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スマホカメラはなぜ複眼化している? 撮影の幅が広がるカメラの基礎知識

スマホカメラはなぜ複眼化している? 撮影の幅が広がるカメラの基礎知識

昔のスマホにはカメラが1つしか付いていませんでしたが、最近では複数のカメラが搭載されている機種がほとんどですよね。しかし、せっかく複数のカメラがあっても、それぞれのカメラの違いについて知らない人も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、フォトグラファーの三井公一さんに、それぞれのカメラの特徴や使い分け方について解説してもらいました。さらに、スマホカメラの仕組みやズーム、焦点距離といった撮影に関わる基本知識も紹介します。これを読めば、シーンごとに適したカメラの選び方が分かり、スマホでの撮影がもっと楽しくなるはずです!

三井 公一(みつい・こういち)さん

教えてくれた人

三井 公一(みつい・こういち)さん

有限会社サスラウ 代表。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。著書に、iPhoneで撮影した写真集『iPhonegrapherー写真を撮り、歩き続けるための80の言葉(雷鳥社)』、『iPhone フォトグラフィックメソッド(翔泳社)』などがある。

スマホカメラの特徴を理解して撮影の幅を広げよう

スマホには複数のカメラが搭載されていますが、それぞれに役割があるのをご存じですか? まずはスマホカメラの基本的な仕組みと、搭載されているカメラの種類について見ていきましょう。

スマホにカメラが複数搭載される理由とは?

スマホにカメラが複数搭載される理由とは?

スマホカメラが1つから2つ、3つへと増えていった背景には、スマートフォンの進化とユーザーのニーズの変化があります。初期のスマホカメラは、メモ代わりに使われる程度で、画質もそれほど求められていませんでした。しかし、スマートフォンの画面が大型化し、高精細ディスプレイが搭載されるようになると、「より美しく写真を表示したい」という市場の要望が高まり、カメラの高画質化が求められるようになりました。さらに、SNSの普及によって「映える写真」を撮りたいという需要が増えたことも、カメラ性能の向上を後押ししています。

しかし、撮影シーンに応じてレンズを交換する一眼カメラとは異なり、スマホカメラはイメージセンサーとレンズが一体化しており、レンズの交換はできません。その代わりに、広角、望遠、超広角など、異なる種類のカメラをスマホ本体に搭載することで、さまざまな撮影ができるようになりました(機種によって異なります)。例えば、カメラが3つ搭載されたスマホは、それぞれに異なる役割があり、まるで3台のカメラが内蔵されているような仕組みになっています。これによって、スマホでもシーンに合わせた撮影ができるのです。

カメラの配置によって写真に違いは出る?

スマホ背面の中心にカメラが付いている機種もあれば、左上についている機種もありますよね。カメラが左上にある場合は、画面の中心とカメラの位置がずれているため、真正面から撮影しようとしても、思ったより構図がズレることがあります。そんなときは、アプリのカメラ設定でグリッド線をオンにすると、被写体の位置を調整しやすくなります。

三井さん

「人間は左右の目を交互につむると、見ている物の位置がずれて見えますよね。これは左右の目の『視差』と呼ばれるものによって起こります。それと同じで、スマホカメラも位置によって視差が生まれます。一部のスマホでは、複数のカメラやピクセル(画素)の視差を利用し、ポートレートモードで背景をぼかす技術に応用しているんです」

広角、望遠、超広角。それぞれのカメラの特性を解説

最近のスマホには、広角、望遠、超広角の3つのカメラが搭載されているものがあります。これらのカメラは、それぞれ異なる画角を持ち、広く撮れるものや、遠くを大きく撮れるものなど、役割が異なります。では、この3つのカメラはそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。実際に三井さんにそれぞれのカメラで写真を撮っていただき、その特徴について教えてもらいました。

①広角カメラ

多くの機種においてデフォルトで起動される広角カメラは、一般的なスナップ撮影などに適しています。多くのスマホでは、広角カメラ(メインカメラ)のセンサーが最も大きく設定されているため、細かい部分まできれいに写り、明るい部分から暗い部分までなめらかに表現しやすくなっています。

また、料理の写真を撮るときにも広角カメラは活躍します。以下の写真のように、広角カメラを使うことで、鮮やかな色合いや細かなディテールまでしっかりと捉えることができます。

