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目先の変化にとらわれず、長期的な進化を信じる。-ソフトバンクグループ株式会社 2022年3月期 決算説明会レポート

2022年5月12日、ソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)の2022年3月期 決算説明会が開催され、代表取締役 会長兼社長執行役員 孫正義が、2021年度の連結業績や今後に向けたSBGの構えなどを説明しました。

目次

守り:継続的な資金化、投資基準の厳格化

世界情勢は今、新型コロナウィルス感染症のまん延や、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻などの混沌とした状況により、原油価格、物価、金利などが上昇し、株式市場にも大きな影響を与えています。こうした状況の中で孫は、SBGがどのように「守り」を固め、「攻め」の構えを持つかを説明しました。

最初に強調したことは「守り」です。SBGの2021年度の純利益はマイナス1.7兆円。これは、前年度が5兆円のプラス、さらにその前年度がマイナス1.0兆円という実績が示す通り、戦略的投資持株会社であるSBGの業績は、保有する株式の公正価値などにより、会計上大きく乱高下する傾向にあります。そこで、SBGが最重要とするNAV(時価純資産)とLTV(純負債/保有株式)の2つの指標から状況を見ていきます。

まずNAVについては18.5兆円と、3カ月で0.8兆円減少しました。しかし全体状況では、かつて6割を占めていたアリババグループの割合が2割まで減少する一方、さまざまな企業の株式で構成されるソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下「SVF」)が約5割まで上昇しており、分散が着実に進んでいます。

守り:新規の投資は回収した資金で賄うエコシステムで

もうひとつの最重要指標であるLTVにおいても20.4%と、SBGの財務方針である平常時で25%未満の水準を3年以上維持。また、手元流動性は2.9兆円で、今後2年間に発生する1.3兆円の社債償還スケジュールに対しても、十分な余力を持っています。加えて、2022年11月までに最大1兆円実行すると発表している自己株式取得※については、6カ月で43%まで進捗。買い戻した株は消却を予定しています。

守り:新規の投資は回収した資金で賄うエコシステムで

守り:新規の投資は回収した資金で賄うエコシステムで

また、2021年度(12カ月累計)における投資資金5.2兆円(SVFへの拠出など)に対して、資金化(保有する上場株式の売却やアセットバックファイナンスなど)は5.6兆円であり、「新規の投資は、回収した資金で賄うというエコシステムが回り始めている」と説明しました。昨今の世界情勢を踏まえ、現状を「守りの姿勢を固める状況」という孫は、継続的な資金化をさらに進め、投資基準の厳格化によりLTVを平常時で25%未満で運営するようしっかりコントロールしていくと、回復期に備える姿勢を強調しました。

守り:新規の投資は回収した資金で賄うエコシステムで

攻め:成長し続けているArmとソフトバンク・ビジョン・ファンド

続いて孫は、「守り」を固めた上での「攻め」について説明しました。「今持っている持ち駒の中で攻める」という孫は、その中心となるのは、成長し続けているArmの存在だと語ります。Armのチップは2021年度に290億個が出荷されていますが、重要な点は出荷個数の単純な増加だけでなく、チップの性能の向上にあるといいます。SBGがArmを買収した2016年当時は「バージョン8」と呼ばれるものでしたが、2021年から「バージョン9」の出荷が始まりました。「バージョン9」は5Gのデバイスの大半に搭載され、クラウドやオートノマスのような大規模なシステムに大きな需要があり、Armの業績のV字回復をけん引しています。

攻め:成長し続けているarmの存在

孫は「ワット当たりの電力に対し、どのぐらいの演算能力を持つかがクラウドや電気自動車においての鍵。これからArmの独断場になるのではないかと思っている」と語り、性能面においても、情報革命の中心的存在として期待を寄せました。

また孫は、記者の質問に答える中で、すでに475社に出資しているSVFについても、来年以降に市場が回復してくれば、攻めのタイミングが来るだろうと予測。「攻めと守りをと、状況を見ながら行っていく」としました。

攻め:成長し続けているarmの存在

情報革命は止まるのか?

短期的な決算説明に合わせて「守り」と「攻め」を述べてきた孫ですが、長期で見たときに「情報革命は止まるのか?」と問いかけ、その例として過去のインターネットがどのような成長軌道をたどったかを、世界の時価総額を用いて俯瞰的な説明を試みました。

情報革命は止まるのか?

それによれば、1994年を「1」としたとき、2000年には30倍に成長します。しかしネットバブルの崩壊で2001年には10倍まで下落。そこから2007年にかけて100倍になり、2008年にはリーマンショックの影響で50倍まで半減し、2021年には2,400倍にまで増大しました。

「そして現在、2,400倍が1,800倍に減った。これによりSBGが保有しているSVFの価値やNAVなどが下落している。過去3回、大きな下落があったが、その最中に手放すのか、むしろ買うのか。そのときに買った人は勇気がある人で、勇気のあった人はあとで報われているということです」と、目先の変化にとらわれず、長期的な進化を信じることの重要性を語ります。

最後に、改めて手元にしっかり現金を備えながらも、基準を厳格にして投資を行う「守り」の構えと、Arm、SVFという「攻め」の構えに触れ、「必ず創業以来のわれわれの理念である情報革命で人々を幸せに、これを継続していきたい」と不退転の決意を語り、説明を終えました。

情報革命は止まるのか?

※ 財務方針・投資機会・NAVディスカウント等を考慮のうえ実施(2021年11月9日から22年11月8日までの1年以内に取得額が1兆円に達しない可能性があります)

資料 プレゼンテーション資料(PDF形式:6.20MB/90ぺージ)

免責事項

(掲載日:2022年5月11日、更新日:2022年5月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部