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「全国うごき統計」のデータを活用して人流と感染症拡大の関係を分析。「Scientific Reports」に論文掲載

全国うごき統計のデータの論文画像

ソフトバンク株式会社は、理化学研究所の協力の下、「全国うごき統計」の人流データを用いて人流と新型コロナウイルスの感染拡大の関係を分析。その論文が、ネイチャー・リサーチ社のオンライン学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

人口移動のパターンから感染拡大のホットスポットを特定

2019年から世界中へ広がっていった新型コロナウイルス感染症。東京都は4回の緊急事態宣言を発令し、外出自粛の呼びかけやイベント開催の制限などを行うことで、感染拡大を抑え、沈静化することができました。一方、移動が制限されたことで人々の生活にも大きな影響を及ぼしました。

コロナ禍の様子

今回発表した論文は、パンデミック中の東京23区における人の流れを細かく分類して、感染拡大と関係が深い移動パターンを見つけ出すという調査手法を提案するもの。将来パンデミックが起こった際に、感染が広がりやすいホットスポットを特定することで感染拡大につながる人の移動のみを制限し、人々の生活への影響を最小限に抑えられる可能性があります。また、この調査手法は他の感染症だけではなく、企業の売り上げや交通規制などに関する研究にも活用できる可能性もあります。

Hotspot analysis of COVID-19 infection in Tokyo based on influx patterns(Scientific Reports)

この研究では、ソフトバンクが提供する「全国うごき統計」の人流データを活用。「全国うごき統計」とは、ソフトバンクの全国の携帯電話基地局をもとに、端末の位置情報のデータを匿名化した状態で集計・加工したもので、日本全国の人流を把握し、解析することができます。

流行の広がりなど、マーケティングの分野にも応用

本論文は理化学研究所 計算科学研究センター 伊藤伸泰氏、同研究所にも所属される兵庫県立大学大学院 情報科学研究科 井上寛康教授の監修・技術指導の下、ソフトバンクがまとめました。研究の中心となった法人統括 クラウドインテグレーション本部 SE第1部の木村悠とテクノロジーユニット統括 データ基盤戦略本部 データシステム開発部の村田俊樹と中條恵介に話を聞きました。

今回、どのような経緯で論文発表に至ったのでしょうか?。

木村

「もともとは新型コロナウイルス感染症の感染対策を協議する政府のプロジェクトに応募し、採択されたのがきっかけです。人流データから感染状況を把握するためのデータ解析を行いました。このプロジェクトは終了しましたが、共同研究をしていた先生方から、研究内容をより広い場で発表したほうがいいのではないかという推薦があり、論文として発表することになりました」

世界最高水準の研究開発を誇る理化学研究所との共同での研究となりました。

村田

「先生方に全国うごき統計のデータについてご理解いただき、より良い研究になるよう提案してもらいながら、発展していくことができました。そのため、データ分析の結果を分かりやすく作成し、認識合わせをすることが、研究を進めるに当たって非常に重要だったと思っています。人流データと東京都保健医療局が公表している感染者数のデータとの関係を可視化したり、アンケート結果や理化学研究所が使っていたGPSのデータなど、集計方法が異なるデータと比較した際の人流データの利点を整理したりしながら研究を進めていきました」

この研究は、今後どのような活用が期待されますか?

中條

「論文で扱った、人々の動きという観点から社会現象を解析する手法は、さまざまな社会課題の解決やビジネス展開に応用できると考えています。例えば、新型コロナウイルス感染症だけではなく、他の感染症の分析にも役立てることもできますよね。また、うわさ話の広がり方や流行の発生源の解析など、他のデータと組み合わせることでマーケティングなどの分野にも応用できる可能性を秘めていると思います」

 

理化学研究所 計算科学研究センター / 兵庫県立大学大学院情報科学研究科
井上寛康氏

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、現代においても感染拡大がコントロールできなかったという点で、大きな驚きを社会に与えました。にもかかわらず、社会はすでにそのことを忘れつつあります。世界中の人々が交流する流れは変わらないため、新たな感染症によるパンデミックは今後も必ず起きると考えるべきです。そのような中で、人流を用いて感染拡大の原因を探ることが可能であることを示した今回の研究は、Scientific Reportsという厳正に審査がなされる学術誌で認められたという点や、人流データというソフトバンクが持つデジタルインフラを社会への貢献に生かしたという点で、高く評価されるものであると考えます。

(掲載日:2025年3月14日)
文:ソフトバンクニュース編集部

人流統計サービス「全国うごき統計」

人流統計サービス「全国うごき統計」

ソフトバンクの携帯電話基地局から得られるデータを利用した人流統計サービスです。 日本全国の人流を24時間365日把握し解析することができます。

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