昨今の海外ECサイトの台頭や、新型コロナウイルスに伴う行動制限緩和など、オンラインショッピングを取り巻く環境が大きく変わる中、右肩上がりに業績を伸ばす株式会社ZOZO(以下、ZOZO)が昨年12月に初のリアル店舗である「niaulab by ZOZO(以下、似合うラボ)」をオープン。服を一切売らず、お客さま一人一人に “似合う” を届ける――これまでオンラインに特化して事業拡大を図ってきたZOZOが、似合うラボをどのように仕掛けていくのか、事業責任者に話を聞きました。
お話を聞いた方
株式会社ZOZO CDO室室長/似合うラボ事業責任者
大久保 真登(おおくぼ・まこと)さん
2007年にスタートトゥデイ(現ZOZO)に入社後、デザイナーとしてZOZOTOWNのUI・UXや広告プロモーションを行う。2013年にファッションコーディネートアプリ「WEAR」のクリエイティブディレクターとして事業を立ち上げ。その後も計測ツールZOZOSUITやZOZOMATなどのUI・UX設計やコンセプトなどのディレクションを担当。現在はZOZOの事業やサービスを中心に、デザインやブランディングを支えながら、「niaulab by ZOZO」の事業責任者を務める。
目次
曖昧そして難解。しかし確かなニーズがある――それが “似合う”
似合うラボを立ち上げた背景や狙いをお聞かせください。
「これからの当社の事業成長において、 “似合う” を解明していくことが重要であると判断したのが似合うラボ立ち上げの背景です。 “似合う” がどういうもので作られているのか、つまり『似合うのセオリー』を解明していくということですね。そしてこの似合うラボで得た知見を、既存事業であるZOZOTOWNやWEARに生かし、一人一人に “似合う” スタイリングをレコメンドするなど、利便性向上につなげていくことを狙いとしています」
なぜ “似合う” という点にフォーカスされたのでしょうか。
「“似合う” というキーワードは、ファッションを考える上で誰しも一度は通るものだと思っています。
例えば、かっこいい服を着たい、かわいい服を着たいなど目的を持って服を選んでいる人も、何を着たらいいか分からないという人も、自分に “似合う” ものは何か? と気になると思いますし、 “似合う” にはいろんなものが含まれているのではないかなと。シーンや場所、気分、体型… それら『似合うの構成要素』を解き明かしてテクノロジーに生かしていくことが、ECサイト上での新たな購買体験につながっていくと考えています」
創業25年目にあわせて公開されたコンセプトムービー。経営戦略に「ワクワクできる 『似合う』 を届ける」が追加され、企業として “似合う” をテーマとする方針が定まった
似合うラボの体験応募受付開始後、とても大きな反響があったのだとか。
「はい。初回となる2月分に関しては、100名の募集枠に対して約270倍となる2万7,503名もの方々にご応募いただきました。応募された方の9割が女性で、世代別に見ると10代・20代の方が7割でした。ZOZOTOWNで行った意識調査でも、このZ世代の方たちは特に『ファッションでは自分に似合うかどうかを大事にしている』という傾向が見られています。また、パーソナルスタイリングサービスの利用意向も強く、ニーズが高いことも分かりました」
似合うラボの事業開始までに1年以上の検証期間を設けられたということですが、どのようなことを検証されたのでしょうか。
「サービスを受ける方への質問設計やどのような体験にするかの設計、サービスを提供する約2時間の中で “似合う” をどれだけ引き出せるか、提案されたスタイリングの情報をどのようにデータ化するかなどを検証してきました」
検証で見つかった課題と、解決方法を教えてください。
「課題はやはり、 “似合う” を引き出すというところですね。ファッションに対する意識、課題感は皆さんバラバラだと思っています。他にも、トレンドや体型、単純に自分が好きかどうかといった曖昧な要素もあります。そういった多種多様な “似合う” を構成する要素が何なのか、お客さまとリアルの場で対面してひも解いていくというアプローチが課題解決のための道筋ですね」
オンラインとオフラインの垣根を超える。これまでの試行錯誤が導いた「リアル」という結論
「リアル」という言葉がキーワードになっているように思いますが、リアルへの強いこだわりがあるということでしょうか。
