2024年8月7日、ソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)の2025年3月期 第1四半期 決算説明会が開催され、取締役 専務執行役員 CFOの後藤芳光が、連結業績とASI(人工超知能)実現への取り組みなどについて説明しました。
冒頭、直近の日経平均株価が、1987年の「ブラックマンデー」翌日を上回る過去最大の下げ幅となり、その翌日には逆に最大の上げ幅となったことに触れ、「環境理解を冷静にしていくべきであり、その環境下で企業はどういう構えが必要かということが問われている」とコメント。
その上で、「SBGは戦略的投資会社であると同時に、AIの時代に向けたさまざまなチャレンジを行い、自ら事業にも乗り込んでいくユニークな事業モデルで、資本循環を通じた事業とアセットの成長に取り組んでいる」として、財務方針を堅持しながら戦略的な資本配分を行い、市場環境に合わせて資金の流れを柔軟にコントロールするリスク管理によって、あらゆる環境変化に適応できる企業であることを強調しました。
第1四半期の連結業績については、前年同期と比較して全ての項目でポジティブな結果となったと報告。純利益は円安による為替差損の影響などによりマイナス1,743億円という着地であったものの、前年同期比ではプラス3,033億円となりました。投資損益については、SBGの自己勘定としての持株会社投資事業と、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、「SVF」)事業の両方で利益を計上し、黒字転換したと述べました。
続いてSBGの重要指標であるNet Asset Value(以下「NAV」)、Loan to Value(以下「LTV」)、手元流動性について説明しました。
昨年12月末時点では19兆円強であったNAVは、この6月末では35.3兆円に成長。しかし、6月末からの2カ月間で資産の評価が10兆円程度下落した状況※について、後藤は「安全性について大きなマテリアルになっていない。SBGのバランスシートのわかりやすい安全性の指標として、LTVは10.9%※という極めて安全なレベル。また、手元流動性に関して、4.6兆円が4.3兆円※に減っている要因は為替」と解説。
財務健全性は不変であるとし、「短期的な株価の変動に対しては一喜一憂しない。私たちの進むべき投資モデル、ビジネスモデルに、ぶれることなく、グループがそのベクトルの方向に向かってスクラムを組んでいくこと。これが一番大事なことだ」との考えを示しました。
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2024年6月末試算値に関する情報は、2024年6月末時点の資産・負債構成は変わらない前提で、同年8月6日時点の株価・為替レートを適用して試算した参考値であり、将来の値を保証・示唆するものではない。
保有資産のバランスについては、「4年前、アリババが51%であったポートフォリオから、アームが55%へと大きく様変わりをしている。これも全てAIへの構え」とコメント。地域構成については、アームを中心とした欧州エリアが62%となっていると説明しました。
業績の説明に続き、ソフトバンクグループの攻めの部分として、6月の株主総会で社長の孫が説明した「ASIの実現」が「一番の戦略的テーマ」だと述べました。そして、「実現するためにグループの総力を挙げていきたい」と力を込めました。
また後藤は、ソフトバンクグループとはどのようなグループであるかについて、改めてコメント。「ソフトバンクグループというのはユニークで、類似会社が存在しない。資本構造だけによるグループではなく、ビジネスの関係であったり、お客さまを通じた仲間意識であったり、同じ方向を見ている同士であったり、多岐にわたるリレーション、これを群戦略の中で取り込んでいって、有機的な結合の中で生まれているグループ。こういったものを、これからもさらに追求していきたい」と述べました。
ASI実現への取り組みとして、AIや機械学習などに特化したチップの開発から販売までを行う英国のGraphcoreへ第2四半期に投資したことや、米国で再生可能エネルギーを展開するSB Energy Global、ソフトバンク株式会社で推進中のデータセンター事業、国内外のソフトバンクグループのロボット事業としてソフトバンクロボティクス株式会社の他、BALYO、Symbotic、JVとしてのGreen Boxなどの物流・倉庫系の企業を紹介。「コラボレーションを深め、成長させていきたい」とコメントしました。
6月に記者発表したSBGと米国Tempus AI社とのジョイントベンチャーである株式会社SB TEMPUSについても言及。Tempus AIは、米国における提携病院数やがんのレコード数などで業界最大の医療データセットを保有する企業で、AIを活用した最先端の診断プラットフォームを通して、「遺伝子検査」「 医療データ収集・解析」「AIによる治療選択肢の提案」の3つのサービスを提供しています。「SBGは、Tempus AIに出資をしながら、さらに、SBGとTempus AIがそれぞれ出資をして設立したSB TEMPUSは、8月から本格稼働を開始した」と直近の状況を報告しました。
投資活動について、SBGとSVFの投資額は、この第1四半期は約19億ドルで過去2四半期に比べて大きく増加。また、投資の売却・資金化の総額は3,711億円であったと報告しました。
続いてアーム事業については、売上高はアナリストコンセンサスの9億300万ドルを上回る9億3,900万ドルとなり、過去最高を更新したことや、5月にMicrosoftが発売したAI機能を備えた新しいパソコン「Copilot+ PC」にアームのベースチップが搭載されていること、Armv9がロイヤルティ収入全体の25%に増加したことなどを報告。
SVF事業については、投資損益がプラスに転換したこと、その中でもSVF1の実績が28億2,700万ドル増加したことを報告した他、上場の可能性の高いパイプラインを確保していることや、引き続き投資先を慎重に見極めた上で投資活動を行っていることなどを強調しました。
最後に財務戦略について、「さまざまな環境変化があるが、私たちの財務原則は不変。財務ポリシーを鉄板のトッププライオリティとして守ることで、投資の金額も、さまざまな戦略も定まっていく。さらに、各ステークホルダーとの関係構築を今まで以上に取り組んでいきたい」として、2024年度の財務戦略に変更がないことを強調した他、この日発表した5,000億円を上限とした自己株式の取得について「取締役会でもさまざまな議論を尽くし、取得のタイミングとしてベストだと判断した」とコメントしました。
自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ(2024年8月7日ソフトバンクグループ株式会社)
「環境は厳しいが、私たちの財務体制は盤石です。そして、従前から掲げているASI。このステージを、少しでも早く世の中に提供できるようなお手伝いをわれわれのグループがしたいし、お手伝いをしながらリードしたい。ASI実現に邁進(まいしん)してまいりたい」と決算発表を締めくくりました。
2025年3月期 第1四半期 決算説明会
(掲載日:2024年8月6日、更新日:2024年8月16日)
文:ソフトバンクニュース編集部