①広角カメラ

②望遠カメラ

望遠カメラは人物やスポーツ、ペットなどを撮影するのに適しています。遠くのものを大きく写せるので、運動会で離れたところにいる子どもを撮るときなどにもおススメです。

②望遠カメラ

また、遠くの風景を撮るときにも活躍し、以下の写真のように、工場と富士山のような異なる被写体を組み合わせることで、奥行きやスケール感のある写真を撮ることができます。

②望遠カメラ

また、料理などの写真を撮るときは、真上から撮影すると被写体に自分の影が重なってしまうことがありますよね。そんなときは望遠カメラを使って被写体との距離を確保すると、影が入りづらくなり、より自然な仕上がりになります。

③超広角カメラ

「ウルトラワイドカメラ」などとも呼ばれる超広角カメラ。とても広々と写るので、狭い部屋を広く見せたいときや、逆に広い草原をより広く見せたいときなどにおススメです。

③超広角カメラ

風景だけではなく、あえて小さな被写体に寄って撮影しても面白い写真が撮れます。例えば、超広角カメラで小物などの被写体に寄って撮影すると、小物が大きく写り、背景が遠くに引き伸ばされるように見えるため、迫力のある写真になります。

③超広角カメラ

三井さん

「スマホには、広角・望遠・超広角といった異なるカメラが搭載されていますが、使用する撮影モードによって、どのカメラが使われるかが変わります。例えば、ポートレートモードでは、機種によって異なりますが、背景をぼかして被写体を際立たせるために、基本的に望遠カメラが使われることが多いです。さまざまな撮影モードがありますが、それぞれのモードに適したカメラが自動で選択されることが多いですよ」

スマホカメラの切り替え方

スマホカメラの切り替え方

スマホで写真を撮るとき、特に設定を変えなければ「メインカメラ」や「標準カメラ」と呼ばれるカメラが自動で使われます。多くの機種では、このカメラが広角カメラにあたります。カメラの切り替えは、画面を横にスワイプするだけ。スマホの設定で、最初に起動するカメラを変更できる機種もあります。

また、画面上に表示される「0.5×」「1×」などの数字を変えることでズーム倍率の変更ができます(機種によって異なります)。この切り替えによって被写体が大きくなったり小さくなったりするのは、1つのカメラでズームしているだけではなく、スマホが最適なカメラに自動で切り替わっているからなんです。

ここまで、スマホカメラの基本的な仕組みや、それぞれのカメラの特徴について見てきました。次のページでは、カメラのズームや焦点距離、イメージセンサーなど、カメラの基本の仕組みについて解説していきます。

「光学ズーム」や「焦点距離」説明できる? 覚えておきたいカメラの基本知識

「光学ズーム」や「焦点距離」説明できる? 覚えておきたいカメラの基本知識

ここからはちょっとマニアック(?)な、光学ズームとデジタルズーム、焦点距離、イメージセンサーなどについて解説します。

「光学」と「デジタル」ズームの違いを理解しよう

スマホカメラのズームには 「光学ズーム」 と 「デジタルズーム」 の2種類があります。

  • 光学ズーム: カメラのレンズ自体を動かして被写体を拡大するズームのこと。画質が劣化せずに、被写体を大きく写すことができます。
  • デジタルズーム: イメージセンサーに入った画像を拡大して被写体を大きく見せるズームのこと。ズーム倍率が高くなると画質が劣化し、ぼやけた写真になる場合があります。

多くのスマホでは、特定のズーム倍率までは光学ズームを使用し、それを超えるとデジタルズームに自動で切り替わる仕組みになっています。実際に、三井さんに光学ズームとデジタルズームを使って撮影してもらいました。

光学ズームで撮った鉄塔(Google Pixel 9 Pro Fold で撮影)

光学ズームで撮った鉄塔(Google Pixel 9 Pro Fold で撮影)

デジタルズームで撮った鉄塔(Google Pixel 9 Pro Fold で撮影)

デジタルズームで撮った鉄塔(Google Pixel 9 Pro Fold で撮影)

三井さん

「例えば、Google Pixel はデジタルズームが得意なスマホとして知られていますが、これはカメラの画素数が高いだけではなく、AIを使った画像処理の技術がすごいから。ズームしたときに、何枚もの写真を合成して画質のざらつきを減らしたり、ぼやけた部分をはっきりさせたりする工夫がされているんです。なので、高倍率でズームしても、キレイな写真を撮ることができますよ」

