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「統合報告書」を読めば企業が分かる。拡大するESG投資に向けた新しいレポートのカタチ

「統合報告書」を読めば企業がわかる? 拡大するESG投資に向けた新しいレポートのカタチ

みなさんは「統合報告書」って聞いたことありますか?
企業が社内外とのコミュニケーションに活用するツールとして発行するのが、ここ2~3年のトレンドなのだそうです。いったい統合報告書とはどのようなものなのでしょうか? ソフトバンクで統合報告書の作成に携わっている担当者に、詳しく教えてもらいました。

今回、話を聞いた人

遊木 宏一(ゆうき・こういち)さん

ソフトバンク株式会社 財務統括
財務戦略本部 IR室 室長
遊木 宏一(ゆうき・ひろかず)さん

企業の果たすべき役割が変わった。持続可能な社会と成長の実現を統合報告書でアピール

企業の果たすべき役割が変わった。持続可能な社会と成長の実現を統合報告書でアピール

今日は統合報告書について、いろいろ教えてください。ズバリ、統合報告書って何でしょうか?

端的にいうと、どんな会社なのかを理解していただくためのツールですね。

少し詳しい会社案内みたいなものですか?

確かにそう活用できるものかもしれませんが、実は全部で100ページ以上あるんですよ。

100ページ以上! すごい情報量なんですね…。

統合報告書は、企業のステークホルダー(投資家、金融機関、お客さま、取引先、社員など)の方々と建設的な会話をするためのコミュニケーションツールなんです。読み応えは十分ありますが、いろいろな情報が網羅されているので、会社のことをよく理解していただけると思います。

例えば、どんな情報でしょうか?

大きく分けて2つの情報があります。まず、財務情報。売り上げや利益など、当社の業績に関する情報です。もうひとつの要素が非財務情報です。ESG投資が重視されている海外では日本に先行して「インテグレーテッドレポート」として発行されています。両方の情報を統合して中長期の成長ストーリーを説明するので、インテグレーテッド(統合された)レポートなんです。

非財務情報とは具体的にどんな情報ですか?

売り上げや利益を創出する源となる、会社の “資本” ですね。例えば、経営理念やビジョン、技術力などの競争優位性、経営者や社員に代表される人的資本、ガバナンスへの取り組みといった情報を包含しています。

なるほど。これまでも企業はそういった情報を発信してきたと思うのですが…。

そうですね。企業は「アニュアルレポート」(年次報告書)で事業戦略や会社の強みに関する情報を発信してきました。その後、環境問題や企業の透明性と説明責任への期待の高まりなど、事業環境に大きな変化が起こり、2006年には、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点を投資判断に反映させるべきとの責任投資原則(PRI)が国連から提唱されました。これをきっかけに企業に対するESG情報の開示要求が高まり、IIRC(国際統合報告委員会。現Value Reporting Foundation)が財務・非財務の両面から企業の成長戦略を報告する枠組みである「国際統合報告フレームワーク」を公表しました。従来の財務情報を中心とした情報開示ではなく、ESG要素を盛り込んだ、中長期の成長ストーリーの訴求が求められています。

企業の開示資料

企業は投資家から投資をしてもらうことを目的に、業績や財務状況を正確に伝えるための資料を開示しますが、開示書類にはいくつかのルールがあります。

「有価証券報告書」は、法律で開示が義務付けられた法定開示資料です。上場企業が四半期ごとの決算を迎えた後、45日以内の提出が証券取引所の適時開示ルールによって規定されているのは「決算短信」。

企業の開示資料

「アニュアルレポート」や「統合報告書」は情報公開という観点から、株主や投資家、金融機関向けに経営内容についての総合的な情報を開示するもので、開示は企業の任意で行われます。

ソフトバンクはいつから統合報告書を発行しているのですか?

2018年12月に上場し、初年度はアニュアルレポートを発行しました。合わせてESG情報を開示する準備を始めていて、初めての統合報告書は2020年12月に発行しました。今回の2回目となる発行は2021年9月。英語版は10月の発行です。新たな価値を提供し、社会をよくしていきながら利潤を得て企業として成長していくという、ソフトバンクの目指す方向性を理解していただけるよう、今後の方針と戦略、事業展開とその見通しについてご紹介しています。

「統合報告書」でソフトバンクの何がわかる? 注目コンテンツはこれ

「統合報告書」でソフトバンクの何がわかる? 注目コンテンツはこれ

ソフトバンクの価値創造プロセスの概念図

制作するにあたり、重点を置いたポイントは何でしょうか?

