア諸国を巻き込むことで、米中のGDPを超えるという「月」に到達することができるだろうと自らの構想を語り、講演を締めくくりました。
(掲載日:2019年12月25日)
文:ソフトバンクニュース編集部