画角を決める「焦点距離」

焦点距離とは、「どのくらいの距離感で写真が撮れるか」を決める要素です。レンズがどのくらい広い範囲を写せるかやどれだけズームできるかを表します。

  • 焦点距離が短い: 画角が広くなり、広い範囲を写すことができます。遠近感が強調され、背景が広く写ります。
  • 焦点距離が長い: 画角が狭くなり、遠くのものを大きく写すことができます。遠近感が圧縮され、背景がぼけて写ります。

「焦点距離」って何? 写真にどう影響する?

三井さん

「スマホカメラでは基本的に、カメラを変える=焦点距離を変えることになります。例えば、iPhoneで撮影時にズームを『1.0×』から『5.0×』に変更すると、自動的にカメラが切り替わり、焦点距離も変わります」

背景のぼけ感と明るさを決める「F値」

F値とは、カメラのレンズを通る光の量を調整する「絞り」の大きさを表す数値です。

  • F値が小さい: レンズが大きく開き、たくさんの光を取り込めるので、明るく撮影できます。背景がぼけやすく、ふんわりした雰囲気の写真になります。
  • F値が大きい: レンズが小さく閉じ、取り込める光の量が少なくなるため、暗くなりがちですが、背景までくっきりと写せます。

背景のぼけ感と明るさを決める「F値」

スマホカメラの多くは、一眼カメラのようにF値を手動で調整することはできません。その代わり、ISO感度(光に対するセンサーの感度)などを自動調整することで、最適な明るさに補正しています。

三井さん

「最近のスマホは、AIを活用したコンピュテーショナルフォトグラフィー(ソフトウェアによる画像処理技術)によって、背景のぼけを再現することもできます。例えば、ポートレートモードを使うと、F値が小さいレンズで撮ったような自然なぼけを人工的に作り出せるようになっているんです」

写真をより鮮明に仕上げる「イメージセンサー」

イメージセンサーは、人間の目でいう「網膜」のような役割を果たしており、レンズを通った光を受け取り、写真として記録するカメラの重要なパーツです。センサーが大きいほど多くの光を取り込めるため、ノイズが少なく、明るく鮮明な写真が撮れます。

一般的に、イメージセンサーのサイズが大きいほど、多くの光を取り込めるため、ノイズが少なく、より明るく鮮明な写真が撮れるとされています。そのため、最近のスマホでは、より大きなセンサーを搭載し、カメラ性能を向上させる傾向があります。

三井さん

「ただし、スマホのサイズには物理的な制約があるため、センサーの大型化にも限界があります。そのため、スマホではコンピュテーショナルフォトグラフィーによって、画質を向上させる工夫がされています」

写真の画質を滑らかにする「画素数」

画素数とは、画像を構成する小さな点(ピクセル)の数を指します。画素数が多いほど、より細かく滑らかな描写が可能に。しかし、スマホに搭載できるイメージセンサーのサイズには限界があるため、画素数が増えると1つ1つの画素が小さくなり、光を取り込む量が減少し、結果としてノイズが増える可能性があります。

三井さん

「これは豆知識ですが、この問題を解決するために、スマホでは『ピクセルビニング』という技術を使い、複数の画素を組み合わせて1つの大きな画素のように扱う工夫がされています。例えば、iPhoneのカメラは4800万画素のセンサーを搭載していますが、通常の写真は1200万画素で保存されます。これは、4つの画素を1つに統合することで、より多くの光を取り込み、暗い場所でもノイズを抑えてきれいな写真にするためです。そのまま4800万画素で保存すると、ノイズが増えたりデータが大きくなったりするため、この技術が使われています」

スマホカメラの仕組みや使い分け、画質に影響するさまざまな要素について説明してきました。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、基本を押さえれば、だんだん思い通りの写真が撮れるようになるはずです。「スマホで上手に写真を撮るには、まずは撮るものを観察し、その特徴が出るように距離を変えたり、アングルを変えたり、カメラを変えたりして、たくさん撮影することをおススメします」と三井さんは話してくれました。この記事を参考にスマホカメラを使いこなし、自分だけの素敵な写真を撮影してみてくださいね!

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(掲載日:2025年3月13日)
文:吉玉サキ
編集:エクスライト