「価値創造プロセス」を明確にすることですね。ソフトバンクの成長戦略は「Beyond Carrier」。今年6月の株主総会でも宮川社長は「ソフトバンクはもはや通信会社ではない」と述べているように、われわれのビジネスモデルは変化してきています。ソフトバンクが持つアセット(資産)は何か? それらをどうビジネスとして回していくのか? そして企業として最後にどのような姿を目指すのか? こういった「価値創造プロセス」を投資家は注目しています。

「価値創造プロセス」の説明には、非財務情報が重要になるわけですね。

価値創造プロセスは、価値を創造するための企業活動全体を簡潔にまとめたものです。そこには事業戦略だけではなく、機会とリスクを明示したうえで、財務・社会関係・人的・知的・製造・自然資本といった企業の資本をどのように活用し、どんな戦略でどのような商品・サービスを提供し、その結果、どのような価値を創出するかを訴求します。

財務情報に出てくるのは売り上げ、利益やキャッシュフローですが、それを創出するためのソフトバンクならではの強みや他社と比べた優位性を訴求することも重要です。例えば、グループの中にヤフーやPayPayなどのインターネット企業があることや、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先と連携できる点を通じ、通信以外のビジネスを拡充し事業の多様化を図っていることはしっかり伝えたいですね。

「統合報告書」でソフトバンクの何がわかる? 注目コンテンツはこれ

ほかに、ソフトバンクならではの特長はありますか?

役員インタビューが厚いところですね。ソフトバンクにはマネジメントの強みがあります。いわゆる「サラリーマン役員」と違い、ビジネスの次の軸足をどこに置くのかという長期目標を語ることができます。これからも関連会社のトップなど魅力的なマネジメント層のメッセージを発信していきたいと思っています。

「統合報告書」でソフトバンクの何がわかる? 注目コンテンツはこれ

「なぜ宮川社長が選ばれたのか」というインタビューもユニークです。

ソフトバンクは創業者の孫正義のDNAを継いでいますが、独立した上場会社です。コーポレート・ガバナンスがきちんと機能しており、社長交代は “鶴の一声” で決まるわけではないことをつまびらかにお伝えしたいと考えました。そこで当社の役員選任の仕組みが機能していることを明らかにするため、経営陣の選解任を議論する指名委員会の堀場委員長にインタビューして、新社長が決まった経緯などを説明していただきました。

なぜ宮川社長が選ばれたのか

ガバナンスへの取り組みについて説明することも重要なのですね?

ガバナンス面の発信は重きを置いて、株主に不利益にならない経営をしているというところをきちんとアピールしています。少数株主の代表者として社外取締役がいるので、意見をしっかり聞いてページも割いています。非財務情報として非常に重要な要素です。

環境への取り組みはどうでしょうか? ソフトバンクはほかに「サステナビリティレポート」も発行しています。

成長性がある企業がその過程で社会に悪影響を与えているのでは、持続性がありません。ソフトバンクが取り組んでいる社会課題を解決する取組みについて統合報告書の中でご紹介していますが、詳細化されているのが「サステナビリティレポート」です。

最後に、「統合報告書」を読む方に向けてひと言お願いします。

ソフトバンクには多くの株主の方(約85万人/2021年9月末)がいらっしゃいますし、お客さまや関係者などのステークホルダーも非常に多数です。統合報告書には、ソフトバンクに関するさまざまな情報を掲載し、多くの方に向けて発信しています。これを読めば、ソフトバンクが新しい価値・未来が作れる、強い会社であることを理解していただけると信じていますので、ぜひ、多くの方に読んでいただきたいですね。

ありがとうございました。

総合報告書 2021

「統合報告書 2021」は、財務・非財務の両面から、ソフトバンクの価値創造のための戦略や企業価値を支える基盤についてご説明しています。

総合報告書 2021は、
こちらからご覧ください

(掲載日:2021年11月2日)
文:ソフトバンクニュース編集部