「そうですね。これまで会社として、オンラインではたくさんのチャレンジをしています。ZOZOでは、『オフラインでは体験できるのに、オンラインでは体験できない』という垣根をテクノロジーの力でどう解決していくかということを大きなテーマとして捉えていて、これまでにもZOZOSUIT、ZOZOGLASS、ZOZOMATを展開してきました。ZOZOSUITなら体型や服のサイズ、ZOZOGLASSなら肌の色、ZOZOMATなら足のサイズ。これらも “似合う” を構成する要素の1つであり必要なものですが、1つだけを見ればいいというわけではなくもっと複合的な視点が必要です。
似合うラボでは、お客さまのファッションに関する悩みや好みなど、曖昧なものや潜在的なものを直接聞いていきます。サイズや色などと違って抽象度が高いためデータ化が難しい内容ですね。人から似合うと言われることが “似合う” だと思う人もいれば、自分が似合うと思えばそれでいいという人もいて、価値観も人それぞれだからこそリアルでの会話が重要だろうと。
また、プロのスタイリストやヘアメイクアーティストが、なぜそのアイテムを選んだのかといった普段言語化されることの少ない内容についてもデータ化していきますので、この点もリアルだからこそ可能なことだと思います。
これらを踏まえ、事業開始前の検証でもいろいろな専門家の方のご意見を伺いながら検討し、対面で直接お話を聞くほうがいいと判断しました」
事業開始前の検証での1コマ。体験者の表情の変化もリアルだからこそ感じられる要素の1つ
事業開始前の検証での1コマ。体験者の表情の変化もリアルだからこそ感じられる要素の1つ
確かに、リアルだから得られる情報をデータ化するという視点は新鮮ですね。
「例えばオンラインにおいて、購入はすごく大きなアクションだと思うんです。でも、似合うから買ったのか? と言われると、必ずしもそうではないですよね。どうしてもこの週末にジャケットを着ていかないといけないからとか、セールになってたからとか、いろんな理由がある。そういう観点でも、似合うラボは直接お客さまと会話ができる貴重な場。まずはこれから年間約1,000人の方たちの “似合う” をしっかり解析していくこと。これはわれわれにとって非常にやりがいのあるチャレンジです」
似合うラボではこれから、どのようなことを検証していく予定でしょうか。
「お客さまへの事前カウンセリングシートの回答内容を始め、体験中に分かったファッションに関する悩みや好み、似合うラボAIによるコーディネート提案、プロの知見やアドバイス、体験後に行うアンケート、体験を終えた後のZOZOTOWNでの購入実績などをデータとして蓄積していきます。また、お客さまからのニーズなども拾い上げて今後の展開に生かしていくつもりです。
金額で悩んだり、服を買わなきゃといったプレッシャーから解放され、フラットな状態で “似合う” に集中してもらえるよう似合うラボでは服を売りません。自分の “似合う” を見つけるための環境を作り、 “似合う” を見つけて笑顔になっていただくことが大事だと思います。ここで得たデータや知見を既存事業に生かすことがZOZOのビジネスとしてより大きな成長につながると考えているからです」

超パーソナルスタイリングを受ける約2時間、店舗を貸し切りにして “似合う” に集中する環境を作る
なるほど。それでは最後に、似合うラボの目指す姿をお聞かせください。
「まずは年齢や性別など関係なく、1人でも多くの方にぜひこのサービスを体験してほしいですね。
ファッションに自信がない、何を着ればいいのか分からないという方だけではなく、ファッションが好きでもっと自分の “似合う” を見つけたいという方にも、似合うラボの超パーソナルスタイリングで新しい自分の “似合う” を見つける体験をしていただきたいですね。
“似合う” が見つかると、人は自信がついて笑顔になります。それがファッションのパワーであり、おもしろさかなと。 “似合う” を突き詰めていくことは事業の成長でもあり、その先にわれわれの企業理念である『世界中をカッコよく、世界中に笑顔を』に通じるものがある、両方をあわせ持ったものだと思います」
ありがとうございました。
ZOZOがこだわり抜いた似合うラボを体験してきました!
自分の “似合う” は一体どんなスタイルなのか、気になってきた方もいるのではないでしょうか。
似合うラボではプロのスタイリストとの会話から、自分だけの “似合う” を見つけることができます。実際の流れを体験してきたので、こちらの記事もぜひご覧ください。
(掲載日:2023年2月27日)
文:ソフトバンクニュース編集部
自分だけの “似合う” を見つけるniaulab by ZOZOはこちらからチェック
似合うラボは、ZOZOのAIとプロのスタイリストがあなたの “似合う” を見つける、超パーソナルなスタイリングを無料で体験できる